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十一章「女騎士はかわいいけど、好みでは無い」

 久々の投稿ですね。キャラクターのイラストをTwitter上に上げてますので、見てください(^w^)

 俺は、焦っていた。とても強い危機感的な感覚と共に頬をつたう冷や汗。

 理由は簡単。


―話が重い―


 アルスの叫んだ一言「私の母は、ガルグイユ・クレストに殺された!」が、俺の精神にグイグイ食い込む。

 あれぇ? おかしな。おパンツ騒動からのバトル開始だったはずが、いつの間にか私情剥き出し、恨み晴らすぜばっち来いになってやがる。しかも、アルファスもノリノリで「何だと!?」とか言ってやがる。やめてくれ。話聞いたら更に重くなる。

 おかしなぁ。俺の予定だったら、純粋に悪者ぶっ飛ばして、牢にいる美少女(妄想)を助け出して、「今夜は寝かさないぜ」とか言って、俺のピンク色タイムが始まるはずだったんだが…………。こんなに重い展開にバトル一択の話とか、誰得やねん! 疲れたわ! つぅか、さっきのエルフ早よ出さんかいっ!!


 俺は、そんなことを内心で叫びつつ白目でアルスの様子を窺う。

 アルファスに説明を求められたアルスは、決心したかのように真っ直ぐにこちらを見つめ、口をひら――――――――――――――――。

「かせない!」

 そう言った俺は、全身に力を込め、一瞬にしてアルスの正面に立つ。

 目を剥くアルス。

 俺は、パワーをハーフバーストに切り替えると、躊躇いなく彼女の腹部に拳を入れた。

 吹き飛ばすわけではなく、ズッシリと体に響くような一撃に彼女の鎧は一瞬にして粉々に砕け散る。

 俺は、半裸になり驚愕するアルスに言った。


「わりぃ。こういうのダルいから、文句あるなら今度ギルドに来てくれ」


 俺は、そのまま下着姿で赤面する彼女とすれ違い、魔王城に向けて歩きだした。

 一瞬の決着と気の抜けた発言に、アルファスが絶句する。

 プルプルと羞恥に震えるアルスは、その場にしゃがみこんでしまう。

 そんな二人に俺は言った。

「あのさ。今日中に決着つけようって考えてんの俺だけか? もう日が暮れたぞ? 夜明けまでやるつもりかよアルファス。こういうのはな、どうせ勘違いオチが見えてんだから無視! 分かったか? いくぞ!」

 俺の言葉にアルファスは、我に返ると「え? かっ勘違いオチ?」とか、ゴニョゴニョ呟きながら足早に俺について来る。

 すると、

「まっ! 待て!」

 不意にアルスが叫ぶ。

 振り返ろうとした俺に「みっ見るなっ」と悲鳴まじりに怒鳴るアルス。

 仕方なく振り返らず待っていると、アルスが小さな声で言った。

「か……勘違いじゃない……もん。お母さんは――――」

「アルファス行こうぜ! 長くなりそうだ」

「聞いてよぉおおおおおおお!!!!!!!!!」

 泣き声をあげるアルス。

 俺は、ため息をつくと優しい声で言ってやる。

「まぁ。暇あったら、聞いてやるから待ってな。でもワリィ。俺、女騎士とエルフ美女なら、エルフ選ぶんだわ」

「へ?」

 俺の謎発言に彼女が拍子抜けたような声を漏らす。

 どうしたものかと、俺とアルスを交互にみるアルファスに目配せし、俺は歩きだす。……って、アルファスてめぇ今アルスの半裸めっちゃ見てたろ? 俺もじっくり見たくて仕方なかったんだぞコラ! あとで、しっかり話聞かせろ! あ。でもパンツについてはいいっす。さっきウザいくらい見たんで。上とか上とか! 上とか!!!

 その時、泣き声に混じりアルスの魔法詠唱が聞こえる。

「星剣撃!」

「しつこーい!!!!」

 叫ぶなり、俺は振り返ると、迫り来る光の超大型剣を見た。もちろんバッチリ半裸のアルスを見ることも忘れない。

 俺は、拳に力を集中させる。

 あの超大剣、帯びる魔力からしてヤケ起こしたアルスの渾身の一撃。ならば……いや、だからこそと言うべきか、正面から打ち崩してやるたくなるぜ!


