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蛇足・断片・番外④~感動を創る~

 『感動』は、物語の目玉とも言える大切な要素です。なぜなら、感動はある種の快感に他ならず、また感動したことは長く心に残るからです。


 感動を創る――ウケる物語には必須であると、た~にゃんは考えています。

 どうしたら、『感動』する物語を書けるのでしょうか。



◆◆◆



【感動の根源】


 人は何があって『感動』するのでしょう。


 日本認知科学会刊行の学会誌『認知科学 Vol.8 No.4 (Dec. 2001)』(日本認知科学会編集、共立出版)中、戸梶亜紀彦氏による論文【『感動』 喚起のメカニズムについて 】を参考にまとめてみました。


 感動の素となる出来事とは……?


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

①喜ばしい・嬉しい出来事

②第三者の立場から見た悲しい出来事

③驚きの出来事

④尊敬の念を呼び起こす出来事

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 順番に具体例を挙げていきましょう。


ーーーーーーーーーーーー

①喜ばしい・嬉しい出来事

ーーーーーーーーーーーー

(例)

 ・魅力的な異性との恋愛が成就した

 ・仕事で成果をあげた

 ・別人のように綺麗になった

 ・仲間の絆に救われた



ーーーーーーーーーーーーーーーーー

②第三者の立場から見た悲しい出来事

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

(例)

 ・親しい者の死を看取った

 ・悲恋



ーーーーーーー

③驚きの出来事

ーーーーーーー

(例)

 ・絶体絶命な状況下で打たれた起死回生の一手

 ・絶景を見たとき



ーーーーーーーーーーーーーー

④尊敬の念を呼び起こす出来事

ーーーーーーーーーーーーーー

(例)

 ・自分が罰せられるリスク覚悟で、ビザの大量発行で被迫害民を国外に逃す行為を目の当たりにした


 ・厳しい鍛錬なしには成功し得ない技で、格上の相手に勝利する行為を目の当たりにした




 こんなものでしょうか。

 でも、いまいちピンと来ませんよね。

 特に②。悲しいことで感動なんかするのかよ?!


 じゃあ、もっと具体的にいきましょう。

 みんな知ってる『フランダースの犬』のラストシーン。


「ルーベンスの絵だよ……」


 濡れ衣を着せられた主人公のネロが、最期に名画を見て、愛犬パトラッシュと共に息を引き取ります。


 悲しい出来事ですよね。

 でも、心揺さぶられ『泣け』ますよね。

 少なくとも「気分悪ぃな」とはならないはずです。


 アニメではこの後、天使が二人を迎えにきて、ネロたちが笑顔で空を飛ぶシーンがあります。さらに、地上ではヒロインの女の子がネロを探しまわっていて、濡れ衣を着せたおじさんが「許してくれ……」とオロオロしていたり。


 濡れ衣が晴れずに死にました。可哀想でしたねおしまい、じゃないんです。その後、濡れ衣が晴れて、ネロはパトラッシュと天国へ……みたいな『ポジティブなほのめかし』があるんです。


 悲しいだけじゃない。『泣ける』感動には、その後何らかの『ポジティブな展開』がくっついています。


 結果生じる『切なさ』に心揺さぶられるのではないでしょうか(※ごめん。これはた~にゃんの持論でしかない)。

※参考文献には、『ポジティブ要素』により『悲しみ』が『美化される』って書いてありました。なんとなく国民的ロボットアニメが浮かびました(笑)


 例えば今流行の『鬼滅の刃』。『手鬼』のエピソードも。炭治郎の手を握り返しての最期のシーンは泣けますよね……(気になる人はググッてみてね)



◆◆◆



【感動させるには情報が不可欠】


 感動するには、感動する結末(上に挙げたモノ)へいたるまでの詳しいエピソードが必須です。

 例えば、『泣ける話』の結末部分だけ聞かされても「ふーん」か最悪「???」にしかならないでしょ?


挿絵(By みてみん)


 主人公の背景事情はどうなのか。

 どんな&どれほどの苦労があったのか。


 このような情報を重ね、読者に主人公についての知識やエピソードを蓄積させ、関心を持たせる(続きが知りたい! と思わせる)ことで、物語への没入させ、共感&感情移入を促す必要があります。


挿絵(By みてみん)


 この情報の分量が少なすぎれば感動が目減りし、多すぎれば緊張が続きすぎてストレスになるんだとか。匙加減が難しそうですね。


 物語に没入した読者。ストーリーが進み、結末への期待と不安に揺れます(緊張状態。上図参照)。

 そこに、感動の素である出来事が起き、緊張状態から解放される=感動にいたるんだそうです。



◆◆◆



 感動する仕組み(心理学的なもの)を出しましたが、いかがでしたでしょうか。


 ここからはた~にゃんの持論でしかありませんが、作品に『感動』を仕込むやり方について、考えてまいります。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

①細かいパート(章)に分ける

②起承転結をコンパクトに

③心情描写を多く

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 この三つかな……。



ーーーーーーーーーーーーーー

①細かいパート(章)に分ける

ーーーーーーーーーーーーーー


 百話越えの大長編で壮大な物語――それも素敵だとは思います。けれど、それだと情報の分量が膨大=なかなか緊張感から解放されない→ストレスに陥る可能性があります。

 なので、長大な物語をいくつかの小さな物語に分解してみればどうかな、と思うのです。


 例えばですが、ダンジョンものとかで…


【一章】初めてゴブリンを倒した

【二章】キングゴブリン討伐に成功!

【三章】ドラゴニュートと遭遇、仲間を失うもなんとか倒した!

【四章】地竜を倒し、スキルに目覚めた

【五章】ついに最終目標、魔王討伐


 言ってみれば、小シリーズ化――大きな物語をいくつかの小さな物語の連作で構成する方式ですね。



ーーーーーーーーーーーー

②起承転結をコンパクトに

ーーーーーーーーーーーー


 情報量を少なく、マンネリ(要らない情報)を削ぎ落とし、物語に起伏をつけるには必要だと思います。



ーーーーーーーー

③心情描写を多く

ーーーーーーーー


 図を見てもわかるとおり、感動には『感情移入』がとても重要です。主人公の……とは限りませんが、心情描写には力を入れた方がよいでしょう。




 感動を要所要所に配置し、記憶に残る物語が描けるといいですね←簡単にできりゃ苦労はしない(-ω-;)

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― 新着の感想 ―
[一言] ふむふむ、今回もとても為になる話でした。 ちなみにご存じかもしれませんが、 フランダースの犬の原作ではネロは純朴な少年ではなく、 15歳前後のやさぐれた少年で犬しか友達が居ない負け犬、 みた…
[良い点] 実に参考になって、ためになるエッセイですね。 語られる悲劇の内容が同じでも、ポジティブ要素が無ければ単なる鬱エンドで、感情移入出来る情報の積み重ねが無ければ他人事になってしまう。 切なさに…
[一言] 『手鬼』のエピソードは泣けましたよね……。 『鬼滅の刃』には沢山の感動が詰まってるので、お手本として最適かもしれませんね!
感想一覧
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