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冒険者は副業です  作者: 八尋
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第1話 Sランクパーティ

お久しぶりです。

また長い月日が流れ、前まで書いていた作品が終わっていないにもかかわらず、内容を忘れてしまい、いっその事、と現在、改稿版を執筆中です。

明日の22時にプロローグを投稿します。

年初めだったか、今年は時間が確保できないため、更新の頻度がより下がる的なことを書いた気がしますが、今もその状況は変わっていません。

そのため、こちらも改稿中の方も更新は多くありません。

気長にお付き合いいただければ幸いです。

 「た...じゃない、間違えた。カーティルさん。今日はどうするんですか?」

 「今日はエルブでも採りに行くか。」

 「それはどっちの...」

 「ん?両方だ。あって困るモノじゃない。」

 「そうですね。アレルポに入れておけば問題ないですし。」

 「ああ。いざという時にない方が問題だ。我々の場合は特に、な。」


 青い瞳を輝かせ、輝くような金髪が目立つ美貌の持ち主は、楽しそうに質問する。


 それに不愛想に答えるのは、カーティルと呼ばれた、寝ぐせなのかボサボサの髪の男だ。


 目つきが悪く、相手に恐怖感とまではいかぬとも、多少気を使わせる目をしている。


 青年とも中年とも呼べないような見た目の彼が、まだ少し幼さの残る美人の隣を歩く様子は違和感を覚えさせる。


 何も知らぬ者が聞けば、駆け出し冒険者がエルブ採取にでも行くと思うだろう。


 しかし、駆け出し冒険者の会話では普通有り得ない単語が混じっている。


 アレテアントルポ、通称アレルポとは、中に入れたものを入れた時の状態のまま保存できるというマジックアイテムだ。


 時間停止や状態保存の魔法が付与されており、入り口の大きさより小さいものなら何でも入れることができる。


 そんなアレルポは空間拡張の魔法も付与されており、同じ時間停止の魔法が付与された鞄、アレテサックの何倍、物によっては何十倍もの量が入る。


 アレテサックの中にも空間拡張の魔法が付与されたものがあるが、やはりアレルポとは比べ物にならない程度しか入らない。


 無論、そんなアイテムが安価なわけがなく、アレテサックであっても庶民が簡単に買えるものではない。


 エルブ採取は駆け出し冒険者の仕事であり、アレルポを所持できるような人物がやるようなことではない。


 しかし、彼らはもうそこそこの年齢にも見える。さらに言えば、一行は気品と風格を備え、貴族のように見えなくもない。


 駆け出し冒険者にしては装備、身なりも整っている。


 カーティルの両腰には、ポンメルや、グリップ、ガードまでも真っ黒なダガーと、真っ白なダガーが一ヒずつ携えられている。

 

 装飾も然程見受けられないそれは、一見大したものに見えなくもないが、見るものが見ればそれがとんでもないものだとすぐにわかる。


 一方、カーティルに話しかけていた美女、アクティフは一見何も装備していないように見えるが、スカートの下にはレッグホルスターを装着しており、そこに鍼や寸鉄を隠し持っている。


 見た目が美しい彼女は、言い寄られることが多い。しかし、無礼を働こうものなら即座に隠し持った武器によって痛い目を見ることになるだろう。


 そんな並んで歩くカーティルとアクティフの後ろを追従する人物が三人。


 一人は純白のフード付きのローブを纏い、ステッキを持っている如何にも魔法使いという雰囲気のマギサ。


 ローブには埃ひとつついておらず、その美しさは目を引かせる。しかし、すれ違う男たちはそれよりも彼女の豊かに隆起した胸の方に目を奪われるらしい。


 その隣を歩くのは、今にも服が破れそうなほどに筋骨逞しい大男、ファオスト。手にはセスタスを巻き付けている。


 彼の拳の餌食になれば、無事に帰ることはできないだろう。


 最後の一人はウカミ。小袖に羽織袴、大小の刀を腰に下げ、侍や武士と言う言葉が似合う外見だ。


 しかし、前を歩く大男の所為もあり、細身の彼がより細く見える。刀で戦うには少し頼りない見た目をしている。


 そんな個性豊かな者が五人も揃って街中を歩けば目立つのは当然だろう。


 今もすれ違う人は勿論、彼らを見かけた者達は彼らを話題に話に花を咲かせている。


 「なぁ、あれってもしかして...」


 「ああ。あんな見た目の人たちそういねぇだろう。」


 ロングソードを腰に携えた騎士風の男と、身の丈以上ありそうな大きな剣を背負う大男が、五人の方をチラチラ見ながら言う。


 「やっぱりそうだよな。Sランク冒険者パーティ【ノクターン】〖暁闇の雷霆〗」


 「かっけぇー。やっぱ俺らとは格がちげぇな。」


 「当たり前だろ。お前たちはまだBランクになったばかりだ。英雄と称されるSランクとは比べ物になんねぇよ。」


 「そこまで言わなくても...」


 騎士風の男の台詞に大男が項垂れる。


 しかし実際、SランクとBランクにはかなりの差がある。


 BランクとAランクの間には、大きな壁があり、さらにAランクとSランクの間に超えられない壁が存在する。


 それを突破できる者だけがSランクになることを許されるのだ。

 

