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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【何も特徴がないから】ってパーティーを追放されたんだけど、親戚の誘いで暗殺者ギルドに所属したら『天職』だった模様。~誰にも記憶されない少年は、悪徳貴族やパーティーを駆逐することで【影の英雄】となる~

作者: あざね

短編にまとめてみました(*‘ω‘ *)

面白かったら、あとがきもお読みいただけると幸いです。






 ボクは子供のころから、誰かの助けになりたかった。

 だから、学園生の時からずっと人助けを続けてきたのである。成績はとにかく平凡だったし、ボクの活躍なんて本当に微々たるものだったけど。

 それでも、間違いなくボクの人生の目標は人助けだった。



 だけど――。




「あー……。えっと、リーシャス、だっけ? お前、追放な」

「え……?」



 ある日のクエスト直後。

 ボクはリーダーから突然の宣告を受けた。

 驚き黙っていると、彼はどこかバツが悪そうにこう続ける。



「お前、何も特徴がなくて……。なにやってるか、分からないんだよ」

「なにをやっているか、分からない……?」



 それはいったい、どういうことなのか。

 ボクはたしかに平々凡々だ。身体能力も魔法も、さらには外見さえも。それでもパーティーのために、人のためにできることは全力でこなしてきた。

 それなのに、リーダーは何を言っているのだろうか……。



「とにかく、お前は今日限りでクビだ! よく分からねぇけど!!」



 だが、その違和感に異を唱える前に。

 リーダーはそう言うと、踵を返して他の仲間に合流するのだった。


 そして、聞こえてきたのは彼らのこんな会話。



「いま、誰と話してたんだ?」

「えー……? いや、なんて名前だっけ……」

「分からねぇなら、考える意味もないってことだな!」



 そんなことって、ある……?



 ボクは呆然と、酒場に消えていくかつての仲間を見送る。

 そして街の中にポツンと、立ち尽くすのだった。







「どうして、誰もボクのことを認めてくれないんだろう……?」



 思えば、学園生時代からそうだった。

 授業の後の清掃も、人一倍頑張ったのに誰も褒めてくれない。先生からのお願いも、積極的にこなしてたのに感謝されなかった。

 今になって思えば、そんな『小さな何故』ばかりだ。



「はぁ……」



 ため息が漏れる。

 夜の街。家々の明かりに照らされた道も、そろそろ闇に染まり始めていた。

 もうじきここは、真っ暗闇の世界になるだろう。そうなる前に、ボクも家に帰らないといけない。そう思って、一歩を踏み出した。


 その時だ。



「あぁ、ここにいたのか。――リーシャス」

「…………え?」



 ボクに、声をかける人があったのは。

 どこかで聞き覚えのあるそれに、ゆっくりと振り返る。するとそこには、長身痩躯の初老の男性が立っていた。こちらの名前を口にした彼は――。



「あ、ダイス叔父さん。どうしたんですか?」



 ボクの、叔父だった。

 名前はダイス。親類の中でも、とにかくミステリアスな雰囲気漂う人物だった。だけど同時に、ボクのことを一番気にかけてくれた、そんな優しい人。

 懐かしい顔を見て嬉しくなったボクは、すぐ彼に駆け寄った。



「あぁ、リーシャスに少しだけ話があってね?」

「話……?」



 ボクが首を傾げると、ダイス叔父さんは一つ頷く。

 そして、こちらの手を取って言うのだった。






「私たちには、キミが必要なんだ。その平凡さで、人助けをしないか?」――と。






 とても、真剣な眼差しで。

 ダイス叔父さんは、強くボクの手を握りしめた。



 彼に連れられるがまま、向かった先。

 そこは、想像の斜め上を行く意外な場所だった……。



 






