死神と悪魔の出会いの軌跡
モンスターハンターズ本拠地襲撃事件。まるでトップ3がいなくなるのを見計らっていたかのようなタイミングの襲撃。私を含むランキング4~10位のメンバーは外套を纏った者達と対峙する。その瞬間私は悟った。勝てないと。私達は恐らくいとも簡単に殺されるだろう。私は防犯カメラの存在に気付き、私達が全滅する様子が世間に流れる事のないように、カメラを破壊した。それと同じくして他のメンバーが外套の者達に攻撃を仕掛けていた。戦ったら駄目だ。私の本能がそう告げていた。私はメンバーを囮にするかのように、その場から全力で走り去った。
それから三日が過ぎた。私は戦士でありながら戦いを放棄し逃げた。そんな私を外套の者達は見過ごし追って来なかった。
「もう……私は戦えない」
涙が溢れた。悔しかった、情けなかった。私は一人ぼっちで森に隠れてこれから生きていく。私の顔は世界に知られているし、逃げて生きている事が知られたらきっと、今世間に賑わせている悪魔と同じように私も世界から消滅させようと動き始めるだろう。だから人から隠れて生き――。
「あーみーつけたー」
突如、草の茂みから一番小さな外套の者が現れた。
「ひっ!」
私は小さく叫び、尻餅をつく。なんでここに? いや、どうして私を探して?
「駄目だよー。キミも殺すリストに入っているんだから逃げちゃさー。探すのに苦労しちゃったよー」
そう言いながら外套の者は手品なのか、何もない宙から巨大な鎌を取り出した。
「首を刈って終わりにしようー。うん、そうしようー」
鎌を回転させながら外套の者が近づいてくる。このまま私は殺されるの?
嫌だ、死にたくない。だったらどうすればいい? 戦うしかないじゃないっ!
「おー?」
私は立ち上がり、すぐに戦闘態勢に入る。私はモンスターハンターズ世界ランキング四位の只野 林! 相手はたったの一人。絶対に勝てない相手では――。
「あははー無理無理ー」
「なっ!」
しっかりと相手を見据えていた筈が、瞬間移動でもしたかのように消え私の懐に外套の者は現れ、鎌の柄の部分で私の腹部を強く突いた。
「うげぇっ!」
私は胃の物を吐き散らしながら吹き飛んだ。そして背中から強く巨木に衝突する。一瞬意識が飛ぶ。駄目だ。勝てない。もう、殺される。
「いやー派手に吹っ飛んだねー。おもしろーい。あははっ。もう身動き取れないでしょー。じゃ、今度こそ首刈っちゃおうねー」
死神、私には外套の者がそう見えた。鎌が振り上げられ、そして私の頸元目掛けて――寸前で止まった。私と鎌との間に一人の男が立っていた。
「……嘘でしょ」
私はその男を知っていた。いや、私だけじゃない。この男を知らない人間なんてこの世に存在しない。何故なら私の目の前に現れたのは――。
「いやー探すのに苦労したわー。外套の者、俺の名誉の為に死んでくれ」
世界を滅ぼす悪魔だった。
つづく