蛇足・断片・番外④~感動を創る~
『感動』は、物語の目玉とも言える大切な要素です。なぜなら、感動はある種の快感に他ならず、また感動したことは長く心に残るからです。
感動を創る――ウケる物語には必須であると、た~にゃんは考えています。
どうしたら、『感動』する物語を書けるのでしょうか。
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【感動の根源】
人は何があって『感動』するのでしょう。
日本認知科学会刊行の学会誌『認知科学 Vol.8 No.4 (Dec. 2001)』(日本認知科学会編集、共立出版)中、戸梶亜紀彦氏による論文【『感動』 喚起のメカニズムについて 】を参考にまとめてみました。
感動の素となる出来事とは……?
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①喜ばしい・嬉しい出来事
②第三者の立場から見た悲しい出来事
③驚きの出来事
④尊敬の念を呼び起こす出来事
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順番に具体例を挙げていきましょう。
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①喜ばしい・嬉しい出来事
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(例)
・魅力的な異性との恋愛が成就した
・仕事で成果をあげた
・別人のように綺麗になった
・仲間の絆に救われた
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②第三者の立場から見た悲しい出来事
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(例)
・親しい者の死を看取った
・悲恋
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③驚きの出来事
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(例)
・絶体絶命な状況下で打たれた起死回生の一手
・絶景を見たとき
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④尊敬の念を呼び起こす出来事
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(例)
・自分が罰せられるリスク覚悟で、ビザの大量発行で被迫害民を国外に逃す行為を目の当たりにした
・厳しい鍛錬なしには成功し得ない技で、格上の相手に勝利する行為を目の当たりにした
こんなものでしょうか。
でも、いまいちピンと来ませんよね。
特に②。悲しいことで感動なんかするのかよ?!
じゃあ、もっと具体的にいきましょう。
みんな知ってる『フランダースの犬』のラストシーン。
「ルーベンスの絵だよ……」
濡れ衣を着せられた主人公のネロが、最期に名画を見て、愛犬パトラッシュと共に息を引き取ります。
悲しい出来事ですよね。
でも、心揺さぶられ『泣け』ますよね。
少なくとも「気分悪ぃな」とはならないはずです。
アニメではこの後、天使が二人を迎えにきて、ネロたちが笑顔で空を飛ぶシーンがあります。さらに、地上ではヒロインの女の子がネロを探しまわっていて、濡れ衣を着せたおじさんが「許してくれ……」とオロオロしていたり。
濡れ衣が晴れずに死にました。可哀想でしたねおしまい、じゃないんです。その後、濡れ衣が晴れて、ネロはパトラッシュと天国へ……みたいな『ポジティブなほのめかし』があるんです。
悲しいだけじゃない。『泣ける』感動には、その後何らかの『ポジティブな展開』がくっついています。
結果生じる『切なさ』に心揺さぶられるのではないでしょうか(※ごめん。これはた~にゃんの持論でしかない)。
※参考文献には、『ポジティブ要素』により『悲しみ』が『美化される』って書いてありました。なんとなく国民的ロボットアニメが浮かびました(笑)
例えば今流行の『鬼滅の刃』。『手鬼』のエピソードも。炭治郎の手を握り返しての最期のシーンは泣けますよね……(気になる人はググッてみてね)
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【感動させるには情報が不可欠】
感動するには、感動する結末(上に挙げたモノ)へいたるまでの詳しいエピソードが必須です。
例えば、『泣ける話』の結末部分だけ聞かされても「ふーん」か最悪「???」にしかならないでしょ?
主人公の背景事情はどうなのか。
どんな&どれほどの苦労があったのか。
このような情報を重ね、読者に主人公についての知識やエピソードを蓄積させ、関心を持たせる(続きが知りたい! と思わせる)ことで、物語への没入させ、共感&感情移入を促す必要があります。
この情報の分量が少なすぎれば感動が目減りし、多すぎれば緊張が続きすぎてストレスになるんだとか。匙加減が難しそうですね。
物語に没入した読者。ストーリーが進み、結末への期待と不安に揺れます(緊張状態。上図参照)。
そこに、感動の素である出来事が起き、緊張状態から解放される=感動にいたるんだそうです。
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感動する仕組み(心理学的なもの)を出しましたが、いかがでしたでしょうか。
ここからはた~にゃんの持論でしかありませんが、作品に『感動』を仕込むやり方について、考えてまいります。
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①細かいパート(章)に分ける
②起承転結をコンパクトに
③心情描写を多く
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この三つかな……。
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①細かいパート(章)に分ける
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百話越えの大長編で壮大な物語――それも素敵だとは思います。けれど、それだと情報の分量が膨大=なかなか緊張感から解放されない→ストレスに陥る可能性があります。
なので、長大な物語をいくつかの小さな物語に分解してみればどうかな、と思うのです。
例えばですが、ダンジョンものとかで…
【一章】初めてゴブリンを倒した
【二章】キングゴブリン討伐に成功!
【三章】ドラゴニュートと遭遇、仲間を失うもなんとか倒した!
【四章】地竜を倒し、スキルに目覚めた
【五章】ついに最終目標、魔王討伐
言ってみれば、小シリーズ化――大きな物語をいくつかの小さな物語の連作で構成する方式ですね。
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②起承転結をコンパクトに
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情報量を少なく、マンネリ(要らない情報)を削ぎ落とし、物語に起伏をつけるには必要だと思います。
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③心情描写を多く
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図を見てもわかるとおり、感動には『感情移入』がとても重要です。主人公の……とは限りませんが、心情描写には力を入れた方がよいでしょう。
感動を要所要所に配置し、記憶に残る物語が描けるといいですね←簡単にできりゃ苦労はしない(-ω-;)