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第1話 古びた小さな神社



 季節は夏。


 非常に暑い時期だ。昼間の熱気は尋常じゃない。


(このまま外にいたら溶けちゃうんじゃねぇの?)


 そう考えながら歩く1人の少年がいた。

 名前は日々埜(ひびの) (アユム)、今年14歳の中学2年生。



 アユムは中2の割には背が高い方だ。それに体格が良く、バランスのいい筋肉質がアユムを目立たせている。


 しかし1番目立つのは顔。


 吊り上がった切れ目で、常に不機嫌そうに眉間に皺を寄せている。それに眉には縫い傷が残っており(いか)つい印象を受けやすい。

 

 その見た目通りに少々ヤンチャな性格ではあるのだが、実際はどこにでもいる普通の少年である。



 しかしそんなアユムの事を知らない人々は関わるまいと避けている。見た目だけでそう判断されている事はアユムも分かっているのだが。


(はぁ、何もしてねぇっつーの)


 すれ違う人を見る度に同じ反応で溜息が出る。

 アユムの日常は今日も平常だった。





 ~~~~~~~~~~

 




 今日は夏休み中盤8月2日である。


 夜に地元の大きな祭りがあるからか昼時でも浴衣姿などが目に付いた。俺も祭りに行く予定なんだけど、暑過ぎて既に気力が削られていた。


「待ち合わせの時間早すぎだろぉ」


 キッカケは親友からの待ち合わせの連絡だった。真夏の日差しがギラつく昼時に行きたい場所があるって話だ。そしてそのまま夜の祭りに行こうと誘われた。その時は暇だったし、特に何も考えずにOKした。


 しかし今は凄く後悔している。道中何回断りの連絡をしようと思ったか……。そもそも昼に待ち合わせる必要がないハズなんだ。祭りは夜に始まるんだから。つーか行きたい場所って今日じゃなきゃダメなのか?


 俺は汗だくになりながらも仕方なく歩いた。


 ちなみに待ち合わせ場所は親友の家の近くにあるコンビニ。そのコンビニまでは家から歩いて20分。もうそろそろ見えてくる筈と思いながら大通りを歩いていたら、横目に古びた小さな神社が視界に入ってきた。


(ん? こんな所に神社なんてあったっけ? 初めて気付いたぞ?)


 大通りに面した場所にあれば嫌でも気付くと思うのだが、生まれてから今までこの場所に神社があるなんて気が付かなかった。小さいのも原因かもしれないが、何故か少々興味が湧いてきた。


 携帯を取り出し、時間を確認したらまだ予定時間までは余裕がありそうだった。俺は何故か気になったんだ。記憶にない場所に神社があったから。


 額の汗を拭いつつ今行くかどうかを迷っていたら、神社の敷地内から声が聞こえた。


(なんだ? 誰かいんのか? じゃ、また今度にしよ...)


「や、やめて下さいッ! 警察呼びますよ!?」


(ん? なんだ? 穏やかそうじゃないな?)


 どうやら揉め事があるみたいだ。俺は諦めようかと思ったが、やはり中に入ることを決めた。後悔することになったら嫌だったし。

 



 中にいたのは1人の女の子と2人の男の様だった。後ろ姿しか見えないけど、男の1人は茶髪のイケイケ風に見える。


(ホストとかか? 暑いのにスーツとか頭おかしくねぇか?)


 もう1人の女の子に近い男は、金髪で剃りこみに気合が入っている。


(完全に子分って感じだな? こんなトコで何してんだアイツら?)


 女の子の方は男がいて見えない。しかし、金髪()()が少女の腕を握り何か怒鳴っている。



「俺達が何したって言うんだよッ!? 違ぇよッ‼ 話聞けってッ‼」


「わ、私を執拗に追いかけて車に乗せようとしてるじゃないですかッ‼」


(車に無理やり? それはいけないだろ?)


 俺は事態の問題をすぐに理解した。どうやら男達は女の子を無理やりどこかへ連れて行こうとしているらしい。


(このクソ暑い時になに犯罪まがいの事してんだよ?)


 だから俺は歩いて近付き、なんとなく殴った。


(暑いから余計にイラつくんだ、よッ‼)


「誰だッ!? なんでゅわッッ!?」


 そして、もう1人も。


「なッ!? グワッッ‼」


 いきなり現れた俺に殴られたからか男達は焦り、怯えながら消えて行った。


(チッ‼ クソ暑いのになんでイラつかせんだよ‼)


「あ、ありがとうございま...あれ? 日々埜、君?」


 声を掛けてきた女の子の方を見たら、そこにいたのは、俺のよく知る人物だった。


 その人は俺の片思いの相手、同級生の花野(はなの) (しおり)さんだった。


 彼女は花の様に緩やかな髪を肩の長さまで伸ばしていて、花柄の白い浴衣を着ている。なにより花の様な甘い匂いが俺はとても好きだ。そんな可憐な花の妖精が俺を見てくれている。


(は、は、は、花野さん!? 何故にッ!?)

 

 どうやら俺は片思いの好きな子を助けたようだ。

 助けれたことを嬉しく思ったが、好きな子にいかがわしい事をしようとしたアイツらが更に許せなくなった。


「ご、ごめんね? 私急いでるのッ! また()()会いましょう? その時にちゃんとお礼するからッ‼ ありがとう日々埜くんッ‼」


「あ、あぁ? また、今度?」


 とりあえず手を上げて答えとく。


(あれ? さっき夜って言った? ……は? 俺、夜に会う約束なんてしてねぇんだけど?)


 俺がその場で頭を傾げて花野さんを見送っていたら、後ろから唐突に声が掛けられた。


「うるさいんじゃぁッッッ‼」


(うぉッ!? なんだ?)


 子供の様な声が聞こえて振り返ってみたが、そこには誰もいなかった。と、思ったら下に小さい女の子がいた。


「な、なんだ、ガキ?」


「キィィィィッッ‼ ガ・キじゃないわッ‼」


(うるせぇガキだな。それにしてもあの服、巫女か?)


 うるせぇガキの服は赤と白の巫女服の様に見える。ただ、何か薄汚い変な形の巫女服だ。見た事ない感じのデザインだと思う。装飾も現代日本らしくはない。


 コスプレって奴か? 興味ないから知らねぇけど。


「貴様(わらわ)(やしろ)(よこしま)(ごう)(たくらんで)んで居ったな! 気配で分かるぞ? 気配でッ‼ ニヤニヤ気持ち悪い顔で何を企んで居ったッ!? 天罰を与えてやるッ‼ 不届き者めッ‼ 反省して己の過ちを悔い改めよッ‼ てやぁっ‼」


 ガキは俺の方へ両手を広げて、どこからか光を放ってきやがった。


「何言ってんだよ? あれか? 中2びょ、うぉっ!? まぶしッ‼ ちょ、やめろって。人の目にライト向けんなッ‼」



 俺はこの時気付かなかったんだ。

 どうしてあの時逃げなかったのか後悔している。


 あの駄神のせいで俺の全てが変わるなんて思いもしなかったから。




評価していただいたら幸いです。

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