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魔王に再び挑みたい!  作者: kiruhi
プロローグ
2/77

【02】

 リュウイが教会で復活する前に話しは遡る。


 《剣と魔法と魔王》の世界はバージョンアップした。

 それは間違いなかった。

 一万人程のプレイヤーたちを、ゲームの中に巻き込んだのであった。


 巻き込まれたプレイヤーたちは、四つの都市の一つである『エルギーの街』という場所に集められていた。

 最初は混乱に満ち溢れていた。

「一体これは!?」

「何が、どうなっているんだ!」

「責任者っ出てこい!!」

 等と行った暴動が後を絶たなかった。


 そんな中、

『リュウイは魔王に挑みましたが死亡しました。残りプレイヤー数9999人』


 五分後……

『ハグは魔王に挑みましたが死亡しました。残りプレイヤー数9998人』

 とシステムメッセージが知らせてきたのだ。


 誰もが思った、魔王に挑んだバカな奴らがいた!?

 と……

 それと同時に魔王は公式サイトの情報通り復活した。

 と言う事を、全てのプレイヤーたちは認識する事が出来たのである。




 魔王は確かに復活していた。

 そして、それに応えるかのように魔族四天王も目覚めたのであった。


 魔族四天王とは、言葉の通り四つの種族の魔族の事である。


 力の限り己の肉体を限界までに鍛えられ、その力を発揮し拳や剣を得意とする種族。

『ガルヴァルデ』

 ガルヴァルデは、己の身体を鍛え抜かれているだけあって筋肉質な者たちが殆どである。


 魔法を得意とする種族。

『ムーンサン』

 ムーンサンは、普段からロープに身を包み魔力を蓄えつつ、遠距離からの強力な魔法や回復のエキスパートである。


 召還や遠隔操作、結界を得意とする種族。

『デューンキーパー』

 デューンキーパーは、ムーンサンと違い自らは攻撃する事はない。

 だが、杖を使い魔法陣を描きながら魔王軍を召還したり、物を操りぶつけ合い事が出来、結界を形成したり、破壊する事が出来る。


 三つの種族を極めし種族。

『フォス』

 フォスは魔王の遊び心で誕生した種族と言われている。

 フォスはガルヴァルデ、ムーンサン、デューンキーパーの長所を全て引き継いている。

 万能なように見える能力も一つだけ欠点があった。

 それは、身長が二頭身である事、大体三歳児ぐらいだ。

 そして、これ以上伸びる事はなかった……

 身体が小さいという理由で、いかに最強種族に思われても他の種族たちにその実力は認めてもらえず、常にバカにされ続けられていた。



 復活した魔族四天王により《剣と魔法と魔王》は混沌の世界と可してしまった。

 魔王の命令の元、魔族たちは四つの都市の次々に侵略を開始したのである。

 あっという間に三つの都市は陥落し、最後の砦となるエルギーの街だけは異変に気付いたプレイヤーたちの手によりなんとか持ち堪え続けていた。

 次第にプレイヤーたちの中で魔王に立ち向かって行く者が、現れ始めたのであった。

 だが、魔王に挑んだ者は誰一人帰ってくる事もなく、教会で復活する事もなかったのである。


 システムメッセージが告知するだけだった。

『○○は魔王に挑みましたが死亡しました。残りプレイヤー数○○○○人』と……

 毎日のように流れて続けていた。


 一万人いたはずのプレイヤーもいつの間にか、今では半数ぐらいに減ってきている。

 そんな中、ついに《剣と魔法と魔王》で一番強いと言われている男……

 ディナィトが魔王に挑む事を決意したのであった。

 一つ物しかないと言われる最強の『聖王シリーズ』である武器と防具を持ちディナィトは、

「必ず魔王を倒してくる! だから安心していて待ってろ!!」

 と言って旅立ったが、結果は同じだった……


 魔王が倒された。と言う告知もなく、教会で復活する訳でもなく……


『ディナィトは魔王に挑みましたが死亡しました。残りプレイヤー数4861人』


 死亡した事をシステムメッセージは、無情にも告知したのであった。

 残っていたプレイヤーたちは、絶望に平伏していた。

 魔族四天王の進行は止まらず、遂にエルギーの街も侵略されつつあった。

