秘めた恋心
普段は目覚ましの音で目が覚めるのだが、今日は違った。体に重量を感じたのだ。読者諸君、目覚ましに起こされる不快さはご存知だろう。今はそれとまた違った不快さを体験している最中だ。なぜか?目を開けたと同時にシルフィーが馬乗りになっていたからだ。
「大輝さんって以外に立派なんですね〜。」
感心したように言うバカ天使。毎朝の生理現象だ。分からない女性諸君は永遠の謎として胸に閉まっていて頂きたい。それよりも……このバカ天使を殴り飛ばしたい。
「どけ、今は最高に不機嫌だ。」
人外の低温で警告したのにはさすがのバカ天使でも恐怖しただろう。「悪魔みたいです。」と言いながら素直におりた。
「起こして貰うには非常にありがたいのだが今度同じ事をしてみろ。お仕置きだぞ。」
昨日、作者の泣き声を聞いていたのだろう。顔が引きつってブルブルと震え始めた。ちなみに何をしたのかは一切秘密だ。作者にでも聞いてくれ。
「朝ご飯出来てますよ。」
引きつった笑みも良い物だと一人笑っていると、いつの間にかシルフィーはいなくなっていた。俺はさっさと着替えをすましてリビングに向かう。と、コーンスープとトーストが準備され美味そうな湯気をあげている。普段はパンをそのまま口に放り込んで済ますので、こういったまともな朝食は非常にありがたい。
「お前、料理できたんだな。」
「インスタントです。それにトースターにパンを放り込んだだけです。」
まだ怖がっているのかきっちの片隅から声がした。
「準備してくれるだけでもありがたい。」
取りあえず礼を言い、黙々と喰う俺をジーッと見つめ続けるシルフィー。じつに喰いづらい。
「俺の顔になにか付いてるか?」
顔を見つめ続けるなと言う意図が含まれていることをシルフィーは理解してくれただろうか?
「美味しそうでなによりです。」
と幸せそうに言われては、訂正する気も失せた。
食器を片づけ時計を見ると大変ヤバイ時刻。俺は神速でカバンを取り、シルフィーを家に閉じこめるようにして施錠。後は神速で学校へ向かうだけ。ふと振り返るとニコニコ笑顔のシルフィーちゃん。激しくイヤな予感がした。
「私も学校へいきます。」
「却下じゃボケ!!」
シルフィーの姿を教師共に見られたら俺はなんて言い訳すればいいんだ?
「大輝さん以外の人間には見えないようにしておきますので大丈夫です。」
時間がないと言うことも助長して承認してしまった。ハハハ……情けない。それでもなんとか遅刻せずに学校へ着いた俺は神速の走りをした副作用で全身から水蒸気を放出し、文字通り死んでいた。シルフィーはといえば人に当たらないよう、器用に動きながらちょこまかと教室を走り回って楽しそうだった。このまま何も起こらず一日が終われば、と祈る矢先。
「大輝さんの担任ってハゲですよね?」
と俺の耳元で囁いてきた。不幸中の幸い、一番後ろで窓際という特等席にいたお陰で周囲の奴らに聞かれることは無かった。
「あれはカツラと言って頭に乗せる飾り物だ。」
一応、人間ではないので丁寧に教えておく。
「そうですか…。少し窓を開けて貰えませんか?」
何がしたいのか理解できなかった俺は下手に騒がれては困るので素直に窓を開けた。
ゴアッと突風が入り担任のカツラが……。嗚呼、悲しいかな、三月には定年を迎えようとしている担任はトラウマ並の悲劇。今まで一生懸命隠し通してきた”ハゲ”をクラス全員に見られてた。…教室の状況はご想像にお任せしよう。
王道とは言え、やってくれたなと思わずにはいられなかった。当の本人は床をのたうち回っている。俺は開放した窓をそっと閉めて、無表情に前を向く。担任は顔を恥ずかしさのあまり真っ赤にしてカツラを片手に飛び出した。
「昨日はよくも僕を置いて行ってくれたね。」
先ほどの件で涙目になりながらも鬼のような形相をしている友樹。素晴らしく滑稽だ。
「約束は果たしたはずだが?」
「それはそうだけど…。親友を見捨てるのかい?」
「俺には友人はいない。お前は単なる知り合いだ。」
「知り合いでも良いから助けて欲しかったよ。おかげでまた携帯変えなくちゃならなくなったんだからね!」
「本当に残念に思う。(棒読み)」
「どうせ本心からじゃないでしょ?」
「当然だ。」
友樹の奴め、盛大に溜息をついていきやがった。他人なんだから当たり前だろう?
