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命(アニマ)の声が聴こえる  作者: 和本明子


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12 「やっぱりドラえもんとかですかね?」

   12


 町興し会議が終わった早々に、稲尾市長の命令通りに村尾は、幸一が発案した『伊河市キャラクター町興し』のプロジェクトチームを結成することにした。


 メンバーは、発案者の幸一を始めに、飯島薫、平岡博史の三人で行うことになった。


 平岡は、今年で三十二歳。幸一の先輩にあたる。普段は事務を担当しており、主にメールなどの問い合わせについての返答や、幸一や薫がまとめた観光スポットや市民や観光客の苦情などを管理している。


 髪がうっすらと地肌が見え、メタボリックのお腹がぽっこりと出ていた。平岡は言葉が詰まって話すことがあるので裏方の方に徹しているのであった。


 そして、幸一と同じく『定年だよ退職者全員集合』の企画案が通った薫が何故かチームに組み込まれていた。その理由は、企画が年寄り向けなので、若者の薫よりも歳の近い人に任せた方が良いという事で、薫の企画は他の観光課の職員に任せられることになり、幸一のチームに入れられたのだった。これに当の本人は、


「む~、なんか納得いかないですよ。私が考えた企画だったのに~」


「まぁまぁ。飯島さんは、まだ入ってきたばかりだからね……。それに、ベテランの富沢さん達に任せた方が良いのもあったんじゃないかな」


「私が経験足らずの青二才なのは解ってますけど、だからこそこういう所で経験を積ませるということもしてくれても良いのに!」


「まぁまぁ。だけど、自分にとっては飯島さんが自分のチームに入ってくれて良かったよ」


「え、先輩。それって……」


「飯島さんは、観光課で一番歳が若いし、それに今回の企画には女性の意見も必要だしね」


「あ、ああ。そ、そうですよね……」


 二人が仲良く話しているのを裂くように、平岡がふっくらしたお腹を突き差して間に立った。


「あ、あの、高野くん、飯島さん」


「うわっ。ひ、平岡さん! な、なんですか? いつから、そこに?」


「さっきからだけど。それで、何をすれば良いのかな。もう時間になったし」


 時間を確認すると、午後四時を過ぎていた。今回の町興しの業務時間として、午後四時からの二時間を設けられた。毎日、この時間は他の業務と共に町興しの業務を行うことになった。


「そ、そうですね。今週は、まずは各々使用したいキャラクターを抜粋して、そのキャラクターの版権元の出版社へと電話して、使用確認をとってくれませんか?」


「やっぱりドラえもんとかですかね?」


「そこらへんが使えれば良いけどね。まずはキャラクターと出版社を調べて、あとでまとめて確認を取ろう」


「了解です!」


 薫は若々しく声をあげ、平岡は静かに頷き、自分の机に戻っていった。


「よし。まずは……」


 幸一は腕を捲し立て、気合を入れて取りかかった。


 一週間後―――


「あ、はい、わかりました。いえいえ、突然のお願いですみませんでした。はい。それでは、失礼いたします」


 薫は力無い声と共に、脱力したその手で受話器をそっと置いて、一息吐いた。


「どこもダメでしたね……」


 隣の席に座り、薫の様子を伺っていた幸一に報告した。


「そうか……。平岡さんの方は、どうでしたか」


 頭皮の隙間がチラチラと見える頭を上げ、静かに首を横に振った。


「ダメでしたか……」


「高野先輩は? って、訊かなくてもイイですよね」


「まぁね……」


 幸一も他の二人と同じ結果だった。版権許諾は、まさかの全滅だったのである。


「どこか一社ぐらい使用許可が降りると思ったんですけどね」


 薫が幸一の気持ちを代弁するように言葉を漏らす。


「面白いとか乗り気だったとかもあったけど、やっぱり金銭面の方で引掛った所が大きいね」


「そうですね。版権使用料とかの話しになると、声がトーンダウンするところもあったし。安すぎるんですよ」


「とは言っても、与えられた予算はこれだけだからね。これ以上の上積みは出来ないって、釘は刺されているし……。さて、どうするか……」


 著名なキャラクターを使用した町興しに暗雲が立ち込めてしまってきている。出版社の方針が変わって、使用許可が降りる可能性を期待するよりは、もう一つの“案”を実行した方が良いのではないかと、判断に問われている。


 ただ、それがどうしたら良いのかの指針が幸一の中に有る訳ではなかった。そこで、何かを決心したかのを表すように、勢い良く席を立つ。


「あれ。高野先輩、何処に行くんですか?」


「ちょっと、手洗いに」


 その答えに少し照れた薫に見送られながら、足早に観光課を出て行ったのであった。


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