SweetStrawberryRondo 3
今度、C90で頒布する新刊の絡みで、うpしないと辻褄が合わなくなる事象が出てきた?ので、折角の機会だから第三弾を投稿いたします
「おはようございます」
『おはようございます!!』
高速道路のとあるサービスエリア。今日の仕事は、高校生を遊園地へご案内。いわゆる遠足である。遠足といっても、園児や小学生の時のような歩いて何処かへ行くのではなく、クラス単位でLHRにて行き先を決め1日遊び倒す学校行事……ということらしい。この行事は1学期の前半に行われることが多く、クラスの親睦を深める意味合いもあると、以前担任の先生に聞いたことがある。
クラス単位で行き先を決めるので、本来なら行き先がバラバラになるはずなのだが、今年は3年生6クラス中4クラスが同じ遊園地を希望したらしく、バスが4台まとまっての行動となり(これを悌団走行と言います)、今は先述のSAで休憩がてら乗務員が集まってミーティングの真っ最中なのです。
あぁ、言い忘れてた。私は、新澤珠美。さくや観光のガイド。一応ガイド内では一番上。会社内では超売れっ子ガイドとされているらしいが、私的にはそんなの意識したことない。ふつ~に仕事をしているだけのつもりなんだけどな……誰よ、お局様っていうヤツは!そういうのはねぇ、今ガイド教習で指導役をしているOGのことを言うのよっ!今現場にいないから言えるんだけど♪
「……以上が、これからの道順だ。各ドライバーは頭に入れておくように」
『了解!』
「添乗からは何かあるか?」
先頭を引っ張る予定のベテランドライバーから話を振られ、添乗員が続ける。
「今回の添乗を務めさせていただきます、満水です。4台まとめて対応しますが、移動中など対応しきれない部分はガイドさんでフォローをお願いします」
『はいっ!』
「現地に着きましたら、施設の係員がパスポートを持って待機している予定なので、受け取って枚数を確認後先生に渡してください。その前に、車内で口酸っぱく帰りの出発時間を案内してください」
「……だってよ?佳奈子?」
そう言って、私は後輩ガイドの宮下に皮肉を入れながら注意する。
「まぁだ修旅の失敗を根に持ってるんですか?タマちゃ~ん」
お、おのれ、先輩にちゃん付けで返すとは!
「ウガーッ、タマちゃん言うな!」
「はいです、珠美先輩♪」
「漫才はその辺にしておけ、2人とも」
「秀美に止められたら仕方ないわね」
横から同期である蓼原秀美に漫才を止められ、私達はおとなしくなった。
「私からは以上です。他に何かある方は……」
はいっと、私は手を上げた。
「では新澤さん、お願いします」
そう言って、満水が引くと同時に私は一歩前に出た。
「今回のガイド長である新澤です。今回は珍しく出来るガイドばかりが揃いましたが、無理に案内をする必要はありません。旅行ではないので……とにかく車内事故に気を付けること、重要事項は確実に案内すること、この2点は確実にお願いします。特に佳奈子」
「まだ言いますかっ!」
乗務員全員がドッと笑う。
「打ち合わせは以上。各自安全に心がけるように」
『はいっ!』
元気のいい挨拶で周りから注目されたが、気にせず散開する。
「タマ、お手洗い行くか?」
「そだね~、行っておくか」
秀美のお誘いに乗る。会社出てから行ってないからちょっと限界かも。我慢すると膀胱炎になっちゃうからね(過去になったガイドが実際にいる)。行けるときに行かないと。
◇
「さぁ、見えてきましたよ、目的地」
インターチェンジの出口車線にさしかかり、バス進行方向に目的地である遊園地が見えてきた。
ナラシマスパーランド。
中部地方最大のリゾート施設である。元々ここは、温泉と演歌歌手の地方巡業の場所として知られていたけど、十年以上前にアウトレットモールが併設されて以来、家族連れにも人気が出始め、ギネス級のジェットコースターが出来てからは、若者にも好評である。現在も、アウトレットエリアが増築されたり、新アトラクションが出来たり、はたまた幼児向けの施設まで登場したりと、勢いは留まるところを知らない。
そうこうしている内に、バスはスパーランドの駐車場に進入。係員に駐車枠の指示を受け、ドライバーにドアを開けてもらってバック誘導に行く。幾らバスの性能が上がって、バックモニターが標準装備になっても、運転席から10メーター以上後ろは死角以外の何物でもない。誘導の有無で、ドライバーの負担は変わってくる。
