六章「エルフの名言が聞きたい」
風邪引きました。辛いです。辛いので、執筆ペースが落ちます。
「うらぁっ!!」
怒声を上げた俺は、先手必勝が如く敵エルフに向かって拳を突き出した。
しかし、相手は飛び上がると突き出された俺の腕を掴み空中で回転し、そのまま俺を投げ飛ばした。
「うぉあっ!?」
投げられた俺が地に叩きつけられると同時に、敵が弓をひく。
奴の矢が魔力を帯び、紫に輝き始める。
「やらすかよっ!!」
弓が放たれるかと思われた瞬間、そう声をあげたのはアルファス。
アルファスは、詠唱する。
「フレイム・メイル!――ブレイク・ハンマー!!」
火炎の大槌へと変身したアルファスが、エルフを襲う。
「くっ!」
アルファスの一撃で吹き飛ばされたエルフ。そこにフラックが追撃の詠唱を行う。
「岩砕流星!!」
フラックの魔法で宙に浮かび上がった無数の岩が、一斉にエルフめがけて飛来する。
エルフは、飛来する岩の雨に向かって弓をひく。
「レイティック・レイン!!!」
詠唱と共に放たれた紫の矢は宙でいくつにも分裂し、フラックの岩を次々に砕く。
どうだとばかりに、エルフがこちらを睨む。
しかし、その顔がすぐさま驚愕に変わった。
「これで終わりなわけ、ないでしょっ!!」
エルフの正面で、そう声を上げたユリアは、赤雷を帯びる右拳をその腹部へと叩き込んだ。
爆音と強烈な放電現象に、俺達は顔を背ける。
決まったか?
あまりにも強烈な一撃に、そう感じた俺だった。
しかし、
「やるじゃない」
そう呟き、爆煙から飛び出して来たエルフは弓を射る。
それをすれすれで交わした俺は、拳を握った。
が、
ズキリ
俺の全身を痺れのような感覚が襲う。負荷をがかかっている証拠だ。
「もう限界かよっ!?」
俺は、悔しげに呟くと後退する。前回の戦闘で理解したが、この超怪力は限界がある。限界を越え使用し続けると、前みたく暫く筋肉痛で動けなくなってしまう。が、それにしても魔王に会う前に、限界に達するとは予想外。先ほどの海洋生物や海割りに使ったのが祟ったのだろうか? なんにせよ、痺れが消えるまで幾らかの休息が必要だ。
俺が下がったのを見たユリアが、俺に攻撃しようとするエルフを赤雷で牽制する。
その時、
「そろそろ本気だしても、いいかしら?」
不意にエルフはそう言うと、矢を地に突き立てた。
すると、矢を中心に巨大な魔法陣が形成される。
「召喚魔法か!?」
フラックが声をあげ、身構えた。
エルフは、笑う。
次の瞬間、魔法陣から一本の灰色の腕が出現した。
「でかっ!?」
アルファスが顔をひきつらせる中、腕は地を掴む。そして、その本体がゆっくりと魔法陣から這い出して来た。
その姿を見たユリアが、息をのむ。
「……ゴッド・ゴライアス」
なんじゃそりゃ!? 俺は、内心でそう叫びつつ、召喚された灰色の巨人を見る。コンクリート色の肌に逆立てられた髪、クリスタル色の鋭い瞳と、鱗で覆われた尻尾。……なんか、ゴライアスっぽい気もするけど、こりゃゴライアスじゃねぇだろ!?
そう思った時、ゴッド・ゴライアスたる巨人が、拳を振った。
飛び退く俺達。衝撃で舞い上がる大地の欠片。
「さすがはエルフといったところか」
フラックは言うなり、魔法でゴライアスの足元を岩で固めた。
すぐさまアルファスとユリアが飛び出し、魔法詠唱を行う。
「フレイム・メイル!デュアル・ブレイザー!!!」
「轟け!!紅雷轟撃刃!!!」
アルファスの火炎の双撃と、ユリアの赤雷の一撃が、ゴライアスを襲う。
激しい衝撃と、強力な一撃にゴライアスが大きくのけぞった。
「今!」
そう声を上げるユリアに反応した俺は、地を蹴る。
俺の脳内にある異世界基礎知識によれば、召喚魔法は術者の無力化で攻略できるとある。故に、この一撃で狙うは、あのエルフ。
ズキリ
痛みに歯を食いしばる俺は考える。……痛まずにこの力をより沢山使う方法……それは――――。
「一点集中!!」
叫ぶなり、俺は足のみに力を込めて飛び出した。全身に力を行き渡らせない分、威力は半減されるが、無理にフルマックスの力で撃ち込む必要は無い。例え半減された威力でも、この膂力は世界最強の一撃!
