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第十八話 真っ赤な壁を越えた先


「あたしが詩穂とはぐれたのがここだ」


 この街の地図を咲希が指差す。


「真央は居場所がまったくわからないし、捜すなら詩穂からが良いと思う」

「そうだね。それに詩穂ちゃんを見付けられれば真央ちゃんを見付ける良い方法を見付けてくれるかも」

「あぁ、詩穂ならなんとかしてくれる」


 二人ともかなり信用しているみたいだ。


「その詩穂ってどういう人なんだ?」

「私たちのリーダーです」

「いい奴だよ。皆に頼られてるし、正義感も強い。頭も良くて、あと金持ち」

「あぁ、凜々が言ってた友達って」

「はい。詩穂ちゃんです」


 この拠点が使えるのも、詩穂のお陰ってわけだ。


「なんとしてでも見付けないとな」


 凜々の友達捜し再開だ。


§


「さて、ここか」


 咲希が詩穂とはぐれたという前後左右に道が続く十字路に立つ。

 周囲は見晴らしがよく、ゾンビか魔物がくればすぐにわかる。


「あの時、たしかあたしはあっちに逃げたんだ」


 十字路の右方向を指す。


「気付いたら隣りに詩穂がいなくてさ。振り返ったらあっちを走ってたんだ」


 詩穂が逃げたのは十字路の前方向。


「詩穂もあたしもゾンビに追われてて、そのまま合流できなかった」

「じゃあ、とりあえず過去の詩穂を追い掛けてみるか」

「ですね。その先になにかあるかも」


 進むべき道を定めて歩く。

 辺りを常に警戒し、左手で鞘を握る。

 そうしていると道の先で屯する魔物が見えた。

 数は四体。いつもの狼に似た奴だ。


「練習がてら俺がやる。傷口が焼けるから血もあんまり出ないしな」

「じゃ、頼んだぜ。イヅナ」

「後ろで備えてます」


 鞘から抜刀し、稲妻を纏って刀身を帯電させる。

 そのまま歩いて近づくと、魔物たちがこちらに気がついた。

 低く唸り、駆け、牙を剥く。

 その一挙手一投足を視界に収め、反応し、斬り伏せる。

 稲妻の刃を四度振るい、殲滅した。


「ふぅ……」


 帯電を解き、鞘に収める。


「咲希。一応、凍らせておいてくれるか?」

「オッケー。任せて」


 投げたナイフが死体に刺さり、冷気を放って凍て付かせる。

 瞬く間に四体分の氷像が出来上がった。


「よし。完了っと」

「これでゾンビも寄ってこないな」


 溶ければ寄ってくるけど、その頃にはここを離れているはずだ。


「イヅナくん」

「あぁ、どうした?」

「そのままで聞いてください。咲希ちゃんも」


 咲希と顔を見あわせる。


「誰かに見られてます」

「――スキルホルダー?」

「わかりません。ただ見てるんです。そこの曲がり角ですよ」


 怪しまれないようにさりげなく曲がり角を見る。

 たしかにこちらを見ている誰かがいた。


「詩穂……じゃないよな。あたしたちを見てるなら出てくるはずだし」

「ただの一般人かもな。食糧調達をしてたのかも」

「もしかしたら詩穂ちゃんのことを知っているかも知れませんよ」

「でも、話が聞けるかどうかわからない。ただでさえ殺人鬼の件でスキルホルダーは警戒される」

「イヅナが斬るのも、あたしが凍らせるのも見てたよな、たぶん」

「じゃあ、あたしから声を掛けてみます。持っててください」


 背負っていたライフルを俺に渡し、凜々が話を聞くためにそちらを向く。


「すみません! 聞きたいことがあるんですけど!」


 すこし大きめの声で、何者かに語りかける。

 しかし。


「あ、逃げた!」


 その何者かが逃げてしまう。


「ど、どうしましょう!」

「追い掛けるぞ。なにも知らなかったら、その時はその時だ」

「それがいい。とにかく行こう!」


 預かったライフルを凜々に投げ渡し、何者かを追う。

 角を曲がり、背中を追い掛け、距離を詰める。

 再び何者かが角を曲がり、俺たちもそちらに舵を切ると――足を止めることになった。


「か、壁?」


 真っ赤な壁が道を塞いでいる。

 何者かの姿はなく、それだけがあった。


「普通の壁じゃないぞ。なにかの塊?」

「結晶……かな?」


 なにかの鉱石か結晶のような赤い壁。

 あり物でつくったバリケードという見た目でもない。

 こんな物が以前からあったようにも思えないし、逃げた奴が作ったと考えるべきだ。


「やっぱりスキルホルダーだったんだ」

「だな。とにかく壁をどうにかするしかない。破るなり登るなりして――」

「それはやめておいた方がいいわよ」


 壁の向こう側から声がする。


「察しの通り、私もスキルホルダーよ。この壁を越えてくるなら容赦しない」

「あれ?」

「お互いに殺し合いは避けたいはずよ。このまま帰れば誰も死なずに家に帰れるわ」

「もしかして……」


 凜々と咲希が顔を見あわせる。


「詩穂?」

「詩穂ちゃん?」


 二人が名前を呼ぶと、赤い壁が溶ける。

 滝のように流れ落ちて液体となり、それが一所に吸い込まれた。

 そうして撤去された壁の向こう側に立つ、一人の少女とその他数人。

 黒く艶のある長い髪をした少女は、凜々と咲希を見るなり駆けだした。


「凜々! 咲希!」

「やっぱりか!」

「詩穂ちゃん!」


 再会を果たした三人は互いに互いを抱き締め合う。

 友人との再会はめでたいことだけど、その後ろにいる数人はこちらを睨んでいた。

 彼らは成人している大人で二十代代から四十代くらいで男しかいない。

 明確な目的があって行動していることに間違いはなさそうだ。

 これがどういう状況なのか、詩穂に説明してもらわないとな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 女の子2人を侍らせているように見える主人公への嫉妬で睨んでいる可能性が…
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