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魔王に再び挑みたい!  作者: kiruhi
目指せ、Level.50![ 上 ]
18/77

【02】

 北の洞窟は、俺の予想通りゲームの仕様のままだった。


 ドアを開けると、奥の方にはフワフワと黒色の丸い球体の魔物が浮き上がっている。

『ブラックルナボール』Level.175


「なんでちゅか? あれは?」

「あれは、ブラックルナボール」

「なにちょれ? おいちぃちょうな名前でちゅね!!」


 何故、そうなる??

 時々ウォルガフの感性がわからなくなってしまう……


「ふにゅ? リュウイたん?」

「あぁ悪い。えっと……

 ブラックルナボールは、中心にコアと言う核があるんだよね」

「ふみゅふみゅ」

「まず、そのコアを破壊しない限りどんな攻撃を繰り返しても倒す事は出来ないんだ。ウォルガフの力をもってしてもね」

「ほほぉ〜、なるほどでちゅ」

「そして、問題として大量の骸骨たちがブラックルナボールの元に行くのを妨害してくるんだ……」


 と、俺がウォルガフに説明している間に、骸骨たちはあっという間に俺たちを取り囲んでいた。

 その数、ざっと五百……

「うへぇ……」

「ふみゅふみゅ……」


 ウォルガフは五百体目の前にして全く動じている様子はみせなかった。

 仮にウォルガフが、全てを倒し切ったとしてもブラックルナボールを倒さない限り、骸骨たちは増え続けていく。

 とてもじゃないが、ウォルガフがブラックルナボールに辿り着くとは思えなかった。

 辿り着いたとしても倒せる程の余力は残っているのだろうか?


 なら俺が……?

 ウォルガフに骸骨たちを引きつけている間に俺がブラックルナボールに向かって行き攻撃する……

 コア自体は、弱くとてつもなく脆い。だから、コアだけなら俺の魔力で十分倒せれはず……なんだけど。

 辿り着けれる自信がない……

 ある程度の攻撃パターンはわかっている。

 でも、わかっていても避け切れなければ意味がない。それに先程のブラックルナボールのステータスを見たのだが、Level.175だ。

 とてもではないが、向かっていく勇気は俺にはない。『転生者』が発動するかもしれないが、その前にHPが0になりそうだ。

 要するに即死だな。


 などと俺が一人で考えていると、ウォルガフは俺の悩みをいとも簡単に打ち破ってくれた。

「ふみゅ、骸骨たん少し多ちゅぎでちゅね」

 ウォルガフは辺りを見渡しながらそう言葉を漏らし……

「リュウイたん、もう少し(ちゅこちぃ)ぼくに近づいて下ちゃい」

「うん……?」

 言われた通りに近づくとウォルガフの身体の周りは、パチパチと雷を帯びたかのように俺には見え始めた。


 ってウォルガフ、お前の属性は雷かよ!


 そもそも人? には属性という物が存在していた。

 属性とは、自ら選ぶ事は出来ないがゲーム作成時に炎・氷・雷・聖・闇の五種類がランダムに決定する。

 炎・氷・雷は基本属性と呼ばれ、聖や闇は滅多におらず百万人プレイヤーのうち僅か十人もいないと言われていた。

 更に無属性という炎・氷・雷属性を扱える者もいると噂された事すらあったが、見た事はない。

 GMゲームマスターと呼ばれる運営のなのだろうと言われ続けていた。


 因みにゲーム時代では、俺は炎属性。そして、ハグは希少価値の高い聖属性だった。

 火属性や雷属性は攻撃力も高く、更に凶悪な攻撃力を持つのが闇である。

 水属性は魔法力が高く聖属性は更なる魔法力を持っており、ハグは当に僧侶に向いていたのである。


 正直言ってハグが聖属性だと知った時、凄く羨ましかった。


 そして現在……俺には属性はない。無属性だ。

 聖と闇以外の三つの属性を使う事が出来る。

 だからこそ、依頼の報酬でもある魔導書が欲しかったのだ。



 しっかし、この世界にはもう属性と言う概念その物はないとばかり思っていた。

 ウォルガフ自身は、生まれ変わった元プレイヤーだ。だから属性持ちなのだろうか?