「後2メーター……1メーター……ストップ!」
バシュン!というホイールパークの音を聞いてから車内に戻る……前に、案内板を使って他のバスに帰りの出発時刻を伝達していく。アナログなやり方だけど、確実に伝わるのですよ。会社によっては、ドライバーに頼んで無線機でやりとりをお願いする方法もあるけど、確実性を期して私はこの方法を好む。その間に、添乗さんもバスを降りて入園チケットを受け取り、各号車のガイドに手渡していく。
「さぁ、ナラスパに到着です。貴重品は必ず持って行って下さいね。後、パスポート無くさないでね?無くしたら……知らない♪」
そんな私の言葉に、車内が笑いに包まれている。笑わせつつも、確実に注意事項を伝える。これが私のやり方。学生辺りにくどくど注意事項を言っても、馬耳東風なだけ。笑わせることで、私の話に少しでも興味を持ってもらえたら……との想いでいつもこうしている。
「では最後に、そこの君。出発時間は何時?」
「3時です、タマちゃん」
「ハイ正解。出発時間は彼が言ったとおり、15時、午後の3時です。遅れないようにね?遅れたら、容赦なく置いていくゾ♪あと、タマちゃん言うな」
チケットが行き渡ったのを確認してから、バスを降りてもらい解散。150名強の学生&教師がナラスパに入園していく風景は壮観だね、いつ見ても。まぁ、教師陣の半分くらいは、温泉でマッタリの予定だとか(笑)。
「入れ込み(入園)完了~」
「お疲れ様でーす」
「お疲れさん」
入園を確認して、個々に労う。
「あれ、佳奈子は?」
1人のガイドが居ないことに気づく。
「添乗と精算に行きまし……あ、帰ってきた」
後輩ガイドが教えてくれた矢先、件のガイドが帰ってきた。
「皆さんお疲れ様です」
「食事券をゲットしてきました~」
そう言って、佳奈子は食事券を乗務員全員に渡していく。こういう風に、いろんな施設に行くと、乗務員向けのサービスを受けられる。内容は施設によってまちまちだが、此処ではこの券を併用することで、格安な値段で食事をすることが出来るのだ。お客様をお連れした際の、ささやかなお礼という側面もある。
「食事、何時頃に行きます?」
「11時頃でいいんじゃないか?」
今日のペアであるドライバー長に、時間を相談してみんなに伝えていく。こういった、人が集まる施設では普通にお昼を取ろうとすると、混雑で時間がかかってしまうので、敢えて時間を早めにズラして食事を取るようにしているの。混雑を嫌うドライバーは多いしね。
「微妙に時間が余ったね、タマ」
秀美が呟いた。
「そうだね~。んじゃ、軽く車内清掃でもしますか」
「え~」
「文句言うな。それも仕事」
「わかりましたよ、タマ先輩。そんじゃミッチー、掃除してくるね」
「行ってらっしゃい。わたしはちょっと、営業に頼まれた仕事してくるから」
「いってら~」
佳奈子、まぁた私をタマと言ったわね?タマと呼んでいいのは秀美だけなのよ!……フフフ、お昼覚えてらっしゃい。
時間も頃合いになり、お昼を食べる会場へ乗務員全員で移動。乗務員食の定番であるカレーをトレイに載せ、ドライバーとガイドに別れてテーブルに付く。その頃には、添乗員である満水も仕事を終えたのか、私達に合流してきた。
「お疲れ、ミッチー」
早速、佳奈子が声をかける。
「あ、うん。ありがとう、かな……」
そう彼女は返すも、照れてしまったのか、俯いてしまった。……この2人、デキてるな?そう思いつつも、スルーしておいた。
「この後、みんなどうするの?」
出発までは、まだ時間が大分ある。どう時間を潰すのか、みんなに聞いてみた。
「勿論、アウトレットへ突撃するに決まってるじゃないですか!」
一番後輩のガイドが息巻いて答えた。
「何か目的でもあるの?」
「いやそういう訳じゃないですけど……プライベートで此処には簡単に来られないじゃないですか。だから、隅々まで見て回ろうかと」
確かに、私らの地元からじゃなかなか来られない距離にあるからねぇ、その気持ちもわかる。
「だからといって、ガイドが遅刻なんてしたら、本末転倒だからね?」
「き、肝に銘じます」
そう言って後輩は、敬礼を返してきた。何処ぞの分隊長か、私は。
「佳奈子は……聞くまでもないか」
「聞いてくださいよ~!」
答えが分かりきっていた(つもりだった)佳奈子に対して、スルーしようとしたら絡まれた。
