028◆人食い植物
◆人食い植物
あの、鮫さんの背中には、危険な場所とかあるんでしょうか?
シルフに一人で様子を見に行かせなければよかった。
モッフルダフの言葉に、あたしは急に心配になる。
この鮫は、もう2000年は生きているんです。
長い間にご覧の通り、背中には植物が密生し、何種類かの動物も住み着いています。
ただし、陸とは違い海の上を移動しているので、自然の中で手に入る食料が極端に少ないんです。
ゆえに捕食能力の進化が大陸のものとは全然違う。
植物も土がほとんどない状況で、どうやって生きていると思いますか?
モッフルダフは、少し怖い顔をしながら、あたしに問うてきた。
聞けば聞くほど、居ても立っても居られなくなる。
あのっ! 具体的にはどんなところが危険なんですか?
そうですね。 例えば、動物を捕まえて食べてしまう植物があります。 虫では無く、動物ですよ。
下手をすれば、あなたくらいの大きさなら餌食になる可能性だってあります。
しかも、獲物をじっと待っているタイプではないのです。
強力な粘液のついた蔓を獲物に向けて飛ばすものや毒液を吹きかけるものもいます。
反対に動物は数が少ないので、ほとんどが草食です。 ただし、ひと種類だけ獰猛なのがいますけど。
こいつは、主に海鳥なんかを食べています。
そんな・・・ あたしは激しく動揺する。
ここで帰りを待っている間にも、シルフが植物の蔓に捕まって、消化粘液で溶かされてしまうかもしれない。
メイア、お願い! シルフを探して来て!
あたしの言葉が通じたのか、メイアはグォーーと吠え、次の瞬間にはもう飛び立っていた。
あぁ・・ シルフ、どうか無事でいて!
その頃、シルフは大変な状況に落ちいっていた。
セレネと別れたあと、わりと直ぐに小さな池を見つけた。
池には、小動物も何匹か水を飲みに来ている。
食料も水もわりと早く手に入るかも知れない。 そう思って池に近づいて行くと、赤い綺麗な花を見つけた。
美味しそうな蜜の香りも漂ってくる。 シルフは、その匂いに誘われて、ふらふらと花の方に引き寄せられていった。
花は結構大きく、花弁はシルフが降り立つことができるほどだった。 その花はテッポウユリの花を大きくしたような形をしている。
蜜の匂いは、花の奥の方から強く香る。 匂いには催眠効果もあるようだった。
シルフは朦朧としながらも、花の奥へ吸い寄せられるように潜っていった。
そしてシルフが花の奥の感覚毛に触れた途端、ラッパの形状をしていた花の先が瞬時にすぼみ出口を塞いだ。
それと同時に、内部に強力な消化液が、勢いよくあふれ出して来た。