 それとも、魔族の世界にはなったとしても同じ仕様なのだろうか?


 ふむ……ウォルガフに聞いた所でわからないと返事が返ってくるだけだろうし、これはおいおい確認するしかないだろうな。



(ちゅご)く、(ちゅか)れるから使いたくなかったのでちゅが、仕方ありまちぇん」

 そう言いなから、ウォルガフは頭の上で大きな剣をグルグルと振り回し始め、そのまま地面に剣を突き刺したのだ。

「大放電っ!!」

 ウォルガフの言葉と共に、地面から雷を帯びた攻撃が骸骨たちを襲いかかる。

 雷を受けた骸骨は次々と一撃で倒して行く。

 あっという間にウォルガフは、骸骨五百体倒したのである。



「ふぅ……リュウイたんは、ここで待機していて下ちゃいね」

 ウォルガフはそう俺に言葉を残し、ブラックルナボールに向かって雷光の如く走り抜けて行く。


 はやっ!!


 しかし、ウォルガフが向かってくる事に感づいたブラックルナボールは先に攻撃を仕掛けてきた。

 小さな丸い玉をウォルガフに向かって発射してきたのだ。

 それをウォルガフは避ける!

 次々避けながらもウォルガフは、ブラックルナボールへと近づいていく。


「フレアボール!!」

 ウォルガフが避け切れずに直撃しそうな小さな玉に向かって俺は魔法攻撃で援護して行く。

 すると、ブラックルナボールは小さな玉から形状を変え、今度は槍のような物でウォルガフを攻撃してきた。

 咄嗟の事でウォルガフは避け切れずにいた。

「フレアボール!!」

 再び後方で待機していた俺の攻撃魔法が直撃する。

「リュウイたん、ナイ(ちゅ)でちゅ!」


 ウォルガフが俺を褒めてくれた!

 思わず嬉しくてガッツポーズを取りそうになったが、今は戦闘中だ。

 と気を引き締めウォルガフの行動を読む。


 そもそも、ゲーム時代俺は前衛として行動していたはずだ。

 ブラックルナボールをどうやって倒した?

 倒すとしたら、どうやって倒す?


 そうだな……

 今のウォルガフと同じようにブラックルナボールに向かって走り込んでいただろうな。

 後衛からの援護攻撃があると信じて……



 俺は杖を構え今使える最大級の魔力を杖に送り込み、ウォルガフを作り出すチャンスを伺う。

 どのみち、ここで倒さないと俺が復活した骸骨に殺されてしまう。

 骸骨はウォルガフの先程の雷の攻撃によって痺れて動けなくなっている。

 だから、その効果が切れると……


 うん! この攻撃で決めよう!!



 ウォルガフはブラックルナボールの攻撃による槍を交わし、空中へと飛び上がっていた。

「うぉりぃやぁぁぁぁっ!!」

 ウォルガフの掛け声と共に雷を纏った攻撃がブラックルナボールを上から真っ二つになりコアがむき出し状態になった。

「!?」


 今だ!!


「フレアストリーム!!」

 コアをむき出し状態になっているブラックルナボールに対して、すかさず俺は攻撃魔法を唱えた。

 フレアボールよりも大きな火の玉が、杖からコアに向かって無数放たれて行く。


 だが、遠いのもあったのだろうか?

 殆どコアを直撃しなかった。

 でも、一つだけ火の球はコアを直撃してくれた。


 コアは粉々に砕け散り、それと同時に骸骨も消滅していくのであった。


 命中率悪すぎだろ!!