「私もアウトレット行くんですぅ!」
「え、マジで?」
意外な返しに、私は驚く。
「てっきり、満水と……」
いちゃいちゃするんだよね?と言い返そうとしたら、
「ミッチーとアウトレットデートです!」
「ば、莫迦……」
と声高らかに宣言された。折角、こっちが気を遣って肝心な部分を濁らせようとしたのに……人の苦労も水の泡だよ。あと、お相手である満水は、赤くなって縮こまってしまった。クールビューティーと一部では噂されている、あの満水が撃沈している……。
「ふ~ん、デートなんだね……」
「というより、とある目的がありましてね」
その辺は守秘義務云々、と言われてしまったらこれ以上はツッコめない。
「結局、みんなアウトレット行くんだね」
「まぁ、滅多に来られない場所だしな」
秀美にそう言われ、まぁねと返しておく。
「タマちゃ……先輩もアウトレットへ?」
「まぁ、私も用事があるクチでね」
そう言って、チラッと秀美を見る。本人は「?」となっていた。まぁ、彼女にはまだ言ってないんだけどね、この後の予定。
「さて、時間は有限。食べ終わったなら解散しようか。出発1時間前にバス集合ね」
『了解』
「んじゃ佳奈子、後よろしく~」
「へ?え?」
いきなり宜しくされた佳奈子は、目が点になっている。
「私をタマ呼ばわりした罰じゃ、ガイド分の食事代の差額を払うことを命ずる」
「な、何ですとぅ~~~~!?」
私は、そう佳奈子に御沙汰を言い渡すと、他のガイドを連れて食事会場を後にした。しれっと満水もこっちに付いてきたのには笑ったけど。
◇
「よかったのか?佳奈子の件」
秀美と2人になったところで、彼女は佳奈子のことが気になったのか、私に聞いてきた。
「ここいらで、先輩の威厳というモノを見せてやらないとね」
そう言って、私は精一杯の背伸びと、無い胸を張って、ふふんとふんぞり反った。
「かなり涙目になってたぞ?」
「まぁ、後で何かスイーツ奢ってあげるけどね」
「そういうフォローはちゃんとするのな」
そう言って、秀美は苦笑していた。ただ威張り散らすのが先輩じゃない。怒ったりした後のフォローはちゃんとする。凹んだままじゃ可哀想だもの。そうすることで、適度な距離感を保つのが私のやり方。折角の出来る後輩だ、これからも頑張ってもらわないとだから。
「ま、佳奈子の場合、慰めてくれる人がいるみたいだし」
「何の話だ?」
「なんでもな~い♪」
これ以上は野暮な話だ。誤魔化しておこう。
「ところで……アウトレットはいいとして、何処へ向かってるんだ?」
あ、そうか。そろそろ説明をしてやらないとな。
「秀美。あんた今日着ている下着、ちぐはぐでしょ?」
「な、何で知っているんだよ……」
驚いてるな?それもそのはず。
「私は、あんたの持ってる下着の全てを把握してるからね」
「ま、マジで?」
「って言うか、そもそも数を持っていないでしょう?下着に何にも拘っていないあんたのことだから」
以前、秀美の家に遊びに行ったときにチェック済みなのよ、箪笥の中身。
「別に良いじゃないか、何を着ても」
「それがちゃんと身体にフィットしていればね?その歳にもなって、未だにスポブラは無いでしょう!」
「スポブラじゃない、ハーフトップだよ!」
「どっちも同じじゃ。そのせいで、あんたの武器である巨乳が潰れてちゃ意味がないんだよ」
そうなのだ。彼女、蓼沢秀美の箪笥の中を見たとき、私は愕然とした。スポブラ(ハーフトップと彼女は弁明するが)以外のブラがなかったのだ。確かに着用はラクだが、サイズが如何せん合っていない。折角の巨乳をワザと潰して着ている節が見受けられる。
「ワザと潰してる?」
「う、うん」
「何故に?」
「周りからの好奇な視線が耐えられなくて……」
この同期である秀美。普段は男勝りな体育会系キャラなのに、私と2人の時か、身体の話題になると一変して、乙女キャラに変貌する。巨乳な体つきのせいか、学生時代は電車で痴漢に遭うこともしょっちゅうだったそうな。それ以来、自分の身体にコンプレックスを抱いている。注目されることも苦手だったらしい(主に胸のせいで)が、克服するためにガイドになった、という経緯を本人から聞いていた。幾らかは克服しているようだが、その要因がまさか胸を潰していたことにあるとは……。
「身体が可哀想だよ」
「苦手を克服するためなら何でもやる」
気持ちはわからんでもないが……やっぱ、その方向は間違ってると思うよ?
