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魔王に再び挑みたい!  作者: kiruhi
Level.1の呪い
8/77

【02】

 あれから一ヶ月経った……

 依頼を沢山こなしたお陰で俺のランクは、FからEランクへとランクアップした。


 嬉しい事なんだが、Levelは相変わらず[1]のままだった。


 はぁ……なんでだろう……


 俺は今、冒険者ギルドの酒場にいる。

 ウォルガフはムシャムシャと昼ごはんを食べていた。

 落ち込んでいる俺を気にも留めないで……


 お子ちゃまはいいよな……気楽で……


「おいちぃでちゅね!! リュウイたん!!」

「あぁ……そうだな……」


 この一ヶ月間。俺がやった事と言えば、依頼とウォルガフの食事の用意……

 Levelは上がらなかったけど、ランクアップとお金は溜まるから依頼はまぁいいさっ……


 問題は、ウォルガフの食事だ……

 毎晩、銀貨五十枚から三十枚かかり更に宿屋代……

 結構バカにならない。


 だから、俺のマイホームを復活させようと思った!

 建物キットがあればマイホームは、再び活用できる。


 しかし、建物キットは倉庫の中だ……

 倉庫とはゲームの時代の時に、使わないアイテム……

 いわゆる不要アイテム等は、倉庫と言う名のN P Cノンプレイヤーキャクターに渡せば無料で預かっていてくれるシステムなのだが……

 この世界にはNPCすら存在していなかった。


 はてさて、どうするかな……?


「何を悩んでいるのでちゅか?」

「んっあぁ……そろそろ宿屋暮らしは、辞めようかなと思って」

「えぇぇぇぇぇぇ〜フカフカのベットォォォォ」

「……お金はまだあるけどさっ、折角土地があるんだ。有効に使おうよ」

「と言いまちゅと?」

「ウォルガフは、建物キットある?」

「ないでちゅ」


 だよねぇ〜何も持たずに転生したと言っていたし……

 となると……


「俺たちで作るしかないかな?」

「家をでちゅか!?」

「うんうん」

「やるっ! 手伝うでちゅ!!」

「よし、じゃまずどんな家がいいかな?」

「うんとねぇ〜」


「お菓子(かちぃ)の家!!」

 ウォルガフ、俺の期待を裏切らないでくれてありがとう……

「却下……」

「えぇ〜なんででちゅか……」

「お菓子の家は、ウォルガフが食べてなくなるから、ダメ。それよりも、頑丈ないい家を建てたいな」

「ふみゅふみゅ……お菓子(かちぃ)の家……」

「大工さんの知り合いいない?」

「いるでちゅよ?」

「まじっ!?」

「この街にいまちゅから、案内しまちゅね」

「おうっ」


 冒険者ギルドを後にした俺は、ウォルガフが知っている大工の元へと向かうのであった。


「お菓子(かちぃ)の家〜お菓子(かちぃ)の家〜」


 だから、お菓子の家は作らないって………


 ウォルガフの後をついて行く事、十分。

 街外れの木に囲まれた木造の一軒家にたどり着いた。

 家の周りには木材が山積みになって道具が散らばっており、その奥には洞窟もありそうだ。


「おっじゃまちぃま〜っちゅ!!」

「帰れ!」

「!?」


 いきなりですか!


 と思ったら、どうやら先客がいたようだ。

 奥の方にいるのは、ドワーフ族だろう。

 ドワーフ族の特徴的でもある、背が低く、手足が短く、鍛え抜かれた筋肉で覆われている。

 そして、口元には豊かな白ひげもある。

 間違いないだろう。


 俺たちの目の前にいる男は部下を五人ほど引き連れている狐目の男で、耳がとんがっている所から見るにエルフ族だろう……


「そんなこと言わずに……跡取り息子が行方不明なんでしょ? ドワーフの旦那」

「だからと言ってお前たちの手を借りるつもりはない!!」

「そんなこと言わずに、我々にも仕事請け負わせて下さいよ?」

「帰れっ!!」

「まぁ、今日の所はこれで帰りますが、ドワーフの旦那、真剣に考えてくださいね」


 狐目をした男は、そう言い部下を連れてゾロゾロと帰って行くのであった。


 なんだぁ??