「ここって……?」

「あぁ、ここは――『暗殺者ギルド』だよ」




 ダイス叔父さんに導かれるまま、たどり着いたのは薄明りが頼りな建物の中。彼はここを暗殺者ギルドと言った。でもボクは、思わず首を傾げてしまう。

 だって、暗殺者ということはつまり――。



「叔父さん。人助けと暗殺、って……正反対じゃないの?」



 そうだった。

 暗殺ということは、誰かの命を奪うということ。それはどこか、人助けとは繋がらないように思われた。しかし、ダイス叔父さんは首を左右に振る。


 そして、ボクの目をジッと見てこう言った。



「そんなことはないんだ、リーシャス。私たちの暗殺者ギルドは厳格な規則によって、管理されている。そして、その規則によって暗殺する対象は――」



 その時だ。



「う、うわああぁぁぁぁぁぁん……!」

「えっ……?」



 幼い女の子の泣き声が、聞こえてきたのは。

 その場にそぐわないそれにボクは驚き、その声のした方を見た。するとそこには、まだ年端もいかない少女の姿。

 出で立ちからして、貴族の女の子、だろうか。

 ぬいぐるみを抱えた彼女は、母親を探して泣き続けていた。



「どうしたんだい。アネッサ」

「……ダイス様。実は――」



 そんな彼女の傍らにいた黒服の女性――アネッサさんに、叔父さんが声をかける。すると、この少女が泣きじゃくっている理由が判明した。



「また、あの貴族の仕業です。この子の両親は、残念ながら――」

「……殺された、か」



 ……殺された?


 ボクはその言葉に、思わず耳を疑った。

 だって、あまりに現実味がなかったから。だけど状況からしても、ダイス叔父さんの言う通りのようだった。この女の子の両親は、ある貴族によって殺されたのだ。貴族のことはあまり詳しくない。それでも――。



「……ダイス叔父さん。この女の子、これからどうなるんですか?」

「ひとまず、今すぐに命を狙われることはないだろう。だが現状のまま放置しては、悲劇が繰り返される可能性が高い」

「それって、どういう……?」



 ボクの問いかけに、叔父さんは逡巡してからこう語った。



「一人、こういった行いを繰り返す貴族の男がいるんだ」――と。









 ある貴族の男がいる。

 名はデイビッド・アルジャス――近年、貴族の中でも頭角を現している人物だった。だが、その躍進には裏がある。


 簡単な話。

 彼は自分にとって、都合の悪い相手を殺害しているのだ。



「さらには、殺した貴族の財産を奪うなど、窃盗も行っている。王家ももちろん認知しているが、下手に手を出せば何をするか分からない相手だ」

「それで、今までずっと放置されている、ってこと……?」

「あぁ、そうだ」

「…………」



 ボクが声を震わせたのに対して、叔父さんはあえて淡々と答える。

 こんな話があって良いわけがないと、本気でそう思った。ボクは拳を強く握りしめる。どうにかできないのか、と考えた。

 だが、しかし――。



「デイビッドは、独自に暗殺集団を雇っている。こちらが無策に飛び込めば、きっとすぐにバレてしまうだろう。この任務には、異常なまでの隠密が必須になる。それこそ『誰の記憶にも残らない』ような……」

