二章「魔法対膂力」
今回も、ブックマークしてくださった方が多かったので、一日で書きましたww
本当にありがとうございます!!!!
俺の一言に敵陣がどよめくのが分かる。
なぜ、このようなことをしたか?問われるまでもない。腹が立ったからだ。
しばらくザワザワと動揺を見せていた敵陣だが、俺が一歩踏み出したのを見て、一斉に動き出した。
荒野を俺めがけて一直線に向かってくる連中。俺は、振り返ると、マスターとユリア、イリカーナを順に見るとニカッと笑って見せる。
「んじゃ。ちょっと行ってくるわ」
そう言った俺は、呆然としている皆に背を向け、地を蹴った。
地を蹴った衝撃で大地が隆起し、俺は一瞬にして数キロ先のメルギネント本体の正面に出る。
瞬く間に目の前に現れた俺に、敵魔導師達が息をのむ。
俺は、陣形を組み突っ込んでくる前方隊に拳を降った。
「じゃぁな」
言い終わるや否や、轟音を立てその前方隊が宙に舞う。
魔導師達の悲鳴が上がる。
その時、
「影戟閃」
詠唱と共に視界の隅から、影の戦戟が飛び出して来る。
のけぞることでそれを回避すると、俺は身構える。
と、すぐさま第二撃が飛来した。降り注ぐ十本あまりの影の戟を寸でのところで交わした俺は、術者の姿を見た。
そいつは、黒い覆面に黒マントといったどこぞの中二病にありそうな格好をした魔導師。まぁ。黒い点は、俺も大差ないわけだが……。
中二魔導師は、手を払うような仕草をして詠唱する。
「影回廊―牢撃―」
直後、俺の足元から影が吹き出し、俺の周囲を取り囲むと牢獄のような形を形成した。
「その牢獄は、影撃の無限地獄。捕らわれたが最後。貴様の全身は影の斬撃によって――――」
「うるせぇ」
中二のセリフを一喝すると同時に俺は、魔法の牢獄を砕き去った。
魔法が破られて、驚愕する中二。
俺は距離をつめ、その頭を掴むと、思い切り地面に叩きつけた。
爆発とともに、土煙が火柱の如く天に舞い、クレーターが発生する。
地にめり込み、ピクピクと痙攣する中二を確認し、俺は迫り来る次の隊へと向かって行く。
「このガキ!」「死ねやっ!」「くらえ!」
口々に罵詈雑言を浴びせてくる雑魚を次々吹き飛ばし、俺は走る。その姿は、悪鬼を貫く閃光の如く。
飛び交う魔法を砕いて交わして、俺は進む。
「あぁもぅ!めんどくせぇなぁあ!!!!」
叫んだ俺は、拳を握る。
そして、有らん限りの全力でその拳を振り抜いた。
無音。
一瞬にして、次の隊はおろか、その後方にいる全ての隊が消し飛んだ。
まるで大出力レーザー兵器で削り取ったような大地の有り様に、俺自身も流石に驚いた。
「やり過ぎちまったか?――――――――――いや、そうでもないか」
遅れてやって来た爆風と轟音の中、そう呟いた俺は、その先で平然と立つ者達を見た。人数は、四人。見たところ、マスターらしき人物と人質もいない。
見たところ、そこそこの手練れなのだろう。流石に経験値0でプロ数人を相手にするのは、厳しいかな今ので飛ばなかったとこから察するに、あの一撃をもう一度撃っても回避される可能性がある。
黙ってはいるが、俺とて何発もフルパワーで撃てるわけではない。先ほど気づいたが、撃つたびに体が軋む感じがするのだ。おそらく相当の負荷がかかっている。……これが終わったら、少し鍛えるか。
が、今はそれより目の前の四人をどうするかだ。まだ距離はあるが、突っ込んだところで賞賛は未知数。
その時だった。
「私達も戦うよ!」
突然の声に振り返ると、そこにユリアがいた。その後ろに筋肉男フラック氏、先ほどの炎の少年もいる。
「え?いや、あんたら魔法使えないんじゃ?」
すると、ユリアが向こうの四人を指差した。
俺が目を凝らすと、その理由に気が付いた。
奴らの首にかかっている魔壊石、ヒビが入り光を失っていた。
「少年。お前の一撃のおかげだ」
そう言って、フラックは凄みのある笑みを浮かべ、岩の拳を握る。