「ちゅこって、此処へ来てみたわけですが」
辿り着いたのは、ランジェリーショップ。最近のアウトレットには、必ず1件はオープンしていると言っていいほど。ご多分に漏れず、このナラスパにも1店舗存在している。
「話の流れで、薄々気づいていたけど……」
「今日は、秀美のためにこの私が、これぞという下着をセレクトしてあげる」
今日の仕事最大の目的がこれ。行き先が決まった時点で、色々考えていたんだからね。
「……逃げちゃ、ダメ?」
「逃さん」
身長150センチの私と、165センチの秀美とは体格差があるが、彼女の腕をがっちりホールド。こういう時に日和る彼女の性格を知っているので、此処へ向かう道中ずっと腕を捕まえていた。こんな事してると、傍目からは百合ップルと見られそうだ。まぁ、それは事実なんだけど。
「はぁ、観念しました。煮るなり焼くなりお好きにどうぞ」
「ん、素直でよろしいゾ♪」
私の手に堕ちた彼女を連れて、ショップへ突撃していく。
「いらっしゃいませ~」
満面の笑みと、はきはきした対応の店員に出迎えられる。第一印象、グ~~ッド!
「え~っと、採寸したいので試着室借りたいんですけど……」
「あ、はい。こちらです~」
店員に案内されて、店舗の奥にあるフィッティングルームに案内された。
「サイズが判明しましたら、幾つか商品をお持ちしますので、よろしかったらお声をかけてくださいませ」
そう言って、店員は私達から離れていった。
「さぁ、入った入った♪」
「わ、わかったから押さないでよ~」
2人で試着室に入って、カーテンを閉める。
「……さぁ、脱衣の時間だ」
そう言って、秀美の制服に手をかけようとしたら、頭に彼女の鉄拳を喰らった。
「じ、自分で脱ぐから!」
むぅ、彼女の服を剥くのが楽しみの一つだったのにぃ……。
「そんな野獣のような眼で見ないで!」
ぉおっと、私の中の本能が目覚めてしまうところだったか。今言うのも何だが、私は秀美のことを溺愛している。他人には絶対見せない、乙女モードに惚れているのだよ。もう、この時の秀美は激プリチーな上に、私の中の野獣が目覚めてしまうくらい危険なのだ。だから、余計に彼女が乙女チックになってしまうと言う負のスパイラルに陥ってしまうのだけれど(テヘペロ)。
「さぁ、脱いだわよ。……測るんでしょ?」
赤くなりながら、ジト目で私を見つめてきた。ぉおう、自らブラまで取ってパンイチになるとは……私を誘ってるのか?