「ドワーフのおじちゃん!」

「あぁっん??」

 ウォルガフではなく、俺と目が合ってしまう。

「なんだ、お前は?」

「えっと………」


「こっちでちゅ」

 ドワーフのズボンの裾を引っ張りながらウォルガフは、そう言っていた。

「なんだ、ウォルガフか? 珍しいな、こんな所に来るなんて? 飯ならないぞ?」


 ご飯食べさせてもらっていたのか……


「違うでちゅ、今日は仕事の依頼をお願いに来まちぃた」

「??」

「リュウイたん、説明お願いしまちゅ」

「えっ俺かよ!?」


 まず、俺は自己紹介をした。

 どうやら、ドワーフのおじさんはルシュガと言うらしい。


「でっ? 仕事の依頼とは?」

「家を建てて貰いたいのです」

「ほぉ〜」

「お菓子(かちぃ)の家、建てて下ちゃい」


「土地は?」

「あります」

「予算は……?」

「……」

 予算なんて決めてないよ……


「お菓子(かちぃ)の家はぁ?」

「……お菓子の家作るのか?」

「いえ、作らないです………」

「ふむ」

「えぇぇぇぇぇぇ!?」

「予算はまだ決めていないのですが、建てるとしたらどれくらいかかりますか?」

「約金貨一枚だな」


 100Gか……


「材料とかあるのなら、もっと安くできるが?」

「お菓子(かちぃ)の家〜〜」

「ウォルガフ……話進まないから、ちょっとだけシーね」

「シー」


「じゃ、金貨一枚で、お願いします」

「わかった……と言いたいところなんだが………」

「?」

「実は今、それどころじゃないんだ」

「と言いますと?」


 ルシュガの話曰く、一人息子ルシアが家の奥にある洞窟に入ってから一週間……

 一向に出てこないらしい。


 これはあれか……

 助けに行かないと、家は建たないって事か……


「まだ、未熟者だから一階層のみ行くように話していたのだが、更に奥に行ったのかもしれん。

 あのバカ息子は………」


 うん、行けって事だな……


「ウォルガフ」

「……」


 あれ?


 ウォルガフは俺の言いつけを守り、両手で口を抑えていた。

 本人なりにシーしているらしい……


「もう喋ってもいいよ」

「お菓子(かちぃ)の家〜〜」

「……」


「いやいや、そうじゃなくて……ルシュガさんの話し聞いていた?」

「うん! 息子(むちゅこ)さん(ちゃん)が戻って来ないんでちゅよね?」

「そうそう、だから助けに行かないと家は、建たないらしいよ」

「行かないでちゅ」

「へっ? なんでっ?」

「だってお菓子(かちぃ)の家じゃなあんでちゅよね?」

「………」


 ウォルガフの目は物言いたげな、そんな目つきをしていた。

 お菓子の家……

 絶対一晩で食べ尽くしそうだな……


「お菓子の家じゃないとダメなのか?」

「……うんでちゅ」

「しゃあないな……お菓子の家でいいよ……」


 どれだけメルヘンチックな家になるんだろう……


「ほんとぉ〜??」

「あぁいいよ」

「じゃ息子(むちゅこ)さん(ちゃん)、たちゅけに行きまちゅ!」


「というわけで、ルシュガさん。俺とウォルガフで息子さん助けに行きますね」

「いや……しかし……」


 ルシュガさんの制止を無視して俺たちは行方不明になった息子を探すべく、洞窟の中へと入って行く事にしたのである。




 ◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎



 洞窟内は鉱石も取れるんだろうか?

 道具が至る所に置き去りにされていた。

 取り敢えず、ルシュガさんの予想しているポイントへと向かう事にした。


「お菓子(かちぃ)の家〜、お菓子(かちぃ)の家〜、わ〜い」

 剣を振り回しながら先頭を歩くウォルガフ……

 Level.1の俺一人では、流石に救出は無理なんだろうなぁ〜

 魔法とか早く覚えたいなっ!


