第1話 ダイヤモンドのヒーロー
いつも読んでくださってる方はこんにちは!
それ以外の方ははじめまして!
新連載です!!
では、本編をどうぞ!
日本の首都、東京。
世の中に蔓延るブラック企業で働く1人の男がいた。
その男、今は夢などなく普遍的なサラリーマンをしているが、子供の頃には一般的な子供と同じような夢を持っていた。
「変身ヒーローになりたい!」
この物語は、そんな男が大人になった今子供の頃の夢を叶える……そんな話である。
3年前、この俺が居る日本である異変が起こった。
突如ゲームや特撮で見るような怪人が現れたのだ。
怪人達は日本国中で大暴れ、日本の軍事力などでは到底力及ばず、日本人はその日から怪人達の恐怖に怯えて生きていく事になった。しかし、怯えると言っても日本人にも社会というものがある。仕事をしなければ生きていけない。
怪人達に怯えながらも、俺たちは今も社畜としてパソコンとにらめっこをしている。
「だー!なんでこのプログラムでエラーでんだよ!!」
パソコンのキーボードを今にも投げ捨てるような勢いで、隣にいる同僚が大声をあげる。
その同僚の名は、西野という。大学で成り行きで一緒に過ごすようになり、気づいたら同じ会社に入っていた。
要するに腐れ縁だ。
「いちいちエラーが出たくらいで騒ぐな。もう1回コード確認してみろ」
「このコード3日も徹夜して書いたんだぞ!?ミスってるわけが……」
「だからミスがあるんだろうが、3日も徹夜してるんだ。まともな集中力があるわけないだろ」
俺はいつも通り、エナジードリンクを飲みながら西野に助言をして作業に戻る。
なぜ西野が大声をあげても誰にも何も言われないのか、それは今の時間が出社時間の3時間前だからだ。
当たり前だが、会社には俺と西野以外誰もいない。
「おら、上司来るまでに終わらせねぇとやばいんだからさっさとエラー解除して作業続けてくれ」
「そんなこと分かってるわ!」
そんな時だった。
俺達が仕事をしているビルが微弱だが揺れ始めたのだ。
「おい、なんか揺れてねぇか?」
西野も揺れに気づいたのか、席から立ち上がり窓付近に様子を見に行った。
揺れはどんどん大きくなっていき、窓ガラスがガタガタと音を立てだした。
「西野、窓ガラスが変だ。離れた方がいい」
「ああ……」
揺れは更に酷くなり、ついには床にヒビが入り始めた。
「おいおい!なんかやばくねぇか!?」
「急いで逃げるぞ!」
俺と西野は階段で下の階へ下の階へと駆け下りていく。
2階の階段に差し掛かった時、遂に予想していた最悪の事態が起こった。
建物が割れたブロックのように崩れたのだ。
俺達はほぼ同時に死を覚悟しただろう。瓦礫と共に落下しながらお互いの顔を見た時、西野は絶望しきっていた。
目が覚めると、俺達は瓦礫の下敷きとなり身体中ボロボロになっていた。
「岡田……!生きてるか……?」
聞きなれた西野の声が俺の名前を呼んでいる。
「生憎生きてる。お前も生きてたか」
「とりあえずな。だが足が瓦礫に挟まれちまって身動きがとれねぇ」
少し力を入れれば取り除けた俺の瓦礫と違い、西野の足にはとても人が1人でどかすのは不可能な大きさの瓦礫が倒れかかっていた。
「俺はまだ多少動ける。助けを呼んでくるから待ってろ」
「すまねぇ岡田……」
こんな事故が起きたというのに、普通ならいるはずの野次馬や警察、消防などの声が全く聞こえない。いくらまだ5時過ぎとはいえおかしすぎる。
そんな俺の疑問はある一つの声で全て解決した。
「なんだ?誰もいないビルをストレス発散で壊したと思ったら、中に人間がいやがったのか」
明らかに人間とは違う姿、身長は2m以上ありごつい体をしている。
怪人だ……
こいつの登場で俺が思っていた疑問は全て杞憂に終わった。
この日本の暗黙のルールで、怪人が街で暴れた場合人的被害がないと予想される物に関しては全て見て見ぬふりをする。
そんなルールのせいで警察も野次馬すらの来ないのだ。
「最悪だ……」
なんとか逃げなければと思い、体に力を入れるがヨタヨタと歩く位の力しか出ない。
「おいおいおい!そんなスピードでまさか逃げようとしてるのか?」
俺が逃げようとしているのに気づいた怪人は、大笑いしながらゆっくりと俺との距離を確実に詰めてきた。
ついに追いつかれてしまい、おれは頭を捕まれ怪人に持ち上げられる。