「さぁ、計測の時間だよ~、ハァハァ」
メジャー片手に、彼女に近づく。
「何か、怖いんですけど~!」
「だぁいじょぉぶだよぉ~、痛くしないからねぇ~」
「目が据わってる~」
大丈夫と言いながら、彼女の背中に手を回し、メジャーを這わせる。そして、いきなりトップバストを測る。当然ながら、メジャーが「あの」部分に当たるわけで。
「きゃん」
「ん~いい声で啼きますなぁ」
「ワザとでしょ、もぅ~」
「ソンナコトナイデスヨ~」
「超棒読みだし~!」
フフフ、さぁ悶えたまへ~……しかし、気になるなぁ、目の前の物体。
「この巨乳に殺意を覚えるのは、私だけでは無いはずだ。全国の貧乳女性の敵である!」
「莫迦なこと言ってないで、早く測ってよ~」
彼女、涙目。しかし、実測で数値が判明すると、私は更に慄いた。
「な、何と……F級ですか!このようなモノを所有しているとは……万死に値する!」
「好きでこんなんなったわけじゃないし!」
「よって、乳揉みの刑に処す」
「え?ば、莫迦なことはやめな……ひゃっ!駄目、揉まないでぇ~」
もう、この暴走は止められんのだよ。全てはこの巨乳のせい……そうやって揉んでいたら、再度頭に鉄拳が炸裂した。
「いい加減にしてよ!もぅ……」
秀美の鉄建のおかげで、妄想世界から無事に帰還することが出来た。いけない、段々暴走に歯止めがかからなくなってきている。それもこれも、全てあの巨乳のせいだ。
「ショーツ用に、ヒップも測ってよ、早く」
へいへい、分かりましたよっと。メジャーをお尻に回してっと……ん?この匂い、まさか。
「ひ~で~み~?」
「な、何かしら?」
「パンツから何か匂うんですけど~?」
私がそういった瞬間、彼女の顔がゆでだこのように真っ赤になった。瞬間沸騰って、ホントにあるんだな~。
「お、○リ○ノじゃないかしら?」
「いんや違うね~。もしかして胸揉まれて……感じちゃった?」
「ば、ば、ば……」
図星っすか。言の葉が声になってないよ。
「まぁ、調子に乗った私も悪いけどね」
「そ、そ、そうよ。責任とってよね」
責任、ときましたか。そんじゃ、取らせてもらおうじゃないの。
「とりま、下着を見繕ってもらうかな。店員さ~ん、このサイズの上下セットを、幾つかお願いします」
店員さんにサイズを告げて、幾つかのセットを試着室に持ってきてもらう。ショーツは見た目で問題なさそうなので、ブラだけ試着させて当人が気に入ったモノを購入して店を出た。
「痛い出費だ……」
そんな呟きが秀美から聞こえたが、無視する。これからは、下着にも気を遣いなさい、と忠告する。
「さて、トイレ寄っていい?」
携帯で時間を確認し、ガイドの集合までまだ時間があることを確認。
「私も行く」
そう言って、秀美も付いてくる。行く先は、ナラスパ内にある乗務員専用のお手洗い施設。一般のお手洗いは、普通に利用しようとすると大概混んでいる。意外と立ち寄り施設には、乗務員専用の休憩室とお手洗いが、一般の人にはわかりにくいところに用意されていることが多い。
「さて、責任を取らせてもらいますか」
そう言って、私は秀美を少し広めの個室に押し込み、私も一緒に入って鍵を閉めた。
「え、こ、ここで?」
「責任取れ、って言ったの、秀美じゃん」
「そうは言ったけど……ここで?」
「今日は、団体は私らだけだから、此処には人は来ないよ」
実を言うと、もう私の中のスイッチは入りっぱなしになっている。何とかここまで我慢してきたけど、もう限界。
「感じ……ちゃった……秀美が……悪い……んだからね……」
私はそれだけ言うと、強引に彼女を洋式便座に座らせ、唇を奪った。
◇
「お疲れ様で~す。……秀美先輩、何か雰囲気変わりました?」
時間になり、バスへと戻る。先に戻っていたらしい佳奈子が、秀美を見て一言呟いた。
「さすが佳奈子。良くわかったね。まぁ、私がいろいろアドバイスしてあげたんだよ」
「さっすが珠美先輩。同期がいるっていいなぁ」
「何言ってるの」
そう言った後に、佳奈子の耳元で囁いた。
(あんたには、満水がいるでしょ)
「なっ!」
佳奈子が面白いようにアタフタしている。あれで、バレていないつもりだったのか?
「タマ~、いい加減にしておけよ~。佳奈子が使い物にならなくなるぞ」
そうだね、この辺でやめておくか。
(その事はどうかご内密に……)
(分かってるよ)
そんなやり取りをして、佳奈子から離れた。
そして、秀美を見やると、彼女もいつもの男勝りなガイドに戻っている。
私達の関係は、公にはしていない。他のガイドからも、仲の良い同期にしか見えていない……はず。相思相愛かは、秀美の気持ちを聞いていないからわかんないけど、私はこのまま彼女と仲良くやっていきたいと思っている。彼女もそれを望んでいるのかなぁ?近いうちに聞いてみようっと、彼女の身体に♪
「さぁ、帰りも安全に、仕事頑張ろう!」
『はいっ!』
終劇