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魔力0!超怪力で世界を変えろ!!  作者: そこなべ のぼり
[魂剣製作・アンタレクス接触]篇
17/22

十六章「剣作りには、妖精が必要です」

剣製篇開始です。


 魔王討伐クエストより、一週間。

 俺は、ギルド内のベンチで昼寝をしていた。魔王討伐と島に擬態してた亀を消したこともあり、馬鹿みたいに大金が手には入ったのだ。アルファス、フラック、ユリアで山分けしても一人あたりの報酬額は相当なものだった。

 と言っても、仕事しなければ、金なんざ直ぐ無くなるので、俺はあの後も何個か簡単な仕事をこなしている。

 しかし、今日は春の気候ということもあり、連日の疲れが一気に眠気として襲ってきた。別に今日くらいのんびりしても良いよね? いや。良いはずだ。だって俺、魔王倒したんだぜ? 正確には、倒したわけでは無いんだが、クリアしたので、そう言うことにしておこう。つまりだ。今日くらい休みたいんだ!!!

「コウヤー!!!!」

 と、ギルド内に俺を呼ぶ声が響く。ちょうど気持ちいい時に呼ばれると、非常に機嫌が悪くなるのは気のせいだろうか?

 俺は、ゆっくりと体を起こすと、声の主の方を見た。

 また、貴様か……。

「どした? アルス。パンツ無くしたか?」

 ゲシ!

 すぐさま俺の顔面にパンチが入る。

「そっ、そういうこと言うなっ!」

 見ると、目の前に赤面しプルプルと震える女騎士が一人。

 アルスである。

「ははは……悪い。つい口が」

 ヘラヘラと笑う俺は、大きなあくびを漏らした。

「で、どうした?」

 すると、彼女はエッヘンと胸をはると、その真新しい鎧の胸元にある紋章を見せつけて来た。

 竜の大顎を描いたその紋章は、真新しい鎧にしっかりと馴染み、美しく輝いている。つか、女の子が胸はるな。いろいろ気になっちまう。

「ほらっ、これで私もガルグイユ・クレストの一員よ!」

「あー。結局入ったのか」

 俺は、半ば予想できた結末にポリポリと頬をかく。

 魔王討伐クエストの後、アルスは俺の紹介を経てマスターと会談。後にアルスの母は、魔王アスカ討伐クエストに行き、消息を絶ったことがわかる。おそらく魔王に敗れたのだろう。更に、彼女が以前使っていた部屋から、アルス宛てに書かれた手紙が出てきた。何が書いてあったかは知らないが、とりあえずそれを読んだアルスは納得し、今に至ると言うわけだ。

「まぁ。とりあえず、これからよろしくな。アルス」

 俺は、改めてアルスに手を差し出す。すると、アルスはどこかぎこちない様子でその手を握り返してくる。

「おい。なんか顔赤くね? 大丈夫か?」

「も、問題ない。大丈夫だっ」

 慌てたように手を放したアルスは、プイとそっぽを向く。……何これぇ。なんかこっちまで恥ずかしくなって来るんですけどぉ。

 なんだか、くすぐったい気分になり、俺も視線を泳がせてしまう。

「そ、そういえばだな。コウヤ。……私は、これから新しい剣を造りに行こうと考えているんだが、お前もその……拳だけでは大変だろうし、一本くらい剣を造っては、どうだ?……だから、その…………」

「あー。そうだな。せっかくだし造ってみてもいいかもな。なぁアルス。俺もついて行っていいか?」

 ゴニョゴニョと尻すぼみになるアルスの言葉。俺が同行の許可を求めると、すぐさまアルスの表情がパッ明るくなる。

「もっ! もちろんだ!」

 ……あっれぇ? なんだろコレ。なんか変な気分だ。気のせいか? いや、気のせいでは無い。

 なんだかピンク色の気分がするが、とりあえず俺はベンチから立ち上がり伸びをする。

「じゃ。行こっか」



×××



「で、なんでユーちゃんがいるの?」

「ん? いちゃ悪いの?」

 アルスのどことなしか不機嫌な声に、ユリアは平然とした様子で応じる。

 あれから直ぐに俺達は、アルス行き着け(?)の鍛冶屋があるノノント村を目指して街を出た。

 そして、いつの間にかパーティーにユリアが混じっていた。マジでいつからいたんだよコイツ。それにアルスはなんで不機嫌なんだよ。いろいろおかしくね? おかしいよね?

 俺は、なんとも微妙な気分で歩みを進めていた。

「ね、ねぇユーちゃん? もしかして、あなた……」

「あら? それは、アーちゃん? あなたもでしょ? え?」

 冷ややな声で、互いに視線を交わす女子陣。火花が散ってるよ……。なんで? なんで喧嘩すんの?

