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四章「闇の誘い」

 背中が痛いですw

 また、一日で書いちまった。

 ブックマークしてくださった方ありがとうございます。

 筋肉痛がヤバい。


 俺は、ギルドの長椅子に横たわりプルプルと全身を震わせていた。

「もぅ! 無茶するから~」

 そんな様子で呻く俺に、ユリアがストローを差したコップを差し出してくる。

「……う゛ぅ……あ゛……ありがとう」

 俺は礼を言って、口元に差し出されたストローを吸う。普段なら、美少女に水を飲ませて貰うなんてことされれば喜びで昇天しちまいそうなところだが、生憎全身を襲う激痛でそんな思考は微塵も湧いてこない。

 何があったか。

 それは、事件の後のこと。いや、事件も関係ある――――――――――――。

「全くですよ。半日で五件も討伐クエストをクリアするなんて、無茶し過ぎです」

 そう言って、いくつもの氷袋を俺のそばに置くイリカーナは、その氷袋を俺の手足の上に乗せていく。……シップとかねぇのかなぁ。

 イリカーナの処置を眺めながら、俺はため息をついた。


 そう。今イリカーナの言ったように、この筋肉痛は、過度の運動による反動である。

 ただでさえ、超人的膂力を有するというのに、それを過度に酷使すれば通常よりも遥かに強い筋肉疲労を覚えるのは、考えてみれば必然であった。

「うーん。流石に今日は、出られそうに無いねぇ」

 そう言ったユリアはその場にかがみ、身動きの取れない俺のほほをプニプニとつつく。……くっ。これは、ご褒美ですか?

「それにしても、すごいですよね。ユリアさんと一緒とは言え、半日に五件。しかも、そのほとんどを自分一人で片付けてしまうなんて。もはや超人の枠すら、飛び越えてますよ」

「本当よ。とても魔力0の人間とは思えないわ。そもそもこの大陸中探しても、一日二件以上のクエストに出かける人なんているかどうか……」

 イリカーナとユリアの二人は、そう言って呆れたような畏怖のような、なんとも複雑な表情になる。


「よぅ。モテモテ坊主。調子はど…………って、聞くまでも無いか」


 低くドスの聞いた声に俺は少し首を動かし、声の主を見た。

「……やぁ……フラックさん…………いてっ……」

 首を動かすだけで軋む肉体に顔をしかめる俺に、フラックは苦笑いする。

「聞いたぞ?半日に五件って。そりゃ。なれようと焦る気持ちとか、嬉しくて仕方ない気持ちもわかるがよぅ」

 そう言って、フラックは俺に向かって包みを投げて寄越す。

 俺の横に落ちた包みをイリカーナがていねいに開く。

 フラックは、続ける。

「あんだけ力があれば出来ることは多い。力量はあるんだ。進化への焦りを持つのはいいが、無茶しろってことじゃねーからな?」

 フラックは、そこまで言って踵を返す。そのまま歩き去っていく巨漢に、俺は「あぁ」とだけ返し目を閉じた。

 すると、となりで包みを開けていたイリカーナが驚きの声を漏らす。

「これ希少薬草じゃないですか!? 筋肉痛他、傷や熱にも効きますよコレ! しかも、こんなに!」

 イリカーナはそう言って包みの中の薬草を見せてくる。…………う。大型の柊に見えるよコレ。触ったら痛そう。

 内心そう思いつつ、俺は外に出て行くフラックに視線を向けた。

 フラックは、俺の視線に気づいたのか背中越しに手を上げてヒラヒラさせる。

 なるほど……。わざわざあんなこと言って、これ渡すってことは、それなりに期待されてるわけか…………。まぁ、普通、興味の無い新人にこんなことはしねぇもんな。

 そう考えた途端、なんだかこうしてはいられない気分になる。が、ここで無茶しては、先ほどのフラックの言葉が無駄になってしまう。

 俺は激痛のはしる体を起こし、ユリアとイリカーナに言った。

「わりぃけどさ。その薬草、俺の全身に貼ってくんね?」


 その後、「全身」と聞いた二人が急に赤面しモジモジし始めたのは、気のせいだろうか?



