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002◆妖精

◆妖精


挿絵(By みてみん)



青い星がこの星の衛星(月)ならば、いまは夜なのかも知れない。

夜が明ければ、次第に暖かくなるはずだ。

体力を温存するには、もう少し暖かい方がよい。


もう2時間ほど歩いただろうか、草原には目印になる物がないため、少しも進んだ気がしない。


なんでも人はガイドライン無しに長時間真っ直ぐ歩くことができないらしい。

必ず利き足側に少しずつ曲がってしまい、長い距離を歩けば出発したところに戻ってしまうこともあるそうだ。

そんなことを思い出すと、疲労と空腹も重なり、へなへなとその場にしゃがみ込んでしまった。


喉も乾いた。

このまま水も食べ物にもありつけなければ、自分の命はあと何日もつのだろうか。


その場で仰向けに寝転んで、ぼぉっとしていると目の前に、ひらひらと光が飛んで来る。

さっきの妖精だ。

あいつこんなところまで飛んでついて来たのか。


目の前に降りて来た妖精は、予想通りハンカチーフを身に纏っていた。


なんだおまえ、ついてきちゃったの?

どうせこちらの言っている事は伝わらないだろうと思うが、犬や猫に話しかけるアレと同じだ。


妖精は、顔の周りをひらひら飛びながら、こっちを見ている。


あたしは、お腹が減ってるんだ。 もう少しお腹が減ったら、おまえを捕まえて食べてしまうかもよ。

クスクス笑いながら、捕まえる仕草をすると、ひらひらと逃げて行く。


妖精が逃げて行く先を見ると、草原の間から幾つかの岩が出ているのが見えた。

景色に変化があったのは、少し嬉しい。


その岩の方に向かって歩いて行くと、一番大きな岩の陰に小さな泉があった。

泉の周りには黄色やピンク色の花が少しだけど咲いている。

妖精は、その泉の上をひらひら飛んでから反対側の淵に降り、手のひらで水をすくって飲み始める。


それを見て自分も無性に喉の渇きを覚え、すぐさま泉の中ほどまで入り込み、水をガブガブと飲んだ。

ふぅ~

冷たくて少し甘味を感じるそれを飲むと頭がスッキリした。

疲れも少し取れたような気がする。


もしかしたら、妖精はここをあたしに教えてくれたのかもしれない。


ねぇ、こっちにおいでよ。 伝わらないと思うが呼んでみる。


すると嬉しそうにクルクルと輪を描きながら、こちらに飛んでくるではないか。

妖精が傍まで来たのでてのひらを出してみると、ちゃんとその上に降りてきた。


どお? 元気になった?

突然、妖精が小さな声でそう言った。


えっ、きみ喋れるの?

突然のこともあり、驚いた自分の声がよほど大きかったのか、妖精は両手で耳を塞ぐ。


ごめんごめん。 ちょっと驚いただけ。 あたしは、セレネ。 もしかして言葉、分かるの?

今度は、普通の声音で優しく語り掛ける。


この水には不思議な力がある。

あなたがここの泉の水を飲んだから、わたしたちの言葉が分かるようになった。

妖精はそう答えるとにっこりと笑った。


へぇー そうだったんだ。 魔法の泉かぁ・・

そうだ、きみ・・名前はあるの?


シルフ、 わたしはシルフ。

妖精の囀るような言葉は、頭の中で自分が理解できる言葉に変換される。


シルフ・・か・・・  ところで、きみの他にも仲間は居るの?

その問いに妖精は、少し悲しそうな顔をして、首を横に振った。

何かわけがありそうだが、自分としては一刻も早く人の居る町に行かなければならない。

もし妖精がついてくるなら、追々聞けばよいだろう。


泉の水を持っていた鞄に入っていた水筒に汲んだ。

よかった。 これでしばらくは飲み水の心配をしなくて済むだろう。


シルフ、あたしに付いてくる?

出発する前に孤独そうな妖精に聞いてみる。


するとシルフはコクコクと頷き、一緒に来るという意思を示した。


よし、それじゃあ、出発だ! シルフ、行くぞ!



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