友達なんていらないと思ってた...
オレは金本 光。
今日この赤毛高校に転校してきた転校生だ。
おそらく皆からは珍しい転校生、そして優等生らしい見た目から生真面目な人なんだろうと思われているんだろう。
「ねぇねぇ、金本君ってどこから来たのー?」
「ラ〇ン教えてー」
「彼女とかいるのー?」
やはり田舎ということもあり、休み時間になれば数少ないクラスメイト達からは質問が絶え間なく続いている。
まぁ転校生というものはそういうものだろう。
それぞれの質問にそれなりに答えて、クラスメイト達との交流を図っていく。
しかし、友達というものを作る気はない。
友達を作ればそれは悲しみを生むだけだということは理解しているから。
「おーい、ヒカルー」
放課後にそう言って後ろから声を掛けてきたのは同じクラスにいる土岡だった。
土岡は長身で髪は赤く染め、長めの髪を後ろで束ねている、いかにもチャラチャラしてそうな感じの奴だった。
「ヒカル?」
「お前のことだよー!あれ、もしかして名前違った?」
「いや、合ってるけど」
「良かったぜー。名前間違えてたかと思ってちょっと焦ったぜー」
はっきり言ってかなり図々しいやつだなと思った。
普通いきなり下の名前で呼んで来ないだろう。
「まだ仲良くなった奴なんてほとんどいねぇだろ!オレが第一号になってやるよ!」
「いや、別にオレは友達なんて...」
「良いから良いから!とりあえず何か食いに行こうぜー」
本当に図々しい奴だな。オレはもう友達など作らないと決めているんだ。
だが、コイツはそんなオレの思いとは裏腹にガツガツと距離を縮めてきた。
その日も次の日も一週間経っても一か月経ってもコイツはずっとオレと一緒に行動する様になっていた。
1か月経ってもオレの後ろを付いてくるこんな状況に呆れたオレは一つの質問をしてみた。
「なぁ、何でオレに付いてくるんだ? もう今やオレの冷たさに皆は離れていったのに何でお前だけはオレについてくるんだ?」
転校してすぐの頃は物珍し気に人だかりが出来ていたが、オレが仲良くしようとしないことに気付いたのか、十日後にはオレの側にはコイツしかいなくなっていたのだ。
「何でってかぁ?理由はねぇな!オレの直感だよ。お前はオレの一番のダチになるって思ったんだ!」
コイツ自体ははっきり言って人気者だ。だいたい誰かしらがコイツのところへやって来る。
正直言ってオレが邪魔なんだなとはっきりわかる奴すらいる。
そんなコイツがオレと一緒にいる理由が直観。しかも、オレが一番のダチになるだと。
もう開いた口が塞がらないとはこのことなのだと初めて実感した。
「お前下の名前は?」
「え?」
「お前はオレのことをヒカルって下の名前で呼ぶんだ。オレだってお前の下の名前を知っておいても悪くないだろ」
「お、おう。オレは土岡 類って言うんだ」
「ルイだな。覚えておくよ」
おそらくコイツはオレが何を言っても離れないだろう。
でも、いつかオレのことを嫌になる日が来る。オレと一緒にいたくなんてならない日が。
その日まではコイツに付き合ってやろう。