092◆自首orお尋ね者⇒ボルタの電池
◆自首orお尋ね者⇒ボルタの電池
あたしは必死で考えた。 こんなに頭を使ったのは、高校受験のとき以来かも知れない。
どうせ逃げても捕まるなら、いっそ逃げずにひたすら謝罪するというのはどうだろう?
人間、誠意を見せれば心の清らかさが伝わるかも知れないではないか。
それとも、落ち武者のように誰も来ないような山奥に籠って、一生おびえてお尋ね者のように暮らすか・・・
散々悩んだあげく、あたしは無い知恵をぎゅうぎゅう絞りに絞って、ある秘策を考えだした。
まずは、大陸に着いたら、例の海洋大国の王様に謁見を申し入れるのだ。
そして、海龍を誤って大砲で打ってしまったことをお詫びする。
その際、謝罪の証として、あたしの持っているスマホを秘宝と称して献上するのだ。
スマホのカメラ機能や、オーディオの録音・再生機能や登録してあるアプリなどで、科学技術の素晴らしさを実感してもらうのだ。
この世界でスマホを見たら、王様だって絶対に驚くだろう。 あとは海龍とスマホの勝負|(一騎打ち)だ。
えっ? スマホは電池切れじゃなかったのかって?
うふふ・・・ これからボルタの電池ってやつを作って充電するんだな。
作り方は簡単。 中学校の時に理科の実験でやったのを覚えてる。
亜鉛板と銅板とうすい硫酸があれば、材料は揃う。 これはモッフルダフに聞いたら、積荷の中にもあるらしい。
あとは入れ物|(陶器)と銅線があれば、電池はできる。
ちなみに、10円玉(銅)と1円玉と食塩水と紙でもできちゃうらしい。
アルカリ電池を使うタイプの充電器は、持ってたのでこれに作った電池をつないで、充電すればOKだろう・・・と思う。
あとは公式 W=VxA 充電器はアルカリ電池(単3×4本)。 つまり1.5Vを4本直列だと6Vだ。
電池の性能で電流がどれだけ取り出せるかは不安だが、足りない分は並列接続でカバーすればよいと思う。
空になった充電器の乾電池の表示には、1.2V Typ.2000mAh と書いてある。
電圧を計るテスターみたいなものが無いので、こちらはスマホの充電ランプが点灯するかで見極めることにする。
あたしはこの時、理科の実験をまじめにやっておいて良かったと心から思った。
さっそく材料を揃えるために、モッフルダフに交渉して、必要なものを原価で売ってもらった。
あとは、実験と同じ要領で、材料をセットしてスマホにつなげばいいのだが、あたしはいつになく慎重だ。
まずは、ボルタさんの電池を1個作ってみる。
電気が作れたかは、キーホルダーに付いていたLED球が光るかで判定しようと思う。
あたしが、一生懸命に電池作りをしていると、メイアとシルフが珍しいのか寄ってきて、じぃっと見ている。
せっかくだから、理科の先生になりきって、電気が起きる仕組みと実験内容を説明してあげる。
でも、なんだか途中で自分の説明している内容が怪しくなって来たので、こんな感じ?みたいに誤魔化した。
そうしたら、シルフとメイアが、こっちをチラチラ見ながらヒソヒソ話しをし始めた。
気が付かない振りをするが、額と背中に嫌な汗が流れる。
二人の視線に気づかない振りをして、黙々と配線を続ける。
それで出来る電気と同じもの、シルフもメイアも出せる。
シルフが、沈黙を破って何か言ってるので適当に相槌を打つ。
へぇ~ それは、すごいね~
えっ? シルフ、今なんて言った?
だから、同じの出せる。
えーーーーーっ!! それ、もっと早く言ってよ~
あれっ? このフレーズって、どこかで聞いたことがあるような・・・名刺管理だっけ?
試しにシルフの両手に銅線を握らせて、LEDランプにつなぐ。
いい? シルフ、このLEDは少しの電気でピカピカ光るから、絶対にフルパワーとかダメだからね。
一番ちっさい力でお願いねっ!
ねぇ、わかった?
セレネ、しつこい。 何回も言わなくてわかる。
だってシルフ、LEDは一個しかないんだ。 壊れたら困るんだよ!
じゃあ、行く!
シルフが目を閉じて、息を静かに吐き出していくと、LED球がピカーっと光った。
おぉーーっ
やった! 光ったよ、シルフ。 すごい、すごい。 やったーー!
大人げなく、はしゃいでから、はっとした。
あ゛ーー しまった。 遅かったかー!
すでにメイアが対抗心丸出しで、銅線を握っているではないか。
メイア、まっ・・
バッ ・・・
一瞬だけ、あたりに眩い光が輝く。
あ゛ーーーーっ!




