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022◆シルフ突入


◆シルフ突入


午後3時のお茶は、北の高地で採れる貴重な茶葉で、飲むと精力増強に効果があるらしい。 

一覧表を確認した時に一瞬、違うお茶を淹れようと思ったけど、サステマさんから最初に聞いた話しを思い出し考え直す。


10時の時と同じようにお湯を沸かしてポットに入れ、2分おいてから伯爵様のお部屋にお持ちする。


コン コン

返事がないのでドアを少しだけ開け、あとは勢いよく蹴ってドカッという音をさせ、派手に部屋へ押し入る。

どうだ! と思って伯爵様をちらっと見たが、山のような書類の陰に隠れていて、せっかくのアクションを無駄にしたことにショックを受ける。


コホン。 3時のお茶をお持ちいたしました。 お茶を淹れながら、伯爵様に声をおかけする。


もうそんな時間か。

大きな伸びをされたあと、書類の山の中から伯爵様が姿を現す。


宝石箱のように光輝くカップに入れたお茶をテーブルの上に静かに置く。 今回は手も震えていない。


伯爵様がテーブルまで来て、椅子に腰かけながら、あたしをちらっと見る。

おおっ、その髪型も服装もわたしの好みじゃないか。 どうしてわかったのかね。


えっ? ええーーーっ  心の中で絶叫する!  どうして? なんでこうなるの?


ほら、君もこっちにきて一緒にお茶を楽しもう。

いやいやいや。 それって精力がつくってお茶でしょう。 そんなの二人で飲んでどうするのよ。


さぁ、早くしないとせっかくのお茶が冷めてしまう。 

は、はい・・


仕方なくあたしは自分の分をカップに入れ、伯爵様の目の前の椅子に腰掛けた。 やはり使用人の立場は辛い。 


フネットとサステマは、よくしてくれているかな?  伯爵様が普通の会話をしてきたのでちょっと安心する。

はい、とてもよくして頂いております。

そうか。 それはよかった。


もしかしたら、伯爵様はいい人なの?  そうだよね。 使用人の人達もみんないい人だったし。 


今日は、いつになく処理する書類の量が多いので肩が凝ってしまった。 お茶を飲み終えたら、少し肩を揉んでくれないか。

伯爵様が自分で肩をトントンと叩きながら言った。


はい。 かしこまりました。

飲み終えたカップをワゴンに片づけて、デスクに戻って座った伯爵様の後ろに立ち、両肩に手を置いた。


伯爵様の肩はカチカチで、ほんとうにすごく肩が凝っているのが分かる。

さぁ、それじゃ肩揉み開始と気合を入れ、まさに揉み始めようとしたら、伯爵様の手があたしの手の上に重なった。

えっ、 なに?


伯爵様は、そのままゆっくり立ち上がり、近づいてくる。

あわわわっ・・

あたしは気が動転し、そのまま後ずさりするが、直ぐに背中が後ろの壁にくっついて動けなくなってしまった。


伯爵様があたしの顔の横の壁に手をぴたりとついているため、身動きができない。  これって、もしかして壁ドンされてる?

ドキ ドキ ドキ  心拍数が早くなる。


伯爵様の顔が近づいてくる。  チュウしちゃうの? あたし。 明日から第三夫人?  もう完全にパニックだ。


もうダメ。 観念して目を瞑ったとたん。


ガシャーーン

突然、大きな音とともにデスクの後ろの大きな窓が、木端微塵に吹き飛んだ。

と、同時に大きな黒い塊が室内になだれ込んでくる。


あたしはというと、とっさに伯爵様に覆いかぶさっていた。 あるじを守るのは使用人の務めだ。

部屋の中は、割れたガラスや壊れた窓枠などが散乱し、大変な状態になっている。


目を凝らしてみれば、飛び込んできたのはドラゴンだった。 いや、シルフも一緒だ。

シルフはあたしを見つけると、凄い勢いで胸に飛び込んで来た。


ピィーピィー泣きながら、あたしの胸をドカドカ叩く。 なんだ、あの時と同じだな。

あたしも、再開出来たことが嬉しくて、泣きながらシルフを優しく抱きしめた。

シルフがあんまり叩いたので、せっかく巻いたサラシもほどけてしまった。


ムニュッ ムニュ ムニュ


えっ、やだっ  胸を揉まれてる?  伯爵様が後ろから手を回して、あたしの胸を触っている。

せっかく体を張って守ってあげたのに、こいつはーーー   一発殴ってやろうと思ったが。


グゥォーーーッ

ドラゴンが、あたしの代わりに唸り声をあげる。

 

さすがの伯爵様も、その声に驚いて手を止めた。

そして部屋に飛び込んできたのがドラゴンだと分かると、壁にかけてあった剣を素早く取って身構えた。


伯爵様、だめです!  この子達は、あたしの大切な友達なんです。  伯爵様には危害を加えませんから、どうか落ち着いてください。

気が付けば、あたしはシルフを胸に乗せたまま、ドラゴンの前で両手を広げていた。


なんと! そやつらはセレネの仲間と申すのか?

はい。 この子達は、いつもわたしを助けてくれるとても良い子なんです。 きっと、あたしのことを必死で探していたんだと思います。

どうか、お部屋を壊してしまったことを許してあげてください。  あたしにできる事は、なんでもいたします。


わかった、セレネ。 いま、なんでもすると申したな。

あちゃー しまった。 条件付きにするべきだった。  勢いで言ってしまったことを後悔するが、もうあとの祭りだ。 


気が付けば、この騒ぎを聞きつけ、警護の者や使用人たちが集まって来ていた。


はい。 許していただければ、なんでもいたします。 なにしろ、この事態は早く収拾しないとまずい。

そうか。 ならば、まずこの大きなドラゴンを何とかしてくれ。

広い部屋なのだが、何しろドラゴンが一頭飛び込んできたため、残された空間は限られている。


わかりました。

さぁ、いい子だから、この部屋からいったん外に出てくれるかな。 そう言いながらドラゴンの頭を撫でてあげる。

シルフ、ドラゴンをお願い。


シルフは、あたしの胸からドラゴンの頭に飛び移るとドラゴンに何やら囁いた。

するとドラゴンは、飛び込んできた窓(今はただの大穴だけど)から、外へ飛びだし館の上を旋回し始めた。


ドラゴンが部屋から出ていったのと入れ替わりに、警護兵や使用人達がなだれ込んできた。

そしてあたしは、その場で警護兵達に取り押さえられてしまった。


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