「ハーフバースト! オーバー20%!! 大絶拳!!!!!」


 力を肉体の一点に集中させることで半減する力を、無理やりに引き上げるオーバー20%技。即興にしてはいける! かますぜえええ!!

 俺の拳が空間を殴り、激しい衝撃波と突風を巻き起こす。その力は、超大剣に接触すると共に大剣を消し飛ばし、術者であるアルスの真横を通過した。

 アルスは驚きのあまり口を開け、通過した高出力パワーを確認し、その被害を目の当たりにするなり恐怖のあまりパタリとその場に倒れてしまった。

 被害は、一言で説明すると「島が欠けた」だ。オーバー20%、たったの20%で島が欠けてしまうとは…………。やっぱりチート過ぎるなコレ。下手すりゃ魔王もワンパンでどうにかなるんじゃ無かろうか?

「……コウヤ。今の当たってたら洒落ならんことなってたぞ?」

 引きつった顔でそう言うアルファスに、俺はHAHAHAと軽い調子で笑って見せる。

「当てねーよ。気をつけてたし。でもまぁ。魔王には当てるな、今のを何発も」

 言った最後にニヤリと悪そうな笑みを見せた俺に、アルファスの引きつった顔が青ざめ固まる。多分想像したのかな? グロいね。うん。そんなことしたら、マミるどころじゃねーよな。

 俺も苦笑いを浮かべると、自らのローブを脱ぐ。

 そして、泡を吹いて気絶しているアルスにそのローブをかけてやる。正直、目の前に半裸で気絶した美女がいたら、そりゃまぁ悶々としちゃうもんですが、俺は例え思っても行動には移さないスーパー紳士。膂力同様に強力な自制心でなんとか欲望を押さえ込む。それに気絶してる間にアレコレしても楽しくない。なんつぅか、どうせなら「ひどいことするんでしょ! エロ同人みたいにっ!!」とか、言って欲しい。なんなら言わせたい。アホか。

 俺達は、なんとも呆気ない決着に無言のままその場を立ち去った。



×××



「あら? 全部やられたわね」

 女の呟きに、居眠りしていた魔王は目を覚ます。

「ホラな。オチは知らねーが、ガキが勝つって言ったろ?」

 ヘラヘラと笑う魔王に、彼女はため息をつく。

「最初は、五年もかけて集めたーとか言って自信満々だったのに…………本当はやられるの分かってたのね?」

「そりゃそうだろ? 負けると分かってるからこそ、捨て駒は捨て駒らしく派手にぶつけてやるんだよ。なんたって五年もかけて集めた精鋭だ。それは激しくぶち当たってくれるさ」

「でも、内二人は、ほぼ一発か二発で決着ついてるみたいよ?」

「転生者なら、そんなもんだろ? お前が例外なだけで、俺やガキみたいに大概の転生者が、基本的に戦闘特化型のチート起こしてるもんだ」

 そう呟いた魔王は、欠伸を漏らす。

「と言っても、まだ数人しか会ったことねーんだがな……」

「どうせ会ったところで、殺すんでしょ?」

「まぁな」

 彼女のあきれ混じりの言葉に、魔王は適当に返すとゆっくりと立ち上がった。


「来たっ!」


 突然、魔王が喜び溢れんばかりの声でそう叫ぶ。


 その直後、


「魔王はぁぁあああ!!!! どこだあああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 場内に響く少年の声と激しい爆音、そして使い魔達の悲鳴。爆音がなる度に城が地響きをたてて揺れる。

 そして、その音は、だんだんと近づいて来て――――――


「ここかぁあああああああ!!!」

 

