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009◆ドラゴン救出


◆ドラゴン救出


次の日朝早く、近くの池で水浴びをする。 池の水は湧き水のようで、透き通っていてなかなかに冷たい。

シルフは上空から急降下して来て池に飛び込んでは、また空高く舞い上がるを繰り返す。

そして最後に、100mくらいの高さから錐揉みで降下して、全ての水滴を弾き飛ばして乾燥完了だ。

髪がソバージュみたいになって、可愛らしさが増す。


シルフの水浴びをみていて、自分もちょっとやってみたくなった。

二人してサッパリした所で、緑の実をいただく。 何回食べても美味しい。 味が桃に似ているのを思い出す。


さてと、シルフ。 今日はあの谷を抜けるぞ!

そういうと、シルフも手をグーに握って、小さなガッツポーズのような恰好をした。 どうやら、はりきっているらしい。


森をあとにし、谷を目指す。  森を振り返り、心の中でこの森を「シルフの森」と名付けた。

この森でシルフのいろいろな表情を知ることができたからだ。 二人はすごく仲良くなれたと思う。


谷が近づき、緊張感が増すが、シルフからの情報もあって昨日ほどは怖くない。

谷に踏み入ると両側の岩山のせいで、昼間なのに辺りは薄暗い。 


奥に進むに連れ、硫黄臭いガスが噴出している所が多くなる。 ガスをなるべく肺に吸い込まないようにするが、息は長く止めていられない。 たまに、シルフが笑わすので、ツネってやった。


谷底はくねくねと曲がっていて、雨がたくさん降ると川となって谷を削っているのが分かる。 


グゥォッ グゥォッ


大きく曲がった谷の先から、何かが鳴く声が聞こえてくる。 シルフが先に様子を見に飛んで行った。

しばらくしてから、シルフが興奮して戻ってくる。


どうやら、怪我をしているドラゴンがいるようだ。 

急いでその場所に行ってみると、ドラゴンが岩の下敷きになっているではないか。 出血もしていて、かなり弱っている。


崖が崩れて、岩でも直撃したのだろうか? ドラゴンの上に圧し掛かっている岩はかなり大きく、押してもピクリとも動かない。

可哀そうだが、自分の力では助けるてあげることはできそうにない。


諦めかけたとき、シルフが飛んできて耳元で、少し離れたところまで下がっていろと言う。

シルフに何かできるとは思えないが、言う通りにする。


すると、シルフはドラゴンに向けて、口から火炎を噴いた。 キノコを焼いた時の何百倍もの威力だ。

うわぁ・・・ 今日のランチはドラゴンの丸焼き?

案外美味しいのかも知れない。 ひさびさのお肉かぁ・・・


するとシルフは、次に口から勢いよく水を吹き出し、熱く焼けた岩にかけ始めた。

シューーー

ピシッ

鈍い音とともに大岩にヒビが入る。  シルフは何回かその工程を繰り返した。

やがて、岩がボロボロと崩れだす。


自分も岩に手をかけて崩していく。 脆くなった岩は、比較的短い時間で大部分を取り除くことができた。

思わずシルフとハイタッチするが、ドラゴンは力なく横たわったままだ。


池で水筒に汲んで来た水をドラゴンに少しずつ飲ませる。 しばらくすると瞑っていた目を少しだけ開いた。


あたしが残った岩を取り除いている間に、シルフが薬草を取ってきたので、そばにあったなるべく角のない岩を利用してすり潰す。

それをシルフに教えてもらったとおり、傷口に塗って行く。


傷はこれで治るかも知れないが、骨が折れていたら手の打ちようがない。

あんなに大きな岩の下敷きになったのだから、骨の一本や二本は折れていても不思議ではない。


ドラゴンに薬草を塗っている間、シルフはまたどこかに行ってしまった。

もう、これ以上何もしてあげられることがないので、昔自分が病気の時にしてもらったように頭を撫でてあげる。


ドラゴンの体はどこも堅くて撫でたくらいでは感触は伝わらないかもしれないが、それでも気持ちよさそうに再び目を閉じた。


それにしてもシルフの能力は想像していた以上に凄い。 火と水を自在に操れるなんて、もう無敵だろう。

もっとも、ドラゴンはシルフの炎を浴びても平気だったけど・・・ いったいどっちが強いのかと頭の中で勝手に戦わせてみる。


そんなことで暇をつぶしているとシルフが手に何かをいっぱい抱えて戻ってきた。

もっともシルフが持てる量はたいしたことはないのだが。 この妖精はほんとうに優しい。


シルフ、それは何?


これはドラゴン草と言って、ドラゴンがよく食べている草。 食べると元気になる。

ふぅ~ん。 おいしいの?


セレネは食べちゃダメ! これはドラゴンのだ。

えーっ、聞いただけじゃん。 草なんか食べないし。


あたしがブツブツ言っている間にシルフは、草をドラゴンに食べさせると小さな岩に座って、うとうとし始めた。


小さいのに大活躍だったから、眠くなってしまったのだろう。

なんだかシルフを見ていたら、自分も眠くなってしまった。



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