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030◆脱皮


◆脱皮


結局シルフはその後2日間、意識が戻らなかった。

その間あたしは、自分を責め続けた。 もし、シルフがこのまま死んでしまったら・・・そう思うと気が狂いそうだった。


3日目の朝、ウトウトしていたあたしの顔を誰かにペシペシ叩かれた感じがして目が覚めた。


う、う~ん。

うっすら開けた目の前に、破れてボロボロになった妖精の羽が見える。


えっ、シルフ・・・ 気が付いたの・・・ あたしの顔のすぐ前に、シルフの顔があった。


セレネが助けてくれた?


ううん、メイアが助けて連れて来てくれたんだ。 よかった。 ほんとうによかった。

あたしは、シルフをそっと抱きしめた。 涙が溢れて来て、そのあとは言葉にならず、長い間わんわん泣いた。

それで、いっぱい、いっぱい謝った。

なのにシルフは、あたしの頭を優しく撫でてくれる。


セレネ・・ これ・・・

シルフは、あたしがハンカチーフで作ってあげた服が、消化液でボロボロになってしまったのが悲しいらしい。


大丈夫だよ。 鞄の中にまだハンカチーフが2枚あるからさ。 直ぐに新しいのを作ってあげるね。

でもシルフは首を横に振って、まだ使えそうな残った部分を上手くつなぎ合わせてこれで作って欲しいと言う。

こんなにボロボロなのに、どうしてもこれがいいと言う。 また涙が出てきた。



モッフルダフの薬が効いたのか、傷口は塞がったけど、全身の皮膚が火傷の後のようになってしまった。

綺麗な羽も穴が開き、回りもボロボロで、もう飛べそうにない。

シルフのそんな姿を見る度に、胸がきりきり傷んだ。


それでもシルフは、日に日に回復し元気になって行った。

そして意識が戻ってから7日が過ぎたころ、シルフは急に落ち着きが無くなった。


シルフ、どこか具合が悪いの?

そうじゃない。 その反対。

反対って?

シルフは少しだけ大きくなる。

大きく?

そう、だからこれから準備が必要。


あたしは、シルフが言っていることが理解できないでいる。

準備って、何をすればいいの?


セレネの鞄の中にある小さな袋を借りられるか?

袋って、ポーチの事? 

あたしは、鞄からポーチを2つ出してシルフに見せる。


そう、そっちの大きい方。

いいけど、こんなもの何に使うの?

あたしはポーチの中身を鞄に移して、シルフの前に置いた。


するとシルフは、ポーチの中に潜り込んで、中からファスナーを閉め始めた。

寝床にするの?


寝るけど違う! 2日間絶対に開けるな!

えーーー 何それ。


いいな。 絶対にだぞ!

なんだか良く分からなかったけど、言う通りにするしかない。 ここはあたしが居た世界とは違うのだから・・・


ポーチの中のシルフは、ときどきゴソゴソ動いていたけど、2日目は全く静かで死んでしまったのではないかと気が気ではなかった。

ファスナーを開けたくてしかたがない衝動にかられたが、なんとか約束を守った。


3日目の昼過ぎになったころ、再びポーチがゴソゴソと動き出した。

しばらく見ていると、そのうち中で暴れているかのようにポーチごと上下左右に大きく揺れ動く。

そして、時々疲れたように静かになる。


そして、さらに1時間後、ポーチのファスナーが少し開いた。


もういいのかな? そう声をかけてから、ファスナーを外側からゆっくり開けてあげる。

すると、中からシルフがキラキラ光ながら現れた。


すごい、綺麗・・・ 羽のまわりが特に虹色に光る。


驚愕したことに、皮膚は元通りスベスベ、もちもちで、羽もきれいに治っている。

髪はショートになってしまったけど、こちらも元通りだ。


良かった・・・ また涙が溢れてくる。


シルフは、ニコニコしながら、ポーチの中から何かを引っ張りだして来た。


セレネ、これは元のあたし。

シルフは少し大人になった。


それを手にとってみれば、なんとシルフの抜け殻ではないか。

脱皮? もしかして脱皮したの?


シルフは恥ずかしいのか、顔を少し赤くしながらコクコク頷いた。

よ~く見ると、確かに背丈も少し伸びて、胸もちょっぴり大きくなったように感じるけど、気の所為かも・・・


後々わかったことだけど、この脱皮によって成長したのは、何もからだだけではなかった。 


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