072◆ラスボス戦(その1)
◆ラスボス戦(その1)
3階層から最上階の7階層までは、幸運なことにケルベロス級以上の魔物は出現せず、計画通りに1日1層のペースで制圧していくことができた。
エイミーも用意してきた武器をほぼ使い尽くして満足げだが、5階層でロケットランチャーを使った時には壁に大穴が開いて、塔が崩壊するのではないかとヒヤヒヤした。
むろん、優しいララノアが元気のなくなったエイミーに活躍の場を作ってくれた事は言うまでもない。
あたし達は、7階の一番奥の部屋で地下2階の扉の鍵を手に入れ、いよいよ地下2階層の攻略を残すのみとなった。
地下2階の扉の向こうには、南の港町へと続く戦争時代に掘られたトンネルがあり、地下2階層の攻略完遂によって、あたし達の最終目的達成となる。
前は地下1階でドワーフに襲われ苦戦したが、今回はリアム、タケト、ララノアと攻守に秀でた3人が一緒なので心強い限りだ。
果たして魔物達は、この3人の前では、まるで大人と園児が戦うようなもので、1時間ほどで地下2階層の魔物は、ほぼ壊滅状態となった。
何体かは、1階層の方に逃げていったため、エイミーが慌てて後を追って行った。 手負いの魔物がもし町を襲うと悲惨なことになるからだ。
この時にあたしもエイミーに一緒についていけばよかったと、この後すぐに後悔することになる。
地下2階の奥に進むにつれ、辺りに異様な気配が漂い始める。
エルフ族のララノアは、逸早く何かを感じ取ったらしく、みんなが奥へ進もうとするのを右手を横に広げて制止した。
みんなで辺りを警戒していると地下のひんやりした空気が突然震えた。
そしてズルズルと巨大な生き物がゆっくりこちらに向かってくる音が聞こえてきた。
爬虫類嫌いのあたしは、大蛇やアナンタに襲われた恐怖が甦って全身に鳥肌が立つ。 もう怖くて泣きそうだった。
それが伝わったのかメイアが直ぐに隣に来て、そっと手を握ってくれた。
リアム、タケト、ララノアが横一列に間隔を開けて並び、攻撃体勢を取る。
モッフルダフとあたしは、邪魔にならないよう、少し後方に下がった。
ズルッ ズッシン ズルッ ズッシン
重い地響きを伴いながら、だんだん魔物の足音が近づいて来る。
ゴォオーーー
突然、闇の奥から巨大な炎の塊が噴き出て来る。
すかさずタケトが、大きな防壁を展開する。
が、防壁がガタガタと揺れ動き、徐々に押され防壁に細かいヒビが入りはじめた。
ダメだ! もう持たないぞ! タケトが叫ぶ。
それを聞いたララノアが、直ぐに別の防壁を展開する。
凄い・・この火炎は、メイアやシルフの何十倍もの威力がある。 いったいこの奥に、どんな魔物がいるというのだろう。
ゴォオーーー
ララノアの防壁で、何とか炎の塊を防ぐ事ができたと安堵した途端、直ぐに第2弾が飛んで来た。
リアムが炎を避けながら壁の凹凸を伝って、そろそろと前進していく。
まだ見たこともないような、恐ろしい魔物が襲ってくるかも知れないのに、リアムは勇敢だ。
傭兵として多くの戦場を乗り越えて来た経験と知識があるからこそ、未知の魔物にも立ち向かっていけるのだろう。
あたしには到底無理だ。 この場に立っているのでさえ、さっきから体の震えが止まらない。
そして、それは闇の中からゆっくりと姿を現した。
・・・
恐怖で声が出ない。
体長は20mは、あるだろうか。 それは山が動いているように見えるほど大きい。
あれは、ヒドラじゃねぇか。 俺たちじゃ、こんなのに勝てっこないぞ! タケトが絶望の声をあげる。
最もヒドラに接近していたリアムは、ヒドラまで30mの位置にいた。
それこそヒドラが首を伸ばせば、リアムの目の前まで届くような距離だ。
いかにクラウ・ソラスでも、ヒドラの鎧のような固い皮膚に傷を負わすことができるか定かではない。
リアムーー 早く逃げてーーー!
1階層から戻って来たエイミーが必死で叫ぶが、これだけ接近していると逃げ出すタイミングは難しい。
3つの頭の口から吐く炎は、一点に集中したり、連続的だったりで予想がつかない。
一歩でも間違えれば、炎に飲み込まれ跡形もなく灰となってしまうだろう。
リアムは壁の隙間に身を隠しているが、ヒドラには3つの頭があるため、死角が無い。
リアムが見つかるのは、もう時間の問題だった。




