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魔王に再び挑みたい!  作者: kiruhi
目指せ、Level.50![ 上 ]
17/77

【01】

 Level.10になるまで一ヶ月の時間を要した。

 これは、俺が魔法のLevel上げを先行したからである。


 因みに家が建つまで後、1ヶ月程かかる見込みらしい。

 ルシュガ曰く、木材が足りないとの事だ。

 だから、息子のルシアと交代で木材を斬らなければなまない為遅れる。と、そんな話をされでば、早く宿屋生活から抜け出したい俺としては、アイテムボックスの整理を兼ねて使わない木材を提供する事にした。

 すると、ルシュガは大層喜んでくれた。


 木材代は、費用から引いてくれるとの事だが、一体どんだけ大きな家にするつもりなんですか……?


 後、シャイターン・ポイントと言えば、もう少しで溜まりそうなのだが最近中々溜まりづらくなっていた。

 毎日ウォルガフは喜んではくれるが、同じ事をやり続けると溜まりづらくなるように思えた。


 ここでどーーん!! 

 とウォルガフが喜んでくれたら、一気に上がるんだけどな。




 魔法はと言えば……[フレアボール VIII]、[フレアアロー V]、[フレアストライク V]、[フレアストリーム III]とかなり頑張って魔法Levelを上げていた。


 そして、Level.10になったお陰で俺の能力もかなり強化されている。


 まず、[フレアストリーム]を発動するのに必要なMPは35だ。

 俺の今の最大MPだと約7回発動する事が出来る。

 後、『転生者』もHP27になれば発動可能である。

 ギリギリ死の危険性がある一桁代より二桁代の方が安心感はかなりもてる。


 Level.90のバファローウォルフも[フレアストリーム III]を五発程撃てばウォルガフの力を借りなくても倒せるようになった。

 反撃とかは勿論あるわけで、危なくなったらウォルガフに助けてもらっている。


 冒険、実に楽しいぞ!!



「リュウイたん、お腹すいたぁ〜〜」

「フレアストリーム!!」

「ぐぎゃあああっ!!」


 バファローウォルフにフレアストリームが直撃しプスプス……と煙を上げている中、ウォルガフからそんな声が聞こえてきた。

「じゃ、そろそろ街に戻るかぁ〜」

「はいでちゅ〜♪」


 最近ウォルガフは物足りなさそうだった。

 理由はわかっている。

 俺が、魔物を倒せるようになってきたからだ。

 そもそも、俺が倒してしまうとウォルガフの出番はない。

 だから当然ウォルガフは見ているだけになり、必然的に暇を持て余してしまう。


 お金はと言うと、相変わらずウォルガフの大食いと宿屋代で報酬金の殆どはなくなり、溜まる事はなかった。

 減る事もないけどね。


 冒険者ギルドでバファローウォルフの報奨金を受け取りながら、今日の晩御飯は何にしようかな? と考え込んでしまう。

 宿屋汐音(しおね)は確かに良い所だ。

 だが、最近行きすぎなのだろうか?

 ウォルガフ自身は大層喜んではくれているのだが、シャイターン・ポイントはあまり上昇してはいなかった。


「ん〜今日はどこがいいかな?」

「うんとでちゅね〜料亭欽天(きんてん)に行ってみたいでちゅ」

「ほほぉ〜」


 すっげぇ高そうだな……


 冒険者ギルドを出てウォルガフの後を歩く事十分……

 宿屋汐音(しおね)よりも人は多く、大盛況している料亭欽天(きんてん)はあった。

 見上げる程、赤塗りされた中華料理亭みたいな大きな建物に、圧倒されている俺に対してウォルガフは臆さずに中へと入って行くのである。


 今日は金貨払い……覚悟するかな……


 などと考えながら、ウォルガフの後へと続いて行く。

 すると、ガルヴァルデ族の黒スーツを着た男に襟首を掴まれ宙に浮かされながら、ジタバタと暴れているウォルガフがいた。


 何があった!?


「離ちぇよぉ〜ぼくは客でちゅょ!!」

「当店はお子様のご来店はお断りしております」

「ぼくは、お子ちゃまじゃないぞ!!」


 いや、どう見ても幼稚園児だから……


「あの、俺の連れが何か?」

 ウォルガフを受け取りながら黒スーツに聞いて見た。

「お客様のお連れ様でございましたか。お子様の教育はきちんとして頂きたいものです」

 では……と言いながら黒スーツの男は踵を返し中に戻ろうとした。


 その態度に俺はちょっとムッとなった。

 そもそも、ウォルガフは俺の子じゃないし……

 勘違いも甚だしい!!