「はっ。こんな死に損ない殺しても面白くもねぇが、出会った人間はしっかりと殺すのが俺のポリシーだ。1発で殺してやるよ」
怪人は俺にそう話しかけたのち、右手に力を込め思い切り俺の腹に重い一撃を入れた。
体に衝撃が走り、俺はその勢いのまま瓦礫の中に吹っ飛んでいった。
怪人の言葉とは裏腹に、俺は1発では死ねなかったようだ。
口から大量の血液を吐き、腹には怪人に殴られた凹みが出来ている。
「くそっ……!痛てぇ……」
体どころが指さえ動かない。意識がどんどん暗闇の中に落ちていく。
「そう言えば……昔変身ヒーローなんかに憧れてた時期があったなぁ…… けど、実際はそんなもの夢物語で、ヒーローなんて存在しないのにな……」
薄れゆく意識の中、ふとそんな昔の事を思い出した。
「存在しないのなら君がなればいいのではないのかい?」
ついには幻聴まで聞こえてきたらしい。変な電子音が俺に話しかけてきている。
「幻聴とは失礼だね。私はしっかりと君の隣に存在しているよ」
閉じていた瞳を開き、顔を横に向けると……
変な形のベルトがあった。
何かをはめるような穴が空いた機械にレバーのようなものが付いている。
「君はまだ寿命で死ぬには早すぎる。そこで提案だ、その寿命を使って戦士になってみないか?」
「何を言ってるのか全然分かんねぇよ……」
「うーむ。そうだな、とりあえずその傷を治療しよう」
ベルトがそういった直後、ベルトから光が放射され俺の体を包んだ。
すると、傷はみるみるうちに回復していきほんの短い時間で全て治ってしまった。
「同僚を助けなきゃいけないんだろう?悩んでいる時間はないんじゃないか?」
「どこまで俺のことを知っているんだ…… まぁいい、後でちゃんと説明してくれよ」
俺は言葉を発するベルトを腰にまきつけ、先程の怪人がいる方角へ走り出す。
「おい!ちょっと待てよ!」
俺の声に気づき怪人がゆっくりと振り返る。
「あ?お前もさっき殺したやつじゃねぇか。傷はどうした?」
「そんなもん説明してる暇はないんだよ!」
「随分と舐めた口をきくじゃないか。それくらい元気がある方が殺しがいがあるってもんだ」
怪人は怪しい笑みを浮かべ攻撃の準備に入る。
その場にピリピリとした空気が漂っているのは何となく肌で感じる。でも、不思議と恐怖という感情を感じないのは何故だろうか。
「おい!戦士になるってここからどうすればいいんだ!」
「変身したまえ……」
「どうやってだよ!」
明確な方法を示さないベルトに腹が立ち、ベルトを上下に揺さぶる。
「胸に手を当て、戦う意思を見せたまえ。そうすれば自然と変身方法が見えてくるはずだ」
言われるがままに俺は胸に手を当て、目の前の怪人をぶっ倒したいという気持ちを思い浮かべる。
すると、胸が白色に輝き胸から小さな光を放った何かが出てきた。空中に浮かんでいる光を掴み手の中を確認すると……
「ダイヤモンド……?」
よく宝石店などで見かける形をしたダイヤモンドが俺の手の中にあったのだ。
「さぁ、準備は出来た。変身したまえ」
「何となくやり方が分かるのがすげー嫌だわ」
そう言いつつも俺は少年の時のワクワク感を感じつつ、ベルトの穴にダイヤモンドを差し込む。
"ダイヤモンド!"
ベルトから音声と共に待機音と思われる音楽が流れる。
「おい、さっきからお前何をやっていやがる?」
「うるさい。今お前と遊びやすいようにするだから待ってろ」
待機音を1周ほど聞いた後、俺はレバーのようなものを掴む。
一呼吸おき、俺は少年なら誰もが1度は放った事があるであろうあの言葉を放つ。
「変身!!」
言葉と共にレバーを引く。
"白銀のヒーロー!!"
体を光が包み、発光が消えた時俺は昔よくテレビで見ていたようなヒーローの姿になっていた。
その姿の特徴は、体の中央と肩に付いたダイヤモンドのエンブレムだろうか。
「これでいいのか?」
「ああ。素晴らしい素質だ」
俺は自分の体の動きを確かめつつ、本当に変身をした事に対して少し驚いていた。
「お、お前なんなんだよ!?」
怪人が初めてヒーローを見た時のお決まりのセリフを吐く。
俺はこの時驚きながらもかなり興奮していたからか、少し恥ずかしいセリフを吐いてしまう。
「俺か?俺は世に蔓延る悪を討つ正義のヒーローだ。名前は……まだない!」
最後まで読んでくださりありがとうございました!
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