甘さ
「おぉ、いたいた。まさにって感じだな。」
ヒカルが向かった先はこの田舎町に唯一あるコンビニだった。
そこにはまさにガラの悪いヤンキーらしき連中がたむろしていた。
「テメェ金本とか言う転校生じゃねぇか。何だよ、嫌われ過ぎてオレらの奴隷にでもさせてくださいってお願いしにでも来たのかよ?」
人を完全になめてかかり、調子ぶっている5人組。その中で一番ガラの悪そうな男がニヤニヤしながら言ってきた。
「まさかそんな訳ないじゃないですか。あなた達みたいなクズと同類になんかなりたくないですからね。」
「あぁん、何だって!テメェ喧嘩売りに来たのかよ!?」
「残念ながらあなた達と喧嘩してるほど暇じゃないんですよ。オレがここへ来た理由は聞きたかったことがあったからだよ。アジトに乗り込んでも良かったんだけど、あんまり暴力は振るいたくないんでね。」
「ほう。で、聞きたいことって何だよ?一応聞いてやろうじゃねぇか」
相手はあからさまに今でも殴り掛かってきそうな勢いだったが、一応話を聞くつもりはあるらしい。
「まず一つは何でここ最近オレを毎日付け回してるかってことだ。もう存在はバレてるんだし、出てきても良いんじゃないのか?それともまだオレをストーカーしたいのか?」
「何だよ、気付いてやがったのか。」
ヒカルの後ろから短髪の男が姿を現した。
「そんなレベルの追跡ならバカでもわかるぜ?あえて気付かない振りをしてたことすら気付いてなかったとは頭の中はよっぽどのお花畑みたいだな。」
「何だとテメェ!!」
「まぁちょっと待て!で他に聞きたいことって何だよ?」
ストーカー男が殴り掛かろうとした時、先程の一番ガラの悪そうな男がそれを止めた。
「もう一つ聞きたいことはお前らがやってることだ。お前らまさかとは思うが変なことに関わってないだろうな?」
相手のガラの悪い男の表情が一瞬変わったのを見逃すはずがなかった。
「正直最初はまさかと思っていたが本当に関わっていたとはな。ただのヤンチャな遊びぐらいだったらまだお灸を据える程度にするつもりだったが、今回のことに関わっているとなれば話は別だ。お前も多少は内情を知っているんだろうしな。」
「正直ビビったぜ。その口ぶりじゃオレらのこと色々と調べたみたいだな。それにしてもちょっと知り過ぎじゃねぇか?どこから聞いたんだ?」
ストーカーの男も含めて全員が真顔になっていた。
「まぁ色々と知り合いが多いんでな。それ以上は言えないし、お前らに言う義理もねぇな。」
「まぁどっちにしてもオレらから情報を聞きたいんなら簡単に答えを言うはずがねぇよな?この人数に対して一人で来たお前がバカだったな。」
そう言ってストーカー男を含めて一斉に飛び掛かってきた。
「残念だったね。」
5分後にはストーカー男を入れて6人いた相手の男たちは地面に大の字で倒れていた。
「お前、一体何者なんだよ...」
さっきのリーダー格の男が必死で声を出していた。
「そんなことはどうでもいいさ。さぁ、教えてもらうぞ?オレを付けていた理由とお前らがやっている今回のことについて。それともお前らのトップに直接教えてもらった方が良いか?」
「まさかオレらの頭のことも知ってやがるのか。こりゃあとんでもない奴がきたもんだな。でも、もう遅いぜ。」
「?どういうことだ?」
ヒカルに何か嫌な感じがした。
「こうなるとは思っていなかったが、保険をかけておいたのさ。お前が唯一仲良くしてるお友達にな。」
「まさか!!!」
ヒカルは無我夢中で走っていた。確かにその考えもあった。だからこそ早めに動いたつもりだったのだが、少し遅かったと後悔しながら。
ヒカルは携帯ですぐにある場所へ連絡した。
「おい、すぐにあいつらの場所を教えろ!」
「はいよ!」