「ったくよぅ。いいとこ持って行きやがって。でも、ここからは、そうはいかねーけどなっ!」
炎の少年もニヤリと笑うと、炎で作り出した手甲を打ち合わせた。
「コウヤ。私達仲間だしさ。一緒に戦わせてよっ!」
ユリアは、俺を真っ直ぐに見る。その愚直なまでの真剣さに、俺はやれやれと頭をかく。
「まぁ。……その、なんだ?……ちょうど一人じゃ、キツいと思ってたところだ。だからよ。……手伝ってくれ」
先ほど威勢良く飛び出しといて、こういうことを言うのは結構恥ずかしい。しかし、かと言って、この場で虚勢をはるほど俺は馬鹿じゃない。……それに、あんなかわいい子に真剣な顔でお願いされたら、断れない。
俺の素直な一言に、三人が各々の反応をもって返す。
ユリアは強く頷き、フラックは「おぅ!」と声を上げ、少年は歯を剥き出して笑う。
俺は振り返ると、残る四人の魔導師を見た。
そして、強気の笑みを浮かべこう言った。
「そんじゃぁ。 クライマックスだ!」
×××
ギルド[怪鬼夜行]のマスター、ゼフト・ブライアは、小高い丘の上で全てを一望し、驚愕していた。
長い白髪を適当に後ろで束ね、金の刺繍の施されたローブを羽織るその男が見ているのは、やはり戦場を駆ける謎の少年だった。
「……な…………なんだ、あの小僧は……」
その呟き、未知に対する恐怖に脅えていた。
マスターゼフトにとって、絶対勝利なはずのこの戦い。純粋な魔法大戦を敢えて避けたにも関わらず、あの少年の謎の力にほとんどの魔導師は為すすべもなく敗北。そして、その謎の力は、魔壊石の効果すら意に介さず、それどころか地形をまるまる変化させるだけの威力があるのだ。
「くそっ!!なんなのだっ!あんなもの聞いておらんぞっ!」
荒々しくそう吐き捨てたマスターゼフトは、自らの首にかかっている魔壊石を投げ捨てる。
違法道具と知りつつも、[闘龍の古証]を倒すためだけに密輸した貴重な石だが、こうなってしまってはなんの意味もない。
「……かくなるうえは……」
そう呟くと、マスターゼフトは傍らにある大きな皮袋を睨んだ。
皮袋には、何か入っているようでもぞもぞと中で何かが動いている。
その時だった。
「ようやく石を捨てたか」
!?
どこからか、突然聞こえた声にマスターゼフトは周囲を見回した。
すると、視界に宙を舞う灰が目に入る。
まさかっ…………。
マスターゼフトが、察すると同時に背後で声がした。
「よくもまぁ。こんなことしてくれたのぅ。ゼフト」
恐る恐る振り向くゼフト。その先にいたのは――――――。
「マ……マスターアレキウス」
いつの間にかそこにいた老人は、名を呼ばれ鋭い視線でゼフトを見た。
ゼフトは、全身が氷つくような感覚を覚える。
今更ながら、先ほど魔壊石を投げ捨てたことが悔やまれる。
「まっ!待て!!寄るな!あんた、孫娘がどうなっても――――――――――」
「これのことかの?」
ゼフトのセリフを遮ったマスターアレキウスは、大切そうに抱き上げた皮袋を優しく揺らして見せる。
「なっ!?」
慌てて傍らを確認するゼフト。が、そこに皮袋は存在しなかった。
あたふたと焦りを露わにするゼフトに、マスターアレキウスは低い声で言った。
「さて、ゼフトよ。……どう落とし前つけようかのぅ?」
直後、マスターアレキウスの背後からおびただしい量の灰が吹き出し、一瞬にしてゼフトを取り囲む。
「まっ!待て!!ちょっ――――――――――――」
ゼフトは、その声を最後にマスターアレキウスの一言で意識を失う。
「報いを受けよ」
その声は、どこまでも低く響き、どこまでも冷たく轟いた。
後のマスターゼフトの行方を知るものは、いない。
次回は、少し展開がある予定です。次回は、今回に比べて、一人に時間かけて戦わせたですねww(絶対そうするとは、言ってない)
感想がほしいですww
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