「…………」



 叔父さんが語る。

 すなわちデイビッドをどうにかするには、凄腕の暗殺者が必要だということ。しかし、どんな暗殺者であっても『記憶に残らない』なんて、不可能だった。


 ということは、八方ふさがり。

 そう、思われた。



「そこで、だ。――リーシャスに、頼みたいことがある」

「え……?」



 その時だ。

 ダイス叔父さんが、ボクの肩に手を置いてこう言ったのは。



「キミには、自身が気づいていない才能がある。その極限までの平凡さ――限りなく『記憶されない』その力を、私たちに貸してくれないか……?」



 真っすぐな、叔父の視線。

 最初は彼の言うことが、信じられなかった。

 だけど、ボクは肩越しに涙する少女のことを見て思う。



 もしかしたら、ボクにしかできない『人助け』なのかもしれない――と。



 それならば。

 ボクは、唾を呑み込んでこう答えた。



「分かったよ、叔父さん。ボクは――暗殺者に、なる」




 たしかな決意を込めて。

 このような悲劇を二度と、繰り返さないために……。









 デイビッドは、ワインを楽しみながら夜景を楽しんでいた。



「あぁ、あの夫妻も惨めだったなぁ。儂に逆らわなければ、このように命を落とさずに済んだものを……」



 そして、思い出すのは自分の目の前で無惨な死を遂げた貴族の夫婦。

 本当にただ自分にとって、目障りだっただけ。なにか罪を為したわけでもない、善良といえば、限りなくそれに近い者たちだった。


 だが、デイビッドには罪悪感というものが欠如している。

 自分の行く道に転がっていた石ころを、蹴とばした程度の認識しかなかった。



「ふふん。さぁて、次はどうやって上を目指すか……?」



 だから、もう次のこと。

 自分の指示で殺害された者たちのことなど、忘却していた。


 だからこそ、彼は気付かなかったのだ。



「ん、誰だ……?」



 自分が蹴とばした石が、恐ろしい獣を呼び覚ましたことなど。



「お前は、何者だ……?」



 そこには、一人の少年が立っていた。

 あまりに平々凡々で、特徴のない顔立ちをした少年。ゆらりと歩み寄ってくる相手に、デイビッドは言い知れぬ恐怖心を抱いた。

 椅子から立ち上がり、後退りしながら思う。



「け、警備の奴らは何をしている……!?」



 なにかが、おかしい――と。


 このように平凡な少年一人の侵入を許す、など。

 デイビッドは、そんな違和感を抱きながら尻餅をついた。


 すると、そんな彼に少年はこう言うのだ。



「ごめんなさい。これも、人助けなんです」――と。



 それは、あまりにも凡庸で。

 どこにでもいる、普通の人が口にする台詞のようだった。



「が……っ!?」



 少年の手にしたナイフが、デイビッドの喉元を切り裂く。

 血が噴出し、瞬く間に悪徳貴族は絶命した。




 倒れる男を見下ろして。

 少年――リーシャスは、静かな祈りを捧げるのだった。









 悪徳貴族――デイビッドが暗殺されて数日が経過した。

 後に騎士団が捜索に入り、彼の犯した今までの罪が露わになる。暗殺集団は解体され、方々に散っていった。だがしかし、不思議なことが一点残る。



 いったい、誰がデイビッドを殺したのか。



 民衆の間では、その話題で持ちきりになっていた。

 様々な憶測が飛び交い、中にはその暗殺者を讃える者もいる。あるいは、暗殺という行為自体を忌避する者もいた。

 だが、みなが同意したことがある。


 これによって、更なる悲劇は起こらないだろう――と。




 一人の少女が、王都の中央にある公園で遊んでいた。

 友達もいない彼女は、子供たちの輪から離れた場所にいる。



「どうしたの、お嬢さん?」

「え……?」



 そんな彼女に、一人の年上の少年が声をかけた。

 とても平凡な人物だ。



「みんなと一緒に、遊ぼうよ」

「え、怖いわ。わたし、そんな勇気ないの」



 少女の言葉に、少年は微笑む。

 そして、腰を落として視線を合わせて言うのだった。



「だったら、ボクも一緒に言いに行くよ」

「え? あの、ちょっと……!?」



 少年は、女の子の手を取って子供たちの輪の中に連れて行く。



「みんな、ボクたちも混ぜてくれないかな?」



 そうして、気軽にそう言うのだった。

 すると子供たちは、満面の笑みで答える。



「いいよ、一緒に遊ぼう!」



 少女は次いで、子供たちに手を引かれ。

 気付けば楽しく遊んでいた。




「あぁ、あなたのお陰で助かりました。えっと……?」




 そして、ふと。

 先ほどの少年に感謝を述べようとして、周囲を見渡した。

 だが、首を傾げてしまうのだった。




「あの方は、どのような顔をしていたのでしょうか……?」――と。




 そんな少女を遠くから見て、微笑む少年がいた。



「頑張ってね。キミは、一人じゃないから」



 その少年――リーシャスは小さく、そう言って背を向ける。

 そして、叔父であるダイスと合流して歩き出すのだった……。





 



お読みいただきありがとうございました。

連載化希望のお声を聞きましたので、始めてみました。

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「連載版です!!!!!」こちらも、よろしくお願い致します。
― 新着の感想 ―
[良い点] 流石としか言いようがない落ち着いた展開、展開、発想。 こうして読んでいてもやはり他の短編とは違う飲み込み易さがある。 [一言] これは連載作品では? 私はそう思います。 短編には不釣り合…
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