 わずか一ヶ月も経たずプレイヤーたちは魔族たちに殺され続け、魔王に挑む者もいたがやがて生き残ったのは、Level.30前後の三人にだけになってしまったのである。


 そもそも、Levelの低い彼らが今まで生き延びて来られたのは、マイホームに隠れていたおかげである。


 マイホームとはプレイヤー、一人に一つだけ持つ事が許される家である。

 普段は、宿屋変わりに寝たり、仲間同士で集まったり談笑や作戦を練ったり、道具を取り出したりする。

 そんな場所であった。

 マイホームは、結界に守られており魔物たちから攻撃をされる事はない。

 だから、彼らは今まで生き延びる事が出来たのである。


『○○は魔王に挑みましたが死亡しました。残りプレイヤー数三人』


 システムメッセージの告知が流れた時、三人はため息しかでなかった。


「遂に俺たち三人だけになったみたいだよ……」

 気弱な剣士な戦士は、そう言いながら話しかけていた。

「どうしょ〜」

 ぞくっとするほど美しい女の僧侶も、これからどしたらいいのかわからなかった。

「今の状況を変えるには、やはり魔王を倒すしかないだろ?」

 賢そうな顔をしている魔法使いがそう言うと、

「無理よ!」

「そうだよ! そう言って皆、魔王に殺されて行ったんだ」

 戦士と僧侶に猛反対されてしまった。


「でも、だからと言ってこのままここにいられないよ……食料も尽きたしさ……」

「そうだけど……」



 ドカーーーーン!!


 隠れていた筈の家が……

 結界に守られているはずの家は、突如半分ほど破壊されたのだ。

 そして、三人の目の前には魔族四天王が降り立っていた。


「なっなぜ? マイホームは結界に……」

『ムーンサン』から放たれた、一筋の光が戦士を貫いて行く

 残った二人が駆け寄る暇もなく即死し、光の粒となって消えて行ったのである。

「いや……いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 女の叫び声に『ガルヴァルデ』は大剣で一太刀……

「助けて……ウォルガフ……」

 魔法使いの方に手を伸ばしながら名を言いながら、あっという間に消え去って行く……


「残るはお前一人……」

 背の小さい『フォス』は、そう言いながら残った最後のプレイヤー。

 魔法使いであるウォルガフに剣を向けている。

「あっぁぁぁぁ……」

 腰が抜けて何も出来ず……

 只々震え上がる事しかウォルガフには出来なかった。

「お前は運がいい……

 最後のプレイヤーと言う事で、お前は魔王様直々に手を降してくださるそうだ……

 感謝するといい……」


 魔族四天王は道を開ける……

 そして、ゆっくりと魔王がウォルガフに不気味な笑いをしながら現れ、一振り……

 一切の抵抗も許されないまま、弾け飛ぶ様にウォルガフの身体は消え去って行くのであった。


 魔族四天王は魔王に膝をつきながら勝利の喜びを報告し始めた。

「これで、この世界は完全に魔王様の者に……」

「魔王様の勝利に……」

「我ら魔族四天王、歓喜に満ちております」

「魔王様の恩為にこれからも、忠誠を誓います」

 魔族四天王にそう言われ、魔王も機嫌が良いみたいだ。


 その後、魔王は魔族四天王に、四つの大陸を一つずつ納めるように指示を出し、魔王城にてこれからの魔族の繁栄に酔いしれる事だろう。


 こうして、プレイヤーとなる『ヒューマン』と言う種族は魔王と魔族の手によって滅亡したのであった。




 ◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎



 魔王の手によって最後に殺された者の名をウォルガフ。


 彼もまた《剣と魔法と魔王》でプレイしていた者である。


 Now Loading……

 Now Loading……

 Now Loading……

 の文字が消え、暗闇にウォルガフの意識は浮かび上がる……


『あなたは魔王に殺されました。コンテニューしますか?』

 ▷【はい】・【いいえ】

 そんなテロップが流れてきた。


 迷う事なく、ウォルガフは【はい】を選択していた。


 すると、またテロップが流れてきた。

『魔王に最後に殺された者として、特別特典があります。受けますか?』

 ▷【はい】・【いいえ】


 その選択肢にウォルガフは決断していた。

 このままでは殺られたままで引き下がれるもんか!

