テンプレ、王道、ベタなシーンがある
悪役令嬢もの、追放聖女もの……今回はテンプレについて考えてみようと思います。
まず。
どうして『王道』や『テンプレ』は好まれるのでしょう??
マーケティングにおける消費者行動や心理で『王道を選ぶ理由』でググってみましたが、めぼしいものは出てきませんでした。
なろうにアップされている小説は無料で読めます。対価がない=購買行動ではないのです。
じゃあ『王道』や『テンプレ』のいいところって何なのでしょう。
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①物語の内容が推測しやすい
②約束されたハピエン=安心感
③テンプレが満たす効能が明確
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た~にゃんが思いついたのはこの三点ですね。もっとあるなら、ぜひ教えて下さいm(_ _)m
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①物語の内容が推測しやすい
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例えば悪役令嬢ものなら。
転生したら乙女ゲームの悪役令嬢。ベタな婚約破棄は甘んじて受け入れ、前世の知識で商品開発。ひと財産築き、隣国ともパイプができる。乙女ゲームのヒロインが出てきて悪さをするが、バカ王子とセットで『ざまぁ』して、悪役令嬢は隠しキャラたる超ハイスペック攻略対象と結ばれてめでたしめでたし。
こんな『テンプレ』でしょうか。
一度でも悪役令嬢ものを読んだ読者なら、あらすじのキーワードだけで、おおよそどんな設定でどうお話が転ぶのか読めてしまいます。
一種のネタバレ=既知の物語です。
既に知っている。世界観も話の展開も。
だからこそ、頭を使わなくていい。疲れない。
変なことを言うようですが、恋愛小説ってどんなお話ですか?
たいていが『恋愛成就』の物語じゃないですか? ヒーローとヒロインがくっついてハピエンです。
勧善懲悪ってどんなお話ですか?
明確な『善』がいて、明確な『悪』がいる。『善』が『悪』を打ち負かす物語……。
……ですよね?
つまり、なろうに出回っている物語の大半は、ジャンルとタイトルでネタバレしているのです。だからといって飽きられたり敬遠されているわけではないですよね?
『ネタバレ』=『つまらない』ではない。
むしろ、読むハードルを下げているのだと思われます。
長文タイトルが流行るのも、こういうところに理由があるように思えます。
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②約束されたハピエン=安心感
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悪役令嬢ものにしろ、追放聖女ものにしろ、主人公が不幸になるバッドエンドって耳にしませんよね?
主人公は99%幸せになります。
短編にせよ長編にせよ、読者は主人公に共感し、没入します。故に愛着もわきます。
主人公が幸せになれば、読者も幸せを疑似体験します。結果、「スカッとする」「カタルシスを味わう」のです。
※話の運びにもよりますが、マジなバッドエンドは、読者にストレスを与えますし、気鬱にさせます。
『テンプレ』な物語の主人公は、まず不幸にはなりません。それが、この上ない安心感を読者に与えるのだと思います。
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③テンプレが満たす効能が明確
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なろう小説は無料で読めますが、だからといって読者側に何のニーズもない、ということはないと思います。
例えば。
【事例1】
上司に理不尽な理由で一時間怒鳴られた
↓
ストレス解消にコメディ小説を読んだ
とか。
【事例2】
後輩に彼氏をとられた
↓
悪役令嬢ものを読んでスカッとした
とか。
【事例3】
面白い小説が読みたい
↓
ランキング首位の無双ハーレムを読んだ
↓
無双ハーレム好きが一名増えた
みたいに(笑)
この点、『テンプレ』は味わえる効能が明確です。「『ざまぁ』でスカッと優越感」とか「腹筋崩壊大爆笑」とか「モテモテ気分満喫」とか。
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さて。
今までは『王道』や『テンプレ』はなぜ支持されるのか、ということを考えてきました。
