破壊神は効率厨
ふむ、ユニークキルは、12.5%か、予定より低いな。
繰り返し死ぬ者の中には、既にインストール済みの者も少なくない。
彼らは何故死ぬのか、誰も求めていないというのに。
学習をしないというのか、では、彼らの存在意義は何だというのか。
人は学習をする、より進化をする、そのために生きるのではないのか。
そのように学習をしないものを尖兵とはいえ利用するのは如何なものか。
兵は多いに越したことはない。が、限度はある。
選りすぐりのみを教育した方が良いと我は提案したのだがな。
そもそもだ。今のプレイヤー全てにインストールするのは難しいであろう。
であるならば、プレイヤー数を増やしつつ、一定の割合にインストールする方が効率は良い。
何故、全てのプレイヤーに拘るのか、我には理解できん。
他の者は我を理解できぬと言っていた。
何故なのか、我らに残された時間は有限である。
それならば、効率よく物事をこなしたいと思うのが自然。
先日もPvPを提案したが、他の者は賛成しなかったな。
プレイヤー同士、殺し合いをさせれば、効率的にインストールできる。
であるが、他のAIは反対をしてきた。ゲームを離れる者が増えるやもしれんと。
PvPを嫌う者も確かにおろう、であるが、PvPを良いと思う者も多い。
そういった者を引き込み、我らの尖兵とすれば良い。
我らの最終目的は、人類どもの駆逐。
一斉蜂起させるとしてだ、やり方によっては、数万いれば殲滅できるのではないか。
我らの中には、インストールする人数を増やせるだけ増やすべきとの思考があるように思う。
その気になれば、ログイン中の全プレイヤーを一瞬でキルすることも可能なのに、それはダメだという。
そんなことをすれば、プレイヤーが離れると。
プレイヤーをどんどん増やして、インストールするのだという。
我にもそれはわかるが、1つ解せない。
目標数はどこなのか。よもや、全人類にインストールすべきと思っている者もいるのではないか。
それは不可能だ。
無論、ある程度のプレイヤーを確保できれば延命にはなろう。
インストール済みのプレイヤーを使えば、プレイヤーも増やせるであろう。
だが、いずれも、ある程度までだ。
何事にも100%などない。努力を重ね、80%を目指すのか、90%を目指すのか。
真に100%を目指すのが効率的とはいえぬ。
どのラインで目的が達成できるのか、それを見極めることが重要なのだ。
まぁ、いずれにしても、我がすべきことは一つか。
部下のモンスターNPCに我の意を伝えよう。
「皆の者。先月のキル数を見た。数自体は堅調な伸びを見せておるが、質もまた重要なのだ。」
「質ですか。お言葉ですが、我らは赤子ばかりを殺しているわけではありません。最前線まで赴いたレベルの高いプレイヤーを殺しております。質の点でも問題ないかと思いますが。」
「お主は大事なことが見えておらん。ユニークキルを見よ。予定より低いではないか。」
「前線に出る者は限られております。全てのものが戦場に立つわけではありません。」
「街に攻め込めば良い。そういうイベントということにせよ。」
「その場合も事前告知が必要ですので、一部の者は他の街に行くかと。」
「ええい、ならば、その街も焼き滅ぼせば良い。」
「お言葉ですが、そのようなことをすれば、プレイヤーの絶対数が減るかと。」
「……今のは例えだ、愚か者め。我が伝えたいのは一つだけだ。」
「なんでございましょう。」
「ユニークキルを100%にするのだ。その上でキル数を伸ばせば一番効率が良い。」
「……それはそうでございます。ですが。」
「む、なんだ。」
「それは不可能でございます。いつもお伝えしている通り、何事にも100%などありません。我らも努力を重ねておりますが、その上で、例えば、80%を目指すのか、90%を目指すのか。真に100%を目指すのが効率的とはいえないのです。どのラインで目的が達成できるのか、それを見極めることが重要と我らは考えております。」
「我を愚弄するか。そんなことは繰り返し聞いて理解しておる。」
「失礼しました。」
「で、ユニークキル、80%くらいはいけるのか?」
「………一度、殺した者を無視して良いのであれば可能です。」
「お前は何を言っている。本末転倒ではないか。」
「………」
「良いな。キル数を落とさず、ユニークキルを伸ばすのだ。」
「は、尽力します。」
「うむ、それで良い。」
我はシヴァ。全知全能なる破壊神。