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命(アニマ)の声が聴こえる  作者: 和本明子


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15 町興し進捗報告会

   15


 今後の方針と対応方法が決まってから、三日後のお昼過ぎ――第二会議室で町興し進捗報告会が開かれた。各自の町興しプロジェクトの進捗状況を報告し、幸一は有名キャラクターの版権許諾が降りなかったことを説明していた。


「なるほど、やはり有名マンガとかのキャラクターの使用許可は降りなかった訳ですか……」


 稲尾が残念がる言葉を投げ掛けると、


「おいおい。既に予算は降りているというのに」

「これで中止になったら……」

「そもそも、やはりこの企画自体が……」


と外野が騒ぎ出したが、稲尾は静かに口を開く。


「いえいえ、この程度のことは想定内ですよ」


 想定内……その言葉に、幸一たちは稲尾の奥深さを感じ取ってしまった。確かに最初の会議で、稲尾が幸一に注意を投げかけていたことではあるが、手の平で踊らされているようだった。


「私も前職の仕事をしていた時に、似たようなことを経験しましたからね。それで、これからどうするのですか?」


「はい。既存の有名作品とかのキャラクターの使用許可が難しい状況ですので、代案として、有名な漫画家やイラストデザイナーに伊河市をモデルやモチーフにしたキャラクターイラストを描いて貰おうかと思っています」


 稲尾が「ほう」と唸った。


「直接イラストレーターに依頼することで、出版関係の使用許諾の問題をクリアすることが出来ますし、受諾が容易であると考えています」


「なるほど、そう来ましたか。それで、どんなイラストレーターにお願いするつもりですか?」


「それはまだ未定で、選定中です。出来る限り著名なイラストレーターにやって貰いたいとは考えていますが、如何せん予算の問題がありますので、それ相応の方になると思います」


「そうですか。まぁ、そうですね……。それで気になる点があるとしたら、注目度とかの低下が否めないですね。そこら辺は何か考えていますか?」


「えっ? あ、いえ……」


 稲尾のピンポイントな指摘に、幸一は上手く答えられなかった。

 確かに、著名なキャラクターを使用するから、その分注目度があり、それが町興しに繋がってくる。しかし、その注目が無くなってしまえば、キャラクターを起用する町興しのメリットは無くなる。


「その辺りも考慮していれば良かったのですが……。まぁ、仕方はありませんね」


 事業を成すためには、事前にある程度の不都合なことを想定して、その対応策を講じておかなければならない。それを稲尾がサラリーマン時代に経験したことである。

 幸一にはそれの経験が不足しているということは否めないと承知しての発言であった。


「ただ、イラストレーターを起用して、オリジナルなキャラクター……。いわゆる、マスコットキャラクターを作成しても、それだけでは他の所でもやっていますし、さっきも言った通り、注目度の低下は否めません。その辺りを補う対処案が欲しい所ですね」


 理路整然とした意見に、幸一はぐうの音も出なかった。

 ただ、イラストレーターを起用し、オリジナルキャラクターを作成するという方向性は反対されてはいない。要は、その注目度を解決する対処案が必要なのだ。

 その他にはキャラクターの使用方法について指摘が入った。


「今のところ、市役所のサイトやパンフレットに掲載する方向ですが、それだけでは弱いですね。もっとキャラクターを活用した……コンテンツを新たに考える必要がありますね」


 稲尾からの新たな課題を命じられた。

 そして伊河市のキャラクターのお披露目は、来年の四月に開催される湯乃花祭り付近で公開するということが決められて、進捗報告会は終わった。

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