なりきりたい!と思わせる主人公
物語の大事な大事な要素――主人公
なりきりたい=疑似体験したいと思える主人公って、どんな人物でしょうか。
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①容姿端麗、もしくは可愛げがある
②強力な助っ人、サポートに恵まれている
→やることなすこと、だいたいにおいて結果を出せる
③人タラシ、もしくは世渡り上手、善人的(博愛的)性格
④他人とはひと味違うアイディアを出せる
⑤稀少な才能の持ち主
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いかがでしょうか?
主人公あるある、ではないでしょうか。
ちなみに。
主人公の初期設定として、このどっちかなこと、多くないですか??
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A 超人、もしくは聖人
B 普通、もしくはパッとしない
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たとえBだとしても、主人公には何らかの特別要素――主人公あるある③④⑤あたりが絡む――があり、最終的にはAに移行するパターンが王道ではないでしょうか。
ここまでが前振りです。
主人公あるあるを踏まえまして。
マズローの欲求五段階説のお話をしようと思います。
【マズローの欲求五段階説】
人間の欲求は五段階のピラミッド状になっている、との説。ピラミッドの頂点に近づくほど、より高次の欲求となる。
①生理的欲求
最低限生きていくための本能的な欲求。
食事、睡眠、排泄、そして性欲など
②安全欲求
身の安全、雇用など経済的安定、健康の維持、平和な社会の維持など
③社会的欲求(所属、愛情欲求)
◆所属欲求:自分が社会に必要とされている、役割を持ちたいという欲求
◆愛情欲求:自分を受け入れてくれる親密な他者を求める欲求(友達が欲しいとか)
④承認欲求
集団の中で、自分が価値ある存在と認められ、尊重される欲求(他者基準)
↓
自分を能力ある人間として承認する(自己基準)
⑤自己実現欲求
自分にしか為しえない、なりえないモノになりたい、理想に近づきたい欲求(夢の実現とか)
学校で習ったことだと思うので、詳しい説明は省きますよ?
さて。これを『主人公あるある』に当てはめてみましょう。
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①容姿端麗、もしくは可愛げがある
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つまりはイケメン、もしくは美女、あるいは性格美人ってことですね。
問答無用で人に好かれます。そして、美しさを褒めそやされることもあるでしょう。
社会的欲求(愛情欲求)、承認欲求が満たされます。
次!
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②強力な助っ人、サポートに恵まれている
→やることなすこと、だいたいにおいて結果を出せる
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恵まれた環境――貧富はどうあれ、主人公の周りはある程度は安全で秩序があり、かつ社会的欲求(所属、愛情両方)、さらに承認欲求、下手したら自己実現欲求も叶えていそうです。
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③人タラシ、もしくは世渡り上手、善人的(博愛的)性格
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ほぼ①と被りますが、ひとまず置いておきます。
次!
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④他人とはひと味違うアイディアを出せる
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前世の知識とか、ですね。それだけとは限りませんが。自己実現欲求に向かう重要な要素と言えるのではないでしょうか。
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⑤稀少な才能の持ち主
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わかりやすく強力な魔法使い、武闘派主人公という設定もありますが、一見役に立ちそうにないスキル持ちで、アイディアでもってのし上がっていく…なんてストーリー、ランキングでもよく見かけるでしょう?
特別感。アドバンテージ。
これね、承認欲求のうち『自分が自分を認める』方の高次欲求を叶えていると思います。
どうですか??
マズローの欲求五段階、主人公あるあるはほぼすべて満たしているとは思いませんか?
しかも高次な欲求ほど重ね掛けしています。
主人公になりきったら、それは良い気分を味わえると思いませんか??
まだ続くよ。
もう一回、マズローの欲求五段階説の登場です。
ピラミッドの頂点の上に、小っさい逆三角があるの、気づきました?
実はマズローさん、晩年になってから、欲求五段階にはもう一つ、ステージがあると発表したのです。
それが、自己超越欲求。
マズローさん曰く、自己実現に伴う至高体験を求める欲求とのこと。
至高体験というのは、ある種の神秘体験のようなもので、自己超越、無我、利害超越、博愛など人間にとって最も幸福な体験とされています。
また、マズローさんの言う自己超越欲求の大きな特徴は『利他性』。自分という存在を超越し、周囲の人々を愛したい――。
我々の日常にはとんと見かけない概念です。
馴染みがないし、分からない。
『利他性』――博愛……
主人公の初期設定
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A 超人、もしくは聖人
B 普通、もしくはパッとしない
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『聖人』――
あ!
なんとランキング入り小説とやらは、この超高次の欲求すら満たしているのです。
そういや主人公って、孤児院支援している設定とかありません? アレです、アレ。
聖人、聖女、ついでに勇者――みんな自分ではない誰か=『民』のために頑張っている。
これが博愛以外の何なのでしょう。
引っ張りましたが、結論です。
【なりきりたい!と 思わせる主人公】
を創るには。
物語の中で、マズローの高次欲求をたくさんたくさん満たしてやれば、『なりきりたい主人公』ができあがるのです。
次回は、どっぷり浸れる恋愛要素について考察します。