076◆南の港町(その1)
◆南の港町(その1)
波打ち際をみんなで楽しくワイワイ騒ぎながら歩いて行くと、前方に見える崖の淵に階段が見えて来た。
200段近くあった階段を汗だくになって上って行くと割と広い道にでた。
ここで右に行くべきか、左に行くべきかで大層迷ったので多数決を取ることにした。
リアムは右。 エイミーも自分の意見かは怪しいが右を選んだ。
あたしと嫁と娘は左を選んだ。
これは、ダンジョンの各層攻略経験上、どちら回りが多かったかが影響したような気がする。
むろんセレネ・ファミリーは左回り担当が多かったのだ。
う~ん、 やっぱり、あたしとリアムは右に行ってみたいな♪
多数決では3対2で左に行くことになったのだが、なんとエイミーが裏切る。
セレネ達は、左に行っていいからさ。 どのみち港に行くんだから、もし間違っても町で会えるからいいじゃん。
エイミーはどうしてもリアムと二人っきりになりたいようだ。
そう言われると反論してまで、ぜひみんなで一緒に行こうよとは言えない。
そういえば、人の恋路の邪魔する奴は馬に蹴られてなんとかというのもあったなあと思い出す。
うん。 じゃあそうしよっ。
ここは一つエイミーに貸しを作っておくことにした。
結果として直ぐに正解は、右ルートだったことが分かる。
なぜかと言えば、シルフもメイアも空を飛べるからだ。 あたしは全く気が付かなかったよ!
エイミー達と別れてからすぐにシルフが上空まで昇り、辺りの様子を確認してみたら、港は割と近くにあった。
が、左ルートは港とは逆の方向だ。
でも、せっかく左ルートを選んだのだから、あたし達は少し寄り道をして行くことにした。
鉱山側の宿屋から此処までは、たいした距離ではないのだけれど、あいだにある山々と暖流が流れる海があるため、トンネルのこちら側は随分暖かい。
陽がさしてくれば、海水浴ができそうだ。 そういえば、もうずいぶん海で泳いでいないことを思い出す。
たしか、家から電車で2駅のところに結構大きなプールがあったことも思い出した。 記憶は少しずつ繋がっていく。
道沿いに歩いて行くとお店が何軒か並んでいたので、見ていくことにした。
さすがに港町なので魚介類を扱っているお店が多い。 並べられている魚介類は、どれも見たことがない珍しいものばかりだ。
あたしは、メイアがいつ店頭に並べてある魚をパクリと食べてしまわないか、ヒヤヒヤしながら見ていた。
お嬢ちゃん、お腹が空いてるのかい?
お店の人に声をかけられているメイアを見れば、魚をじぃっと見詰め、涎を垂らしている。
お店の人が、メイアを監視しているあたしに気づき、
お母さん、ここで魚を買ってくれれば、店の裏でバーベキューができるんだけどどうです?
と話しかけてきた。
お、お母さん? って、あたし? カァーー なんだか恥ずかしくて体が熱くなる。
そ、そうですね。 この子、とってもお腹が空いてるみたいなんで、そうさせてもらおうかしら。 ホホホ・・
メ、メイアちゃん。 どのお魚が食べたい?
そう、お母さんぽくメイアに聞いたのが間違いだった。
メイアは、カゴの中に片っ端から魚や貝やらを入れて行く。
まぁ、いいか。 あたし達もダンジョンで見つけた宝物をそれなりに分けてもらっていたので、支払いには困らないだろう。
それに、あたしなんかより、メイアやシルフの方がたくさん活躍したのだから、お腹いっぱい食べさせてあげようと思った。
お金の代わりに、金の指輪でもいいかお店の人に聞いたら、店頭に並んでいるもの全部食べていいと言われた。
さっそくメイアが、山盛りになったカゴを持って、バーベキューコンロがある裏庭に駆けて行った。
炭起こしはシルフが火炎を吹いたので、あっという間にスタンバイ状態になる。
ちょうどお店の人が鉄挟みと野菜をサービスで持って来てくれたので、さっそく魚と野菜を網に乗せていく。
ジュー ジュー と音を立てて魚や野菜が焼けて行く。
お店の人が追加で魚や貝をカゴに山盛りに入れて持ってくるが、こんなに食べれるかな。
とりあえず、ガンガン焼いて行く!
あたりにモウモウと煙があがり、魚と貝が焼けるいい匂いが漂う。
メイアもう焼けてるから食べていいよ。
お預け状態だったメイアの食べるスピードがもう半端ない。 食べるというより飲んでいるみたいだ。
それに引き換えシルフは、体も小さく少食だ。 もともと肉や魚は好んで食べないので、無理には勧めない。
あたしも魚を食べるのは久々だったので、とってもおいしくいただいた。