 一階層目の洞窟内は、魔物が殆ど出る事はなかった。

 二階層目も、魔物は出てこないが落盤するポイントが多く、それを迂回して進まなければならないらしく、息子さんにはまだ全て教え切れていないので行くなと話していたそうだ。


「どうやら、落盤があったみたいだね……」

「そうみたいでちゅね」

 二階層に降りると、目の前には岩がゴロゴロと行く手を阻んでいた。


 天井からはポロポロと岩粒が落ちてきており、どうやらここも危なさそうだ。

「よいちょっと……」

 そう言いながらウォルガフは、大剣を頭上で振り回し始めた。


「なっ何をする気……?」

「岩を破壊ちぃまちゅ!」

「えっえぇぇぇぇぇぇ!! ここ、落盤しそうなのにか!?」

「大丈夫でちゅ、手加減ちぃまちゅから」


 本当かよっ!?


 ウォルガフの大剣が勢い良く振り下ろされると、剣筋は衝撃波となり岩は粉々に砕って行くのであった。

 そして、跡形もなくなりそこには本来あるべき道が現れたのだ。


 ズズズズズッ……


「………」

「うまくできまちぃたぁ〜」


 ほめてほめてっ? という顔をしながらウォルガフは、俺の方を見てくる。

「えっ……えらいね」

「てへっ。褒められちぃったぁ〜」


 俺たちは、道を塞ぐ岩をウォルガフは難なく破壊しドンドン先に進む事にした。


 ズズズズズッ……


「あっ!」

 先に気がついたのは、ウォルガフだった。

 岩の目の前には、片方の靴だけが落ちていた。

 どうやら、ここで落盤に巻き込まれたらしい。

 しかし、生きているのだろうか?


「リュウイたん……」

「んっ?」

「……お腹ちゅいたぁ〜」


 またかよ!!!


「……」


 目の前にいるかもしれないのに、飯かよ……!!


「食べ物ありまちゅか?」


 ったく……用意して置いてよかったよ。

 宿屋汐音(しおね)特製弁当一つ銅貨50枚……

 以外と高級だよな……


 弁当を五個渡すと、ウォルガフは美味しそうに食べ始めている。

 俺も弁当を広げ一口食べ始めた。


 じとぉ〜〜〜

 口に人差し指をくわえながら、切なそうな、物欲しそうな……そんな目で訴えるウォルガフ。


 ってかもう五個食べ終わったのかよ!!

 早食いは消化に悪いぞ!?


「たっ食べる……?」

「えへっ♪」


 結局、俺の分の弁当もウォルガフの胃の中に入ってしまった。

 次からは、もう少し多く用意しておこ……


 ズズズズズッ……



「お腹いっぱい! 満足でちゅ!!」


 食べ終わったウォルガフは、元気一杯だ。

 岩は塵一つ残さず砕け散って行った。


「さて、息子さんはここらへんかな?」


 ズズズズズッ……


 この音……ウォルガフが岩を壊すたびになっているよな……

 うんっ!

 嫌な予感しかしない……

 さっさと息子さんを見つけて抜け出そう。



「あっ!! いたでちゅ〜!!」

 ウォルガフの指差す方向にはドワーフの子供らしき人影がうっすらと見える。

 薄暗い洞窟内で良く見えるな。


 タタタタタタッと駆け抜けて行くウォルガフの後を、俺も追いかけて行く。


「もちも〜ち? 大丈夫でちゅかぁ〜?」

「………」

 グッタリとして動かずウォルガフの質問に返事をする事はなかった。

 どうやら、気絶しているようだ。


 よくよく見ると息子さんは、大きな岩の間に膝から下まで岩の下敷きになっており抜け出せずにいた。

「よちぃ! 岩壊ちぃまちゅ!」

 パラパラと天井から小さな岩くずが落ちてくる中、そろそろ本気で崩壊しそうだ……

「ウォルガフ、優しくね……?」


 そんな俺の話を、ウォルガフが聞くはずはなかった。


「んっ? なにか言いまちぃたか?」

 もう既に息子さんの上にある岩は粉々に砕け散っていた。

「………いや、もうなんでもない」



「どうやら、両足は折れているけど命には別状ないと思うよ」

「良かったでちゅ〜」

「さてとっ……」

「ああっ!! あぁぁぁぁぁぁ!?」

 俺が、気絶している息子さんを背負おうとすると、何故か残念そうに声を上げるウォルガフ……


「どうした?」

「あのでちゅね?」

「うん?」

「背負いたいでちゅ!」

「はぁぃぃ?」


 背負えるの?? その身体で……?