「大輝さんにも親友がいたんですねぇ。」
問題を引き起こしてくれたバカ天使は眼をキラキラさせてやがる。
「さっきも言っただろ?アイツは昔からの知り合いであって他人である、からにして親友ではない。それに俺みたいな奴に誰も近寄ろうとはしないだろう?」
「客観的に見たら、そう言うのって特異な親友って言うと思うんですけど…。」
「失礼な奴だな俺は…。」
前話の様な失敗を侵さないようにと周囲に注意を払いっていたおかげで委員長の接近に気が付いた。
「林くん、一人で何か言うのはやめた方が良いわよ。大森くんとの関係は良く分かったから。」
どうやら俺だけの声が聞こえていたらしい。干渉してくる委員長を華麗に無視して1時間目の準備をする。
「ハァ、また無視?大森くんにはちゃんと話すのに…。」
やれやれと言いたげな表情で見下ろす委員長にむかついたが、過去の失敗を繰り返さないように我慢。
何言わない俺に飽きたのか溜息一つ残して去っていった。シルフィーはなにやらニヤニヤしながら手帳に書き込んでいる。とんでもなく恐ろしい事が起こりそうなキガして鳥肌が立った。
「何をかいているんだ?」
厳重に周囲を観察しながら俺は問うた。
「大輝さんって委員長のこと、好きなんでしょ?!」
「ハァ?!」
突然の問題発言に取り乱してしまった。結果、数人のクラスメートに俺の声を聞かれてしまった。
「絶対そうに決まってます!!私、シルフィリアは全身全霊をもってこの悩みを解決します!!」
一人、決意に燃えるバカ天使を放置して俺は授業が始まるのを待った。
〜委員長こと青木 優奈、視点〜
私は密かな恋心を抱いている。ふんだんは無表情で無愛想で冷血漢で、クラスのみんなとの団体行動なんて絶対にしないけど、裏で色々支えてくれてる。文化祭の時だってみんな早々に帰ってしまったのに大森くんと二人で準備を手伝ってくれた。他の女の子はおもしろくて明るい大森くんが好きって言うけれど、私は林くんが好きだ。
先金、私は自分の気持ちに気づいて、毎朝林くんに声を掛けて居るんだけど当の本人は無視を決め込んで返事をしてくれない。一応、男子から数回告白されてて自分の容姿にはそれなりの自信があったんだけどな……。でもwたしは絶対続けていつか必ず、この思いを告げるんだから!!
「…員長!!委員長ってば!!」
「あっごめん。ボーッとして気づかなかった。」
「大輝の観察も良いけど、もっと周囲に気を配った方が良いよ。」
「そんな…観察だなんて…。」
うわぁ〜…今絶対に顔を紅くなってるよ。大森くんのバカバカバカ!
「委員長が大輝のこと好きって分かるよ。何人もそういう子、見てきたし。それと一つ忠告。アイツはかなり鈍感だから積極的に行かないと気づいて貰えないよ?」
「うん…、私に…出来るかな?今までこんな想いしたことなかったから…。」
「大丈夫だよ〜。委員長が努力を続けていたら絶対にアイツは変わるから。どんなことがあっても優しい愛で包んでやってね。それじゃ、僕はこれで。」
「大森くん。」
「…ん?」
「その…ありがとう。」
なぜきあ一時間目の授業は始まるって言うのに教室から彼は出て行った。でも、大森くんに私の気持ちを知って貰えてよかったな。私を応援してくれるらしいから、何気なく私の気持ちを伝えてくれるかも?彼がwたしのキューピット?!神様ありがとう。
ん?さっき出て行ったばかりなのにいつ席に戻ったんだろう?ま、いいか。
今日は特別に下書きが進んだので更新しました。
普段は週末に更新します。
下書きが完結すれば、頻度もあがると思いますので期待していて下さい。