 壁ごと吹き飛ばされ、こちらに飛んでくる扉を、魔王は[破壊]と文字を書くことで粉砕する。

「ユキエ。下がっていろ」

 魔王は、そう言って女を下がらせると一歩前に出た。

「お前が……魔王か?」

 土埃の舞うフロアに少年の声が響く。

 刹那。

 その土埃が一瞬にして払われ、フロアに一人の少年が現れた。

 黒い髪に真っ直ぐで強い眼差しを放つ瞳、黒を貴重とした魔導師の衣服を身に纏う。その右手甲にはガルグイユ・クレストの証である龍の顎をモチーフとした紋章が刻まれている。武器は無く、拳を握っていることから、完全な近接格闘系スタイルだと理解できた。

 真っ直ぐにこちらを見る少年に、魔王は興奮剥き出しの笑みを浮かべ答えた。


「そうだ! 俺が魔王だ! 待ってたぜ転生者!! その威勢もろとも消し炭の如く消し殺してやるぜぇえええ!!!!!!」



×××



 アルファスは、荒れた城内で一人戦っていた。

 先行したコウヤを見失ってから数分、先に進めば進むほど上級種の使い魔モンスターの死骸が増えてくる。そのほとんどに拳型の穴があいていることから、倒したのはコウヤなのだろう。

 結局合流出来なかったが、ユリアやフラックのことも気になる。あの二人だから、負けることは無いだろうが、城に来なかったとこをみるにそれなりの痛手を負っているのかもしれない。

 アルファスは、火炎の鞭で襲い来るモンスターを引き裂くと、先を急ぐ。

 その時、

「待てよぅ。アルファスぅ」

 間延びしたセリフと共にアルファスの周囲に火炎の壁が出現した。

 アルファスは振り返ると、そこに立つストルクを見た。

 先ほどのコウヤの一撃でかなりのダメージを受けているようで、咳き込む度に血を吐き出している。

「……やめろストルク。もぅ。お前は戦えねーよ」

 静かにそう言ったアルファスに、ストルクは歯噛みする。

「んなことぁ関係ない。魔力はある。お前を葬るまで、俺の炎は消えねぇんだ」

「てめぇは師匠だけじゃなく俺まで消すのか……何故だ? なんで俺達に固執する」

 すると、ストルクは血を吐き捨てると怒鳴るように言う。

「気にいらねぇんだよっ!! 正論並べるサイラも、それに共感して馬鹿みたいに正義面してるお前も! 炎は破壊だ! 壊してなんぼだろ? なに正論化してんだ! 奴の魔法なんざ、クソ食らえってんだよ!!!」

 アルファスは、ため息をついた。

「…………くだらないな。馬鹿はお前だストルク。お前は、昔から師匠の話をまるで聞いちゃいなかった。魔法だけ覚えて知った気になって。……師匠はな。炎の素晴らしさだけじゃなく、その悪性についても教えてくれた。話も聞かず、それを否定するとは、馬鹿以外の何ものでもねーぜ!!! 違うか?」

 その一言にストルクが激昂する。

「さっきのガキが来なけりゃ死んでた奴が、調子乗ってんじゃねぇぇぇよぉおお!!!」

 吼えるストルクは火炎の剣を構えると、アルファス目掛けて切りかかってきた。

 しかし、

「炎皇魔力源、解放」

 アルファスが詠唱した直後、突然にストルクの火炎剣が暴れ出し、ストルクを斬りつけた。

「があああ!!!」

 声をあげ、のた打ちまわるストルク。

 アルファスは全身から、高濃度の異質な魔力を放ち、ゆっくりとストルクに近づいて行く。

「なっ何だ? その魔力っ、その力!?」

 悲鳴混じりのストルクにアルファスは、低い声音で答えた。

「師匠が俺に残した炎武装魔法の真髄にして、師匠の真の力だ。…………生憎、裏切り者には継承されなかったようだがな」

 皮肉たっぷりの発言に、ストルクが歯ぎしりする。

 アルファスは、言った。


「さぁ。決着つけよう。ストルク! てめぇの炎を俺の炎で焼き尽くしてやる!!!」




 次回、魔王戦ラストバトル始まりますよー(笑) ガチガチのバトルかと思いきや、……あれ?


 次回もよろしくお願いします!(≧∇≦)

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