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お遊戯会っ!  作者: 翠川稜
同窓会っ!

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23/27

同窓会 -1- 





 真咲は、ダイニングテーブルに頬杖をついて、右手に持つハガキを眺めて溜息をついた。

 それは梅の木中学校同窓会のお知らせハガキである。

 梅の木中学校を卒業して、早10年。

 中学校の同窓会は過去に一度あったのだが、真咲は欠席していた。

 仲のいい子は、みんな忙しくて出席できなかったのが理由。

 幹事が真咲の面識のない人々だったので出席を躊躇ったのもある。

 出席した人から聞いた話だと、「会費がメチャ高く設定しててーボラれた感があったよ。幹事もやり慣れてないっていうか……」なんて意見を耳にしていたので、欠席して正解だったなと思う。

 同窓会に仲のいい子が欠席だからなんて理由で欠席……。

 それなら別に同窓会じゃなくても地元なんだし、いつでも会えると思うだろうが、中学を卒業して進路がバラバラになってしまえば、高校や大学に入ったら新たな友人関係を作るのでそちらに時間をとられてしまい、なかなか連絡をすることもないのだった。

 中学卒業してからもずっと会う関係は、愛衣ちゃんぐらいで、それでも時々メールと、一年に一回、会うぐらいだ。

 葉書には、今回は幹事の名前が記載されてある。

 その筆頭があの岩崎厳太郎である。

 瀬田光一と飯野崇行の名前も連なっている。

 当時、ビーズアクセ同好会の木村友里も青木美紀も出席するから出ようよーとメールで誘いをかけてきた。

 そして何よりも。


 「真咲ちゃん、元気? 真咲ちゃんが出席するなら、わたしも出席するよーみんなにも会いたいな」


 なんて菊池愛衣ちゃんからもメールがきていたのだ。

 中学校の頃と変わらない、ちょっと引っ込み思案な性格をのぞかせるおとなししめで可愛い文面に、愛衣ちゃんの性格の変わらなさを垣間見た真咲。

 中学一年の時、ちょうどこの年の瀬にやった、幼稚園のお遊戯会の衣装作りのメンバーがほぼ集まるのだ。



 「行ってくりゃいいじゃんよ」

 母親がアイロンをかけながら言う。

 「だって~」

 真咲は上半身をダイニングテーブルに投げ出して、深い溜息をついた。

 「派遣の仕事も打ち切られて、暇なんでしょ?」

 ぐさりと母は真咲のハートに言葉のナイフを突き立てた。

 大学を卒業したものの、この超就職難。

 就職先は見つからず、派遣のバイトで食い繋いでいたのだが、この度更新を切られてしまったのだ。

 実務能力は悪くないと思っていたのに、ショックだった。

 そんな状態で同窓会に出たら、みんなとの距離がますます広がってしまう現状を実感するに違いない。

 メールをくれた愛衣ちゃんは、高校の頃から、ネットで手造りの小物を公開してそれを販売して、今じゃ中高生に人気の新規ブランド、「アイ・キクチ」のオーナーなのだ。

 方やしがない契約を打ち切られた派遣OL。

 そして方や、ブランドメーカーのデザイナー。

 なんだかとてもじゃないが、愛衣ちゃんが遠く感じて尻込みしてしまうのだ。愛衣ちゃんが、ブランドを立ち上げてからは、忙しいに違いないと思って、自分からの連絡はしなかった。

 彼女が普通に学生生活を送っていたら、真咲からは頻繁に声をかけていたと思う。


 「そりゃー、愛衣ちゃんと、真咲じゃ、才能が違うんだからしょーがないでしょ、派遣打ち切られたんだし、愛衣ちゃんに雇ってもらえば?」

 「無理言わないでよ……」


 それは真咲のプライドが許さない。

 第一、愛衣ちゃんにも迷惑になる。

 逆の立場で考えたら、使えるか使えないかもわからないのに、友達だからという理由で人を一人雇用するかとなれば、真咲なら躊躇う。

 「ほら、洗濯ものぐらいしまいなさい。夕飯の買い物してきてちょうだい。だいたい職探しもロクにしてないんでしょ、女の子なんだから、いいわよね、家事手伝い、花嫁修業中の言葉が免罪符になるわー。真咲が男だったら自宅警備員とか二―トとかって言葉が該当して目も当てられないしね」

 機関銃のごとくというか、立て板に水のように言う母の言葉を、真咲は繰り返して呟く。

 「……自宅警備員……二―ト……」

 「事実でしょ?」

 せめて職が決まらない派遣OLにしてくれと真咲は内心思う。家事手伝い、花嫁修業中でもこの際仕方ないだろう。

 「お母さんとしては、同窓会に出席してきて、将来性のある男ゲットして、そのまんま嫁に行ってもらいたいところよね」

 将来性のある男には、すでに彼女の一人もいたっておかしかないでしょうよと心の中で呟く。

 が、母は、すっかり自分の発言に気を良くしたようだ。

 「ああ、それ、いいっ! すっごくいい!! アンタ気合い入れて、同窓会出席してらっしゃい! 明日ワンピース買いに行こう! あんたの婚活用被服代としてなら半額寄付してあげるから!」

 全額じゃないんだ。さすが母……。

 真咲は母の云う通り、家事手伝いをするために立ちあがった。

 ワンピース半額代につられたのもあるけれど、ここで何もしなければ、家事手伝いもできないのレッテルを貼られることになりかねない。


 「今日は茶碗蒸し作ろう! 真咲、作り方を教えるからっ!! 男は胃袋でゲットよ!!」


 買い物に干し椎茸は忘れずに買わなければならないのねと、心の中で呟きながら。





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