「うるぁあああああ!!!!!!」
俺は、空中で拳を構えると腕力のみに力を集中させる。ゴライアスの上に立っていたエルフは、先ほどの一撃で宙に投げ出されている。
エルフの正面で拳を構えた俺は、目を見開くエルフにこう言った。
「魔王に伝えろ。俺達を倒したけりゃ、直々に来い!ってな!」
刹那
振り抜いた拳がエルフの腹部を捉え、周囲に爆風を巻き起こす。
エルフは声すらあげられず、そのまま遥かに見える魔王の島へと吹き飛んで行った。
着地した俺は、光の粒子となって消えていくゴライアスを尻目に、腕の感覚を確かめる。…………大丈夫だ。痛まない。ハーフバーストといったところかな?悪くないし、充分に戦える。
俺は一息つくと、後方に待つユリア達のところに向かう。
と、その時俺は大事なことを思い出した。
「しまったああああ!!!! エルフ美女に「くっ!殺せ!」って言わせるの忘れてたあああ!!!!!!」
一人その場でのた打ちまわる俺に、ユリア達は頭上に疑問符を浮かべている。……くっ……俺としたことが、こんなミスをするとは…………いや。待てよ? さっきのエルフ美女、魔王の島に飛んで行ったってことは………………あとで、また見つけて倒せば、言わせられるってことじゃん!!
そう気づいた俺はすぐさま立ち上がると、後方の三人に最上級のイケボでこう言った。
「さぁ! 早く乗り込んじまおうぜ! 時は待ってはくれねぇからなっ!」
最後にキラリンっと星が付きそうな俺の物言いに、三人は「お……おぅ」曖昧な返事をする。
ものすごい勢いで駆け出した俺にユリアは、呟く。
「何かいいことでも、…………あったのかしら?」
その一言にフラックとアルファスは首を傾げた。
「「さぁ?」」
×××
「申し訳ございません!」
そう声をあげたエルフの女に、魔王たる青年はつまらなそうに欠伸をした。
「魔王様!! どうかもう一度私に――――」
「あー。そういうのいいから」
エルフの言葉を遮った青年は、宙に「機関銃」という文字を描く。
その直後、虚空から出現した一丁のサブマシンガンが、エルフの女を蜂の巣にした。
「……まっ……魔王さ………………ま」
血を撒き散らしその場に倒れた彼女に、青年は失笑を浴びせる。
「もう一度チャンスくれって……どこの熱血運動部だよ? え? こちとら、第二の人生に賭けてんだよ。ゴミはゴミらしく死ね」
そう言った青年は、「くあー」と大きな欠伸を漏らすと玉座に深く腰掛けた。
「で? 今回の転生者って、どんな奴?」
すると、青年の問いに答えるべくして、一人の女が前に出た。黒いロングヘアーに整った容姿と、スレンダーな体躯。しかし、その姿はどこか異世界に似つかわしくないものだった。
女は言った。
「対象は、日本人。見たところ、どこにでも居そうなタイプの学生さん。能力は、怪力系。……あと、発言からして十八禁同人誌が好きなのかしら? 「くっコロ」について何か喚いてたわ」
女は、そう言うとため息をつく。
彼女の報告を聞いた青年は、「ははっ」と笑いを漏らす。
「いいね! なかなか気があいそうじゃん。……ほんで、ぶっ殺しがいがありそうだ」
青年の一言に、女は再びため息をついた。
「いつも、思うんだけどさ…………。まぁ、私もアンタも大概なんだけど………………転生者って、変わった子多くない?」
すると、青年はニヤリと笑う。
「いいや。変わったのが多いわけじゃない。…………変わってなきゃ転生できねーんだよ」
彼女は、その発言にどこか納得してしまう。確かに「こんな異世界アホらしい」と考える現実主義者は、決して転生できないし、したところでそれが受け入れられず錯乱してしまう。しかし、変わった連中すなわち架空主義者なら、こんな夢物語でも喜んで受け入れられる。 そう言う点で考えれば、確かに青年の発言の意図は汲める。
「まぁ。そうかもね……。それより、アンタ。あの子達、どうすんのよ? このエルフでも勝てないんなら、結構強いわよ?」
不安げにそう問う彼女に青年は、ヒラヒラと手を振る。
「忘れたのか? その為にアイツらがいるんだろ?」
青年はそう言って、窓際に立つと、城から出て行く四人の魔導師を見た。
その四人は、一人一人がこの距離からでもハッキリ伝わるほどの強力な魔力を帯びている。
[死海の四従士]。それが彼らの総称にして、青年の保有する最強の魔導師達だった。
「五年もかけて大陸中から集めたんだ。楽しましてくれよぅ?」
正直、彼らは大陸最強の四人ではない。されど、青年が月日をかけて集めた選りすぐりの四人である。相当な実力があることには違いない。
――――さぁ。こいよガキ――――
青年は、まだ見ぬ未知の少年を想像し、ニヤリと凄みのある笑みを浮かべるのだった。
感想書いて下さった「赤チン」さん、毎度ありがとうございます(≧∇≦)。また、ブックマークして下さった方々も本当にありがとうございます!
風邪が治りましたら、また怒涛の勢いで執筆したいと思いますので、これからもよろしくお願いします!!!
次回は、明日?うーん。明後日?よくわかりませんが、気長に待っていただけると嬉しいです。