 ウォルガフは【はい】を選択していたのであった。


『特別特典である、転生についてご説明いたします。

 人類であるヒューマンは魔王によって滅亡しました。

 それ故に貴方には、ヒューマンとしてコンテニューする事は出来ません。

 魔族側の種族として転生して頂きます。そして、魔王に忠誠を誓って頂きます』

 魔王を倒すはずが、魔族側に転生……

 そして、魔王に忠誠……

 ウォルガフは、そんな特別特典いらないと思っていた。


 しかし、テロップは再び流れてくる。

『あなたがLevel.200になった時、魔王を倒せる唯一の転生ハイヒューマンが目覚めます。

 彼に力を貸し魔王を討伐して下さい』


 Now Loading……

 Now Loading……

 Now Loading……


 待ったも聞かずに、ウォルガフの意識はそこで再びブラックアウトしたのであった。





 気がつけばウォルガフは魔王城にいた。


「おっ、新たな同士の誕生じゃな……」

 ウォルガフの目の前には、背の小さい魔族の種族の『フォス』がいた。

『フォス』にも色々おり、ウォルガフの目の前にいるのは老齢で髭を生やした『フォス』であった。

「……」

 ウォルガフは何がなんだか理解出来なかった。

 テロップで流れていた事を、今でも夢だと思っていたから……


 だが、現実にはウォルガフの身体は小さく二頭身になっていたのであった。

 受け入れたくない現実をウォルガフは、受け入れる事しか出来なかった。

「魔王様のお力によりお前は目覚めたのじゃ。魔王様に後でお礼の言葉を言うといいじゃろうて……」


 誰が魔王に感謝するか!

 皆を……元の世界を返せ!


 ウォルガフはそう言いたかった。

 だが、口は動くも言葉にはならなかったのだ。


「ふむ、儂の言葉が理解出来るかのぉ?」

「はいでちゅ……」


 でちゅ!??

 今までそんな言葉など一度も発した事がなかったウォルガフは、自然と出てきた言葉に戸惑いが隠せなかったのである。


 堪らず、顔を赤くしながらうつむいてしまうのであった。

「懐かしいのぉ、儂も誕生当時に発していたものじゃ。なぁに、すぐになくなる……気にする事はないのじゃ」

「……」


「さて、魔王様にお前の復活のお礼を言いに行くかのぉ、着いてするのじゃ」

「はいでちゅ」


 やはりなれる事は出来ず、恥ずかしいと思うウォルガフであった……



 魔王直々に会える事が出来るのは、誕生した時。

 それ以降、魔王に会う事は許されなかった。

 魔王の魔力が強すぎて魔力を受け止めきれずに当の本人が暴走してしまうからである。

 後は、魔王から放たれる魔力に抵抗出来るまで成長する事。

 つまりある程度Levelを、上げなければなければならなかった。

 ある程度成長を遂げれば、末端から魔王の言葉を聞く事は出来出来る。

 そして、魔族四天王に認められる程の実力を身につければ、直接謁見する事も出来るのであった。


 と、ウォルガフを案内している老齢の『フォス』が説明していた。



 魔族四天王の一人『フォス』の種族王『ミクロス』

 ミクロスの元に連れて来られたウォルガフはこれから魔王に、会う事により不安で一杯だった。

 でも、逆に考えれば魔王に直接会う事は……

 もしかしたら、魔王を倒せる千載一遇のチャンスなのかも?

 と、そう思う事にウォルガフであった。


「ミクロス様、つい先ほど誕生したばかりの者でございます」

「うむ、名を何と言う?」

「ウォルガフといいまちゅ」

「ウォルガフか、よしではついてこい」

「はいでちゅ」

 ミクロスはゆっくりと歩き出す。

 その後ろをウォルガフは、トコトコトコと小走りに後をつけるのであった。



 魔王の部屋は不思議なクリスタルがいっぱいあった。

「ミクロスちゃま()……あのクリスタル変わっていまちぇんか?」

「あの、クリスタルは一つ一つにはヒューマンが封印されている」

「!!」

 ミクロスは触れるなよ。と念を押し再び歩き出したのであった。


 死んだと思っていたプレイヤーの皆がいた!

 なぜクリスタルに封印されているのか?