「リュウイたん……けほっけほっ」

 爆炎の中からウォルガフはむせこみながら、現れてきた。

 鎧に少し焼け焦げを残しながら……


「ウォルガフ、ごめん……」

 どうやら、巻き添えを食らったようだ。

 悪い事してしまったな……


 しかし、ウォルガフは破壊されたコアを見て驚いていた。

「おぉっ!? イエーーイ♪ やったでちゅ〜」

 ウォルガフの独特の勝利のダンスを踊りを見ながら思わず可愛いな。と思ってしまう。

 そして、俺はゆっくりとウォルガフの元へと近づいて行く。


「一発でコアを破壊できて良かったよ」

「うちゅ?」

 頭に?マークを浮かべながら、ウォルガフは不思議な顔をしている。

 どうやら、ウォルガフ自身は先程の打ち下ろしの一撃の後にも、攻撃をしようと思っていたらしい。

 でも、俺の攻撃魔法がウォルガフの攻撃を妨げていたようだ。

 だからウォルガフとしては、最初の初太刀で倒したと思っている。

 本当は俺の攻撃魔法が運良くブラックルナボールに、当たっただけなんだけどな……


 ウォルガフの邪魔をした挙句にピンチに陥れる所だった。

 あっぶねぇ〜


「リュウイたん! やりまちぃたね!」

「あぁ、なんとかなって良かったよぉ」


 ウォルガフが深く考え込む人でなくて良かったよ。

 だが、命中率はなんとかしないとな……

 十発以上あったのに一発しか当たらずに、味方にも被害が及ぶって……

 どう考えても、問題だろ……




 ◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎



 気を取り直して本来の目的である、秘宝を探す事にした。

「さてと、秘宝とやらは、何処にあるのかな?」

「きっとあの奥でちゅよ!」

 ウォルガフはブラックルナボールがいた更に奥にあるドアを、指差してきた。


 確かにウォルガフの言う通りかも。


 ドアに近づき開けようと手を置くと、何故かゆっくりとドアの方が勝手に開き出したのである。

「!!」


 魔物が、まだこの中にも残っていたのかと思ったのだが、そうではなかった。


 黄色よりも金に近い色で髪型は変わっていた。

 頭部の真ん中部分は、手裏剣のように逆立ちながら伸び上がり、後ろの方は少しだけ逆立ち、両サイドは刈り上げし更に短かった。

 しいて言うのなら手裏剣モヒカンと言った方が想像しやすいかもしれない。

 そして目前に現れたのは、ウォルガフと同じ種族『フォス』族だった。


「なんだぁ? お前はぁ?」


 そういうあなたは誰??


 と一瞬思ったがウォルガフが先に口を開いたのである。

「あっロジェたんだぁ!!」

「んっ? ウォルガフだぁ〜? 久しぶりだねぇ〜」

「そうでちゅね!!」


 二人は腕を組みながら仲良くスキップしながら俺の周りを回っている。

「ひっさっしぶり〜♪」

「ひっさしぶりぃ〜♫」


 実に嬉しそうだ。


「ウォルガフの知り合い?」

「うん!! ぼくと同じくフォス族のロジェたんでちゅよ!」


 そりゃ見ればわかるよ……

 ウォルガフと同じく幼稚園児並みの背丈だし……

 目はクリンクリンの青い瞳、口元もにこやかだしね……


「ウォルガフこの人は誰だぁ〜?」

 ロジェと名乗るフォス族は、俺を指差しながらそう聞いてきたのである。

「リュウイたんでちゅよ。ぼくの仲間でちゅ!」

「へぇ〜」


 先程までは好意的な雰囲気だったのだが、俺の名前を聞いた瞬間一瞬にして空気が変わった。

 それは、まさしく殺気にも似た……そんな感覚だった。


 俺、何かしたか??