「なんでちゅか? その目は?」

「いや、大丈夫かな? と思って……」

失敬(ちっけい)なっ! ぼくは、リュウイたんより力ありまちゅよっ!!」


 まぁ、それはそうなんだけど……子供ドワーフとは言え、ウォルガフ……君より大きいよ……?


「ぷっくくくくくっ……」

 やはりそうなるよなぁ〜


 確かに背負う事は出来ている。

 だが、背負っているのか背負わされているのか……

 傍から見たらわからん構造だ……


「よちっ! 出発(ちゅっぱちゅ)でちゅ」

「……」

 ウォルガフの後ろを歩いているのだが……ダメだ、久々にツボに入った……


 ゴロゴロゴロゴロ……

「??」


 やばい!!


 と思った時は既に遅かった。


 大量の岩が、天井から落ちてきたのだ。

 咄嗟にウォルガフは俺を後ろへと蹴り飛ばしてくれた。

 そのお陰で岩の下敷きになる事は回避できた。

 だが、あっという間に俺とウォルガフの間には、岩の壁が出来上がっていた……


「つぅ……いってえ」


「!?」


「リュウイたん、大丈夫でちゅか?」

 岩を挟んで微かにウォルガフの心配している声が聞こえてきた。

「あぁ、大丈夫だ」

「今、たちゅけまちゅね」

「………」


「リュウイたん?」

「あっあぁ……合流するよりも先に息子さんを連れて取り敢えず戻った方がいい」

「どうちてでちゅか?」

「……また落盤が起きそうだ」

「なら、尚更今ちゅぐ……」

「ウォルガフ、俺は大丈夫。息子さんの手当てが先だろう?」

「でも……」

「……大丈夫だから」

「……」


「……わかりまちぃた。すぐ戻りまちゅから待っててくだちゃいね」

「……あぁ」


 タタタタタタッとウォルガフの足音が聞こえなくなって行く……


「ふぅ……ウォルガフ……多分、間に合わないと思うけど、その時は気にするな」


 そもそも、こんな姿ウォルガフに見せられないよな……

 なにが二階層は、魔物が出ないだ……

 大蛇の牙が俺の身体を貫いているじゃないか……

 ローブの『防御力アップX』が、付与されていなかったら一撃死だったな……


 しかし、ただでさえHP10しかないのに……

 それが一つずつがゆっくりと減っていく……

 HPが減って行く中、血の気を失い俺の意識は次第に薄れて行く……


 全く何が強くてニューゲームだったんだろうな……

 ったく責任者に一言、言いたいよ……



 目の前が赤く点滅してきた……

 どうやらHPが3、切ったようだ……


 そんな時……

『システム開放します』

 と、システムメッセージが流れてきた。


「……今更かよ……」


 と独り言を言っていると、血の気の失ったはずの身体に再び力が戻ってきたような?

 ……そんな感覚がしてきた。


 なんだろう……

 力が溢れ出してくる……


 俺の身体貫いている大蛇の牙を、力任せに引き離して行く。


「ぎっぎっ!?」


『ホワイトスネーク』Level.35


 木の杖を構えつつ『ラグナロク(神々の黄昏)』を初めて発動してみた。

 何倍に強化されたのかわからないが、回避不可能の五連撃が木の杖の打撃のみでホワイトスネークに直撃し一撃で葬り去って行く……

 そしてホワイトスネークは消えて行った。


「はぁはぁ……なんだぁ……?」



ラグナロク(神々の黄昏)』を発動した衝撃で、完全に天井に亀裂が入ってしまったようだ。

 硬直時間中で避ける事が出来ない俺に、岩が容赦なく降り注がれて行く。


 湧き出ていた力も底を尽き、地面に倒れこむように俺は意識はそこで途切れ、岩の下敷きになって行くのであった……






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