×××



 ふと目が覚めると、時刻は夜中の二時を回っていた。

「あちゃー ギルドで寝ちまったかー」

 そう呟き、あたりを見回す。

 ギルド内は、奥のキッチンルーム以外は照明が消えていて、フロアには誰もいなかった。

 ふと、見ると、俺の体には毛布がかけられている。おそらくユリアかイリカーナのどちらかがかけてくれたのだろう。……でもなぁ。毛布かけるくらいなら、ギルド閉まる前に起こして欲しかったぜ。

 そう考え、起き上がった俺。

「お?痛くねぇ」

 筋肉痛の消えていることに気づいた俺は、体中に貼ってある薬草を見た。

 他の薬草に比べ、ひときわ効果のある薬草とは聞いていたが、よもやここまでとは…………フラックの兄貴、あざーす!


 そんな時だった。


 !


 不意に俺は、誰もいないはずのギルドに何者かの気配を感じた。

「誰だ?」

 俺は立ち上がり、ギルド内を再び見回す。

 しかし、どこにも人の姿は無い。

 気のせい……か?

 全くの無反応を貫く薄暗いギルド。……俺、疲れてんのか?

 消えた気配に、俺は肩の力を抜く。

 すると、


「人故に人らしき悪意が……動く」


 突然耳元で聞こえた声に、俺は硬直する。

 すぐさま振り返りたかったが、その声にはそれを許さない強制力のようなものが感じられる。

「……誰だ?」

 すぐ背後にいるソイツは、俺の言葉に静寂を持って返す。

「答える気ねぇのか……じゃぁ。今のどういう意味だ? 悪意? 何の話だ?」

 しかし、それにも返事は無い。変わりに一枚の依頼書が俺の目の前に現れる。

 それを手に取ると、奴は再び話し出す。

「……悪意は、他世界より来たる。その悪意は純粋にして混沌。……お前に止められるか? 晴島紅哉」

 へぇ……俺の名前知ってんだぁ。アニメでは、よくある展開だな。……でも、こりゃ冒険の予感がする。

 そう考えた俺は、声の強制力に抗い、無理矢理振り返った。


 そこにあったのは、闇だった。


 ギルド内の暗闇では無い。それは、黒い煙のような影のようなもので、赤く煌めく双眸が奥で、じっとこちらをみつめいた。

「……あんた。俺を試してんのか? どういうつもりか知らねぇが、どんな悪意だろうと、それが腹立つ野郎なら、俺がぶっ飛ばす!」

 そう言い切った俺は、強い眼差しで闇を見返す。

 すると、闇の中で二つの瞳が微かに細められる。……笑っているのか?

「…………そうか……………………なら、最後に一つ問おう」

 そう呟いた闇は、不意にモヤの中から真っ黒な手を伸ばし、俺の胸元に触れた。

 そして、


「お前は…………本物か?」


 一瞬、奴の発言が理解出来なかった。は?本物?…………それって、アニメとかでありがちな「お前の正義は本物か?」的な意味か?それとも……。


 しかし、俺が口を開く前に、目の前の闇はゆらりと揺らめきぼやけていく。

「…………かの地にて待つ。我が名は、――――ステイル・ヴェイン」

 最後にそう言った闇は、そのまま空間に溶け、やがてその姿を完全に消した。

 残された俺は、暫くの間ボーッとしていた。

 が、少しして我に返ると、依頼書に目を落とす。

 その内容を確認した俺は、目を見開いた。


 そして、


「おもしれぇ! やってやろうじゃん!!」


たびたび、読んでくださった方から、「良かったよ」とコメントをいただくのですが、嬉しくてたまりません。もっと、言ってくださいwww

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