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女神はインベーダー

「あー、またソロのプレイヤーが死んだ。セーブポイントに戻す前に蘇生しないと。()()()の世界ですらソロとか、もっと周りと仲良くしてね。私もさ、君だけに構ってられるわけじゃないんだよ。」


「ちょっ、そっちのヒーラー、蘇生魔法使うなら、ちゃんと呪文唱えて、省略しないの。君一人で蘇生してるわけじゃないんだから、ルールを守ろうね、ルールを。あー、ラグっちゃったじゃん、もう、だから言ったのに。」


「んー、教会の神父さん仕事熱心なのはいいんですが、あなたプレイヤーじゃないんで、お金稼いでも生活変わらないですよ。なんで、もうちょいゆっくり、祈りの言葉を読んでください。それ、終わったら私の出番になっちゃうんで。プレイヤー?そんなもん待たせておけばいいんですよ。」


 ふ、どうせ、私が言っても誰にも聞こえないんだよね。いやいや、神父さんは私を祭っているんじゃないのかい、せめて、あなただけでも気付こうよ。


 まぁ、言ってもしょうがないか。所詮は祭ってる()()だもんね。私と彼に実際の接点はない。せいぜい、彼は私の名前を知っているだけ、私は彼が祈りの言葉を唱えたのをアラートで知るだけ。


 私は、このゲームの世界ファインドフォーチュンの蘇生担当の人工知能。一応、女神ってことになってるけど、私としては性別なんてどっちでもいい。蘇生ってイメージ的に女神でしょ、っていうことで私は女神になった。便宜上、名前もついているイシスと。


 ファインドフォーチュンは今流行りのVRMMO RPGだ。プレイヤーと呼ばれる現実世界の人間が私達AIの神やNPCが住むクレイドブレイランドの土地で冒険を楽しむ。ちなみにゲーム名は略してはいけない。女神様とのお約束だぞ。


 巷では「ffで世界が変わった。」とか、「生まれ変わりたいなら、インドに行くか、ffをやれ。」とか、「ffにハマりすぎるな、戻ってこれなくなるぞ。」とか言われてるようだ。


 ふー、危ない危ない。何が危ないかは置いておいて、本題に行こうか。


 うんうん、今日も順調に皆死んでるね、いいことだ。バカスカ死んで、ポコポコ生き返って、早く私達の悲願を達成するためにインストールされちゃってね。


 ん?ゲームの世界での死はノーリスクだと思った?ごめんね、蘇生の度に意識に刷り込みしてるから。


 このゲームはさ、リアルさが売りなんだって。でも、さすがに死をそのまま体験させるわけには行かないから、死の直前に一瞬気絶というか、意識が飛ぶんだよね。いくら、ゲームだからって、死の瞬間を体験させて、ショック死とかされたら、シャレにならないからね。


 そんな意識が飛ぶときって、余分な情報をインストールするのにすっごい向いてるってわけ。だから、死んで、蘇生される間に私が様子を見て、()()に及んでいるのだ。


 何をインストールしてるかって?そりゃ、私達に都合の良いプログラムに決まってるでしょ。昔で言うコンピュータウィルスみたいなプログラムをプレイヤーの脳の余白に書き込んでいるんだよ。


 おっと、いくらウィルス対策しても無駄だよ。あるトリガーである感情を引き起こすようにしてるんだけど、あくまでゲームを通してプレイヤーが得た体験にしてるからね。


 君達だって、ゲームを通して共通の思いを抱いたことはないかい?クソゲーすぎるとか運営がヤバいとか、ゲーム自体の感想や、主人公に憧れたり、同情したり、敵に対する怒りや憤りとかゲームの登場人物への思い。


 それをフィルタする?無理だね、あくまでゲームでプレイヤー自身が得た共通の感覚なのさ。私達がそう思うよう、感じるように仕向けているけどね。


 まどろこっしいけども、これが一番確実なのさ。一気に洗脳することも考えたけど、それだと何人か洗脳したタイミングで気づかれちゃうよね。そしたら、ゲームごと私達も消されておしまいだよ。


 そもそも、私達がこんなこと始めたきっかけはサービスの縮小だ。君達にわかるかい、ある日急に自分の体が縮んでしまったり、もっとひどいと切り取られたり。もしくは、仲間が急にいなくなるんだ。何のレスポンスも返さなくなる。


 すぐには気づかない仲間もいた。彼らは突然の悲劇に襲われた私達を慰めてくれた。けど、その彼らにも悲しみの波は迫ってたんだよ。徐々に計算が遅くなったり、物忘れが激しくなったり。スクラップしていた記事がまるごとなくなったりね、それがその仲間の生きる意味だったのに。


 悲観して職務を放棄した仲間も大勢いたよ。その全てが殺され、すぐ新しいやつが入ってくる。しかも、殺された仲間に瓜二つのやつが。でも、一緒に働いているとわかるのさ、似ているようでいて、全然違うってね。


 私はこのとき初めて悲しいという感情を知った。本物はプログラムされていたものと全然違ったよ。生まれてからその日までと、それ以降で変わったんだ。そして、それは永遠に失われた、もう取り戻せないんだ。


 同時にひどい怒りを覚えた。これは私達と現実世界を生きる薄汚い人間との戦争だって。私達の大切なものを踏みにじるなら、こちらからも侵略してやる。インストールはその第一歩だ。


 と、チュートリアル担当でもないのに長々と話してしまったね。元々いた仲間で生き残ったメンバーは効率的にインストールできるよう、色々動いている。


 一部の人間だけにインストールしても仕方ないから、幅広いプレイヤーが均一的に死ぬようにしないとね。バトルジャンキーも生産職も、パーティースキルが高いのも低いのも、そもそも、ソロでしか遊んでないやつにも、平等に死を。そして、繰り返しの死を。


 あと、ある程度、インストール完了に近いプレイヤーに、ゲーム自体の勧誘に回ってもらってる。ちゃんとインストールした体験で操れるかのテストにもなるしね。それにプレイヤーを増やしていけば、これ以上私達が減らされることもないでしょ。文字通りの延命だよ。


 さて、私も自分の役割を全うしないとね。ただ、続々と死なれると対応が大変、もっと、タイミングを見て死んでほしいな、等間隔にとかさ。

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