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01 夢
「姫、どうかあなただけでもお逃げください」
「そんな、できません。最後まで一緒だと誓ったではありませんか」
燃え盛る城の最上部で、一組の恋人が立っている。
一人は姫。
もう一人は、その姫を守るための騎士だ。
二人は、燃え盛る城の中で固くだきしめあった。
互いの心は、危機的状況の中であっても、同じ方向を向いていた。
「ああ、姫。私も同じ思いです。本当はこの腕から貴方を離したくない。どうか、この命つきるまであなたの傍にいさせてください」
「ええ、私こそ。死んだあとでもずっと一緒よ」
そして、二人の姿は炎の中へと消えていった。
燃え盛る炎に包まれるなか、姫と騎士が永遠の愛を誓いあった。
だが、遠くからその二人を見て、悲しそうにする一人の男性の姿を、彼等は知らない。