 そして生きているのか?

 調べようもなくわからなかった。

 だが、ウォルガフはその事実を知っただけでも、少し嬉しかった。



 ミクロスと共に魔王の元に辿り着いたウォルガフは、魔王との距離が目と鼻の先だった。

 ウォルガフは後先考えず魔王に飛びかかろうと思っていた。

 だが、それは出来なかった。

 身体が魔王に逆らう事を拒絶していたのだ。


 魔王は我が子を見るような優しい目でウォルガフを見つめている。

「魔王様、早速ですが儀式をお願い致します」

 ミクロスの言葉に魔王は頷き、ウォルガフの頭の上に手を乗せ始めた。

 そして、魔王からウォルガフに膨大な魔力が注がれて行く。

 叫び声一つも上げる事なく、ウォルガフは魔王からの魔力を受け止め続けていたのであった。

 その姿に立ち会った魔族四天王も驚きを隠せなかった。



 儀式とは……

 生まれてすぐ魔王から直接魔力を供給してもらう事で、今後の成長に大きく関わって行くのである。

 魔力を受け止める器(身体)が大きければ大きい程、強くなって行く。

 逆に小さければ対した力を手に入れる事なく、一生使いっ走りにあうのであった。

 ウォルガフの器(身体)はすでに、魔族四天王を凌ぐほどの魔力を受け止めていた。


 それが『フォス』と言う種族特有の潜在能力を、ウォルガフは遥かに超えていたのである。

 魔力注入が終わると魔王は、ウォルガフから手を離し一本の剣を差し出してきた。



『魔王の大剣』

 その剣はウォルガフの背丈以上長く両刃の大剣。

 鉄板のように身幅が広く、従来の剣の数倍もの厚みのある大きな刃を備えていた。

 その小ささな身体をもってして果たして扱い切れるのか?

 ミクロス以外の魔族四天王は誰もがそう思っていた。


「ウォルガフ……その剣は魔王様からお前への誕生祝いだ。ありがたく頂戴しろ」

「はいでちゅ」


『魔王の大剣』を受け取ったウォルガフは、軽々と振り回し始めた。

 魔王は不敵に笑みを浮かべ、ミクロスも安堵した様子であった。

 近い将来、越えられてしまう力の片鱗を見せつけた、ウォルガフのその姿に他の魔族四天王は不快に思っていた。



 抗う事の出来ない身体にウォルガフは、この姿になる前に起こった事を思い出していた……

『……魔王に忠誠を誓って頂きます』

 確かにウォルガフの心は忠誠を誓ってはいなかった。

 だが、身体が魔王に忠誠を誓っていた……


『あなたがLevel.200になった時、魔王を倒せる唯一の転生ハイヒューマンが目覚めます。彼に力を貸し魔王を討伐して下さい』

 ウォルガフは、一先ずLevel.200を目指す事にしたのであった。




 ◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎



 ウォルガフのLevel上げは、邪魔が入り順調とは言えなかった。

 邪魔とは、ミクロス以外の魔族四天王がウォルガフの力を邪魔と思い、ひっそりと殺そうと思い部下を差し向けきたのである。

 度重なる妨害を受けつつも、ウォルガフは250年かけ漸く……

 遂にLevel.200を告げるレベルアップ音が脳内に響き渡る。


「二百歳になったでちゅ……長かったでちゅ……」

 ウォルガフは思わず踊った。

 喜びのダンスを一人で踊り続けていた。

「やったでちゅ〜いえぃ〜いえぃ! いえぃ〜いえぃ〜いえーーーーーい!!」

 ウォルガフはくるっと一回転まわり誰も見ていないのにポーズを決めていた。



 喜んでいるウォルガフの元に久しぶりに脳内にシステムメッセージが浮かび上がってきた。

『Level.200達成おめでとうございます。

 只今より魔王を倒せる唯一の楔、転生ハイヒューマン「リュウイ」を召喚させます」

「おっ遂にきたでちゅか!?」


「プレイヤーの始まりと終わりの場所……『エルギーの街』へ……』

「!?」


「とっ遠いでちゅ〜〜」

 ウォルガフの現在地は『エルギーの街』からおよそ百キロ……

 待ちに待ったウォルガフは、猛スピードで駆け抜けて行くのであった。




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