 二人の威圧感に気圧され、冷や汗が流れる。

 俺は、その後しばらくの間、二人の視線に挟まれる形で村への道中を過ごすこととなった。


 そして、馬車や列車擬きを乗り継いぐこと数時間。

 俺達は、ノノント村に到着した。


 ノノント村は、鍛冶業で栄える集落で、その秘伝の技術によって作られた武具は各地で大ヒットしているらしい。まぁ、その分値段もそれなりらしいのだが……。

 集落全体が巨大な工房と化していて、鉱石の調達から製作、販売、外部出荷まで行う超工房村である。

 アルスの行きつけの店は、この村の奥にある刀剣専門の店。何やらその店は、他の店には無い特殊な技術を使うことで〈魂剣〉と呼ばれる刀剣を作れるらしいのだ。アルスが言うには、その〈魂剣〉は、〈鋼精〉という精霊を刀剣に込めることで魔法力の他、剣として非常に高い性質を誇るらしいのだ。

 村には、職人の他に外部から来た商人や、冒険者、騎士達で賑わっており、俺達は人ごみの中を村の奥へと進んでいった。

「すげぇ賑わいだな。通勤ラッシュの駅みたいだな……」

「通勤ラッシュ?」

「あぁ。いや、何でもない」

 ユリアが首を傾げるが、適当に流して俺は周囲を見回す。……まぁ、俺本州の隅っこ出身だし、数えるほどしか通勤ラッシュっぽい通勤ラッシュは経験したことが無いんだよね。

「あ。あそこだよ!」

 そう言ってユリアは、通りの奥にある店を指差した。

 その店は、石作りの壁に木造のドア。店頭には適当な文字で[ユノ刀剣店]と書かれている。めっさ適当だな。おい。

 アルスを先頭に俺達は、店の扉を開いた。

「こんにちはーーーー!」

 アルスが店に入ると、一分ぐらいの間があってから奥から「はぁーい」と、気の抜けた返事が返ってくる。

 そして、そこから更に数分の間があって、店の奥から一人の女性が出てくる。

 年齢は、20そこらくらい。着ている衣服は乱れまくり、緑のショートヘアの髪はところどころ跳ねている。しかし、めちゃくちゃ美人だった。

「ユノさん。こんにちは!」

「………………ん? あー。アルスか」

 間延びした声を漏らすユノと呼ばれた彼女は、伸びをするとフラフラと俺達に近づいて来る。

「で、どしたの?」

 すると、アルスは荷物から一本の剣を取り出した。……あれ? これ見たことあるような……。

「前作ってもらった剣、壊れちゃったので、次は〈魂剣〉作って下さ――――」

「はぁあああ!!?」

 アルスの差した剣を受け取ったユノは、絶叫すると、剣を鞘から抜き取る。

 そして、刀身の粉々になった剣を絶望した表情で眺めた。

「一体どんなことしたら、この剣がこんなことに何のよぉおおおお!!!!!」

 涙目で叫んだ彼女は、剣を放り出すと、アルスの胸ぐらを掴んで揺する。

「くっ、くるちぃよ。やめてやめて」

 なんとかユノの手から逃れたアルスは、俺を指差した。

「彼のパンチで壊れたの」

 あ! そうだったわ! その剣、俺が砕いたんだわ。あはは。はぁ……ここは、俺が持とうかな?

 アルスの言葉を聞いた彼女は、俺の方を見る。

「………………うっそだぁ。人のパンチで砕けるような鉱物なんてないし」

 その一言に、アルスは俺に向けて腰にさしてある安物の剣を差し出した。

 俺は、素早くそれにデコピンする。

 瞬く間に弾ける刀身。ユノは、目を見開き呟いた。

「…………あ。……うん」



×××


 

「ここが、鋼精の森ね」

 ユノは、俺達にそう言うと、森の中をさす。

 あれから俺はユノに導かれ、村の隣にある〈鋼精の森〉に行くことになった。目的は、自分に相性のいい鋼精を探すためだ。

 鋼精とは、様々な姿を持ち、自らの興味がある人間を襲うことで、その人間を見定める。

 戦うことで、鋼精に選ばれた者は、鋼精を剣に宿し、生涯共に戦うことができるのだ。

「じゃ。ここからは各自で行動ね。鋼精との契約が完了したら、村で落ち合いましょ? 鋼精をちゃんと連れてくることが出来たら〈魂剣〉を作ってあげる。じゃね」

 ユノは、言い切るなり踵を返すとスタスタと村の方に戻って行く。

 残された俺達は、一息つくと各自で別々の方向に向けて歩き出した。

 背後で、さっそく戦う気まんまんのユリアが放電を始めるのが分かる。

 アルスは、アルスで星刻呪を解放しユリア同様に戦闘態勢をとっている。

 そんなに危険なのだろうか。鋼精というのは……。俺のイメージじゃ、めちゃんこかわええ美少女妖精さんなんだが……違うのか?

 俺は、無言で考えつつ、歩みを進めた。

 その時、

「へぇ。君……武器も構えず、魔法も発動しないなんて……面白いね」

 不意に頭上から、鈴の音のような声が響く。

 顔を上げた俺は、木の枝に腰掛ける少女を見た。

 明るい紫色の瞳に青みを帯びた黒髪のロングヘアー。美しい顔つきに口元からは、チロリと犬歯が見えている。すらりとした体つきに白い肌。ワンピース風の衣服を纏い、素足。幼く見えるが、口調と雰囲気からその年齢は分からない。

 間違いなく鋼精だ。

 俺は、ニヤリと笑いを漏らす。

「へへぇー。そりゃ奇遇だな。……今、俺も、あんたが面白そうだって思ったとこでなぁ!」

 それを聞くなり、彼女が嬉しげな笑みを浮かべ飛び交ったきた。

 俺は、素早く拳を握るとハーフバーストの力で打ち出す。


「君の力を見せておくれよ! 少年!」

「言われずともっ!!!」


 俺の拳と、彼女の手のひらが交差する。

 俺は、なんの躊躇いなくその拳を振り抜いた。



 まぁ剣作るだけで終わることはありませんので、安心してくださいw

 最近ブックマークしてくださる方が多いこと、とてもうれしく思います!

 本当にありがとうございます!! 頑張ってもっと書きます!!

 次回は、バトルからですねww 楽しみにしておいてください!!

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