 カーティル達はその壁を越えた一握りの存在であり、ほぼ全ての冒険者から尊敬され、同時に畏怖される存在でもある。


 冒険者ギルドに到着したカーティルは、扉を開ける。


 ギルド内に併設された酒場の方からは、昼間だというにもかかわらず酒の匂いを漂わせた冒険者たちの喧騒に包まれている。

 

 「相変わらず五月蠅い場所ですね。毎度のことですが嫌になっちゃいますよ。」


 「お前はこういうの苦手だな。静かな場所の方が好きか?」


 「んー...どうなんでしょう?こういった場所の方が物音を気にしなくて済みますが...」


 「そういう意味で聞いたのではないのだが...まぁ良いか。さっさと依頼を受注してエルブ採取に行くぞ。」


 酒場の方でも彼らに気づき、先程まで談笑しながら酒を飲んでいた者でも酔いが醒め、まじまじとカーティル達を見ている者までいる。

 

 低ランク用の受付はこの時間帯でもそれなりに列ができているが、高ランク用の受付は空いていた。


 カーティルは迷わず高ランク用の受付に進む。


 その間もアクティフは、ずっとカーティルの隣を歩く。それはもう誰もが振り向くような笑みを浮かべながら。


 その後を顔の見えない程にローブのフードを深くかぶった女性と、無表情な男二人が付いて行く。これが彼らの日常だ。


 「ディーヴァ、今日は何か依頼はあるか?」


 「あ、カーティルさん。今日はフェロウシャスベアの討伐依頼がありますよ。少し王都から離れてますけど。」


 カーティルが受付に座る女性に声を掛けると、ディーヴァと呼ばれた女性は顔を上げ、透き通った声で返答する。


 「そうか。フェロウシャスシリーズは放置していると後々面倒なことになる。わかった。その依頼受けよう。」


 「ありがとうございます。高ランクの方々が今出払っていて困っていたんです。」

 

 高ランク冒険者はそもそも絶対数が少ない。その上、最近はカーティル達以外のパーティの多くが調査依頼などの遠征に出ている。


 カーティル達にもそのような話が回ってこないわけではないが、彼らが遠出することはほぼない。


 「事後確認になってしまったが、皆もそれで良いな。」


 カーティルはディーヴァにギルドカードを手渡しながら、すぐ後ろにいるアクティフと、その後ろにいる三人に尋ねる。


 アクティフは満面の笑みを浮かべながら「勿論です。」と、マギサはコクンと無言で頷く。ファオストは「あぁ。」と拳を合わせ、アクティフとは違う種類の笑みを浮かべ、ウカミは柱にもたれ掛かりながら「問題ない。」と無表情で答える。


 全く違った反応を見せる四人の仲間の返答を確認すると、カーティルはディーヴァの方へと向き直る。


 「よし。問題なさそうだな。それと、ディーヴァいつも通りエルブ採取の依頼も残っているようなら引き受けるが?」


 「いつもすみません。Sランクの皆さんにこんな依頼を任せるのは気が引けるのですが。なかなか受けてくれる人がいなくて...」


 「気にするな。ギルドには世話になってるし、これくらいはな。」


 「本当はそっちが目的の癖に...」


 カーティルのすぐ後ろに控えるアクティフは、カーティルにだけ聞こえる声で悪態をつく。


 カーティルはその言葉への返事としてアクティフの額を弾く。「痛っ」とアクティフは弾かれた場所を両手で抑えながら、涙を滲ませる。


 「わざとらしい演技はやめろ。そこまで強くしてないだろ。」


 「むぅー。」と頬を膨らませるアクティフに、少しドキッとした自分を心の中で窘めながら、ディーヴァからギルドカードを受け取る。


 「それじゃディーヴァ、行ってくる。ほら、行くぞ。」


 未だ頬を膨らませているアクティフの手を取り、出口へと向かう。


 「お気をつけてー。」


 ディーヴァの声を聞きながら、Sランクパーティ〖暁闇の雷霆〗は冒険者ギルドを後にした。

今回は、異世界転生の類ではなく、初めから異世界が舞台の作品にしてみました。

主人公も20歳後半から30歳前半くらいという感じです。まだ決めかねています。

今回は何でもできる主人公ではなく、一点特化にしてみたいと思っています。

気に入っていただけたなら、ブクマ登録、評価、よろしくお願いします。

誤字脱字報告は勿論、感想、レビューもお待ちしております。

本作品は毎月末に更新予定です。


Twitter:@Yahiro123narou

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