 ロジェはプイッと俺から目を逸らしウォルガフと話しを始めた。

「それで、洞窟嫌いのウォルガフが何故ここにいるんだぁ? 依頼か?」

「そうでちゅ。秘宝〜取りに来まちぃた!!」

「そうか、でも残念だけど秘宝は先に貰ったよぉ」

「えぇぇぇ!? ロジェたん、頂戴〜」

「ダメだよぉ。俺もこれ必要なんだからぁ」

「ぶーぶー」

「まぁ、これで勘弁してぇ〜」


 そう言いながらロジェは、ポケットから何かを取り出しウォルガフに渡してきている。

「ぼくは物で釣られない男でちゅよ?」

 そう言いながらもウォルガフは、ワクワクしながらロジェから差し出された物を受け取り中身を確認するのであった。

 ……そこにはウォルガフの大好物、アップルパイであった。


「おぉぉぉぉっ!!!??」


 目の輝きが違う……

 物で釣られない男ではなかったのか……?


「リュウイたん秘宝は諦めまちょう!」

「……」



 諦められるかぁ〜!!

 何故、魔導書からアップルパイに報酬が変わらないと行けないんだょ!!


「いゃ、俺的にはそれはちょっと嫌かも……」

 モグモグ……

「えっ?」

 俺が否定しようかと思ったのだが、気がつけばウォルガフは俺に後ろを向け、何やら食べているようにも見えた。


 まっ……まさか……


「……ウォルガフ?」

「もう食べちぃたぁ〜えへっおいちぃかったでちゅよ♪」

「えっ……えぇぇぇ!?」


 うぅ……

 魔導書がぁ……

 くそぉ〜〜


「……」


 はぁ〜諦めたくないけど諦めるかぁ……


「リュウイたん……?」

「……食べてしまったものは、しょうがないよな……」

「はいでちゅ!!」

「……」


 ったく……ちょっとは悪びれてよ。

 他の方法探すかぁ。

 となれば、この洞窟に長居する必要はないな。

 ロジェと再会を果たしたウォルガフには悪いが、街に戻ってから再会を喜んでもらおう。


「街に戻るかぁ」

「は〜い」


 口元にアップルパイの残りカスである生地を付けながらも、ウォルガフは元気良く返事してくれた。

「じゃ、ロジェたん。またでちゅ」

「あぁ、またなぁ。ウォルガフ」


 ウォルガフはロジェに後ろを向き来た道へと戻ろうと歩き始めた。


 あれ? ここで別れていいの?


 と思ったが、ウォルガフの様子がおかしい。


「あれ……?」

「??」

「ぐにゃんぐにゃんでちゅ〜〜」

「へっ?」

 ウォルガフはフラつきながら、その場に倒れこんでしまった。

「おいっ!? ウォルガフ??」


 なぜ? 突然こんな事に??

 ……まぁ普通に考えれば一番怪しいのはロジェなんだけど……

 同じフォス族だ。俺としては、疑いたくないな……


「心配しなくても大丈夫だよぉ」

「……」

 くたぁ〜と倒れこんでいるウォルガフを見ながらロジェは、そう言ってきた。

「大丈夫ってどう言う事かな?」

「少しの間、ウォルガフには眠ってもらったのぉ」

「……なぜ、そんな事を?」

「リュウイ、君を試す為にはどうしてもウォルガフは、邪魔だったんだよね?」

「俺を試す?」


 試されるような事、俺していないけど?

 そもそも、ロジェとは初対面なのに……


「ウォルガフがなぜ、君に拘っているのか……?

 種族王になるのを断ってまで君を取る。それだけの価値のある人なのか、その実力を知りたい」

「……」


 そんなの知らねぇよ……


「その結果君を殺してしまい、ウォルガフに殺されたとしても俺は後悔しない……」

「!?」


 えっ……えぇぇぇ!?

 なぜ、俺を殺す事になるんだよ!?


「行くよ……」


 その言葉と共にロジェは、気合を溜めだした。


「ちょ……まってよぉ〜」

 ロジェはそんな事は御構い無しに気合いの入った拳を突き出してきた。

 それは空気となり気合砲みたいに俺を殺そうと襲いかかってきた。





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