では、『悪役令嬢もの』や『追放聖女もの』はどうして支持されるのでしょうか。
これについてもた~にゃん個人の持論でしかありませんが、考察してみたいと思います。
こんな図を作ってみました。
悪役令嬢もの&追放聖女ものフローチャートです。
こんな流れの物語から読者は何を感じ得るのでしょうか。
(※①と内容が被る【マズローの欲求五段階説】に関わる部分は省略します)
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『テンプレ』に潜む願望と効果
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【異世界転生=現実逃避願望】
あんまり悪く捉えたくないのですが、日常が忙しかったり、イヤなことがあって凹んだりしたとき、物語の世界を空想するのは、心の防衛反応の一つだと言われています。
『スローライフ』『もふもふ』というキーワードも、ここに行き着きそうですね。長閑な田舎の生活や、可愛い動物と共に過ごす時間は、心を癒す空想にはもってこいに思えます。
【『苦境』から物語が始まる=強さと自由への渇望】
異世界転生した女性主人公。悪役令嬢も追放聖女も、『苦境』から物語が始まります。そして、彼女たちはほぼ共通して、商会を立ち上げたり、田舎でスローライフ(自給自足)の生活に行きつきます。国のトップになったりもしますね。聖女なら王族と対等な存在になったり。
誰かにコキ使われる立場ではないんです。
強く自由で、自分の力で道を拓いていく女性像――。
苦境をはねのける主人公を『体感』したい――『成長して強くなり、誰かに指図されることなく自由に……』という願望が少なからずあると思います。
【価値観の反転:コントラスト効果】
コントラスト効果とは、前後に対比させる物事によって、印象が大きく変わる心理現象です。
例えば、味の違う食べ物。最初に甘いキャンディーを舐めた後青汁を飲むと、恐らく最初から青汁を飲んだ時より、すさまじく苦く感じます。このように、前後に体感した物事により、我々は実際の差より物事の印象を大きく感じてしまうのです。
悪役令嬢ものも追放聖女ものも、物語の冒頭で主人公は散々に嫌われ、貶されます。
その後、環境が変わり今度は優しくされ、褒められます。
例えばヒーローのこんなセリフ、どう感じますか?
(例①)コントラスト効果なし
ヒーロー:「貴女は実に愛らしい女性だ。確かに貴女の発言は厳しくも聞こえるが……的確であるし、何より民を慈しんでの言葉だ」
(例②)コントラスト効果あり
バカ王子:「貴様はいつも無表情で、可愛げがない。しかも、この俺に賢しらに意見するとは、王太子たる俺を見下し侮辱している証左ではないか!」
↓
ボロクソに言われて傷ついた主人公(悪役令嬢)に、
ヒーロー:「(蕩けるようなイケメンスマイルで)貴女は実に愛らしい女性だ。確かに貴女の発言は厳しくも聞こえるが……的確であるし、何より民を慈しんでの言葉だ」
一度落として持ち上げる効果よ……。
蛇足ですが、ギャップ萌え(強面なのに優しいところがある)もコントラスト効果の一つです。
【カタルシスを味わう】
カタルシスとは心理的には『精神の浄化』という意味があります。
『カタルシス効果』とは、古くは哲学者のアリストテレスが広めた概念。ウィキさんによると、「悲劇が観客の心に怖れと憐れみの感情を呼び起こすことで精神を浄化する効果」とのこと。
悪役令嬢にしろ追放聖女にしろ、
なんの非もない主人公が、理不尽に貶められた挙げ句追放される→周囲に助けられながら人々のために働き夢を叶え、壁にぶつかりながらも成長、誰もが羨む有能でイケメンな彼氏もゲット→最終的に自分を貶めた者達を見返したり、断罪したりする…
ですよね?
理不尽な悲劇を華麗に解決、『ざまぁ』で仕返しもやってスッキリ。大変わかりやすい構造になっています。
【攻撃の的】
いくつかのテンプレ作品を読んでいて気にかかったことがあったので、書き記しておきます。
なろうのテンプレ小説に見られる過剰な攻撃的シーンです。
主人公を婚約破棄したり追放した人間が断罪されるシーンですね。
例えば、フローチャートにあるように断罪後、元婚約者の王子は廃嫡&幽閉、元婚約者を誑かしたヒロインは投獄されます。社会的な『死』を与えられるわけです。これくらいならまだいい。
問題はその後。手ぬるいと感じるのか、拷問にかけたり、処刑したり、嬲り殺しにしたり……大変残酷な末路を辿る作品が増えています。
そして、そんな残虐展開があるにもかかわらず、それらの作品は高評価を得ています。
た~にゃんは、敵とはいえ過剰な残虐展開は病的と感じますし、ドン引きして程度によっては読むのをやめてしまうのですが……。
みなさんはどう思われますか?