「食事をしたいのですが?」

「はぁ?」

 と黒スーツは振り返り今度は俺の姿を上から下までじっくりと見回し始め、フッ……と鼻で笑い始めた。


 何がおかしいんだ!?


「お客様……当店は、高級料理店でございます。とてもではありませんが、お客様にお支払いして頂ける金額ではないかと思いますが……?」

 黒スーツはゆっくりと俺の元へと近づき、そして耳元で囁く。

「恥をかかないうちにさっさと帰れ!」


 流石にこれには、俺……怒りました。


「あのさっ、人を見かけで判断しない方がいいよ?」

「リュウイたん……?」

 足元にいたウォルガフは、今まで見た事もない俺の雰囲気をすぐに察したのか、心配そうな顔をしている。


 俺の手持ちは殆ど銀貨である。

 突然高額な金貨や白金貨が必要になった時、銀貨払いでは流石に大量すぎてカッコがつかず、恥ずかしいだろうと思っていた。

 だから、俺は換金所で銀貨を金貨と白金貨に交換していたのだ。


 白金貨に10枚ぐらい換金しておいた物を懐から取り出し黒スーツに見せつける。

「これでも足りない?」

「!!」


 白金貨10枚を見せつけられた、黒スーツの男は見る見るうちに青ざめて行く。

「なっ……!?」

 まぁ、それはそれでいい物をみせてもらったのだが、こんな事で俺の気が晴れる訳はない。

「どっどうぞ、こちらに……ご案内致します」

「ふざけるなよ。白金貨を見ただけで態度を変えるってどういう事さ? これがこの店では常識なの?」

「そっそんな事は……」

「それにさっ、俺の連れを馬鹿にされて黙っていられる訳ないじゃん」

「……」

 黒スーツはウォルガフの方へと目を向ける。

 ウォルガフは、俺の足の後ろに隠れながらも顔だけは出していた。


「店長だせやぁ〜!!」

 俺の低い声が黒スーツの男を脅す。

「しょ少々お待ち下さい……」


 慌てながらも黒スーツの男は店内へと慌てて走って行くのであった。


「リュウイたん……黒くてカッコイイでちゅ……」

「あははは、よしっウォルガフ!!」

「うちゅ?」

「今のうちに逃げよう!!」


 店長出て来られたら、俺が困る!!

 だって、問題起きてぺディリヴァ出てきたら困るじゃん!!


 俺はウォルガフを抱え逃げるかのように料亭欽天(きんてん)を後にした。


 のちに噂が流れた……

 『料亭欽天(きんてん)では、人は見かけで判断致しません』


 と……

 ウォルガフには悪いが、ほとぼりが冷めるまでの間、とてもではないが行けません……




 ◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎



「お姉たぁーん!」

「あらあら、ウォルガフ。こんにちわ」

「こんにちわー」

 ウォルガフは冒険者ギルドにある受付のカウンターに、顔だけ出しながら挨拶をしていた。

「今日はねぇSランクの依頼を受けにきまちぃた」

「なるほど、リュウイさんも?」

「えぇ、お願いします」


 受付のお姉さんはそうねぇと言いながら、Sランク専用の書類の中からリストを何点か調べ出してくれた。

「これかしらねぇ〜」

「どぉれぇ、どぉれぇ〜」


 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 彷徨う亡霊の討伐(夜限定)

 依頼達成条件:巣の破壊

 報酬:金貨2枚

 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 グリフォン討伐

 依頼達成条件:最低十匹

 報酬:金貨1枚

 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 北の洞窟探検

 依頼達成条件:最下層に眠る秘宝の発掘

 報酬:魔導書

 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 んっんっ??

 報酬が魔導書だと!?


「うんとね、お姉たん。ぼくは、彷徨う……」

「北の洞窟にします!!」

「えっ?」

 ウォルガフの言葉を俺は遮った。

 Sランク依頼を受ける時は、当然選ぶ権利はウォルガフにある。

 でも、俺は口を出した。

 だって、報酬が魔導書だよ!?


 欲しいです……

 新しい魔法覚えたい!!


「ウォルガフ、俺は報酬の魔導書が欲しい」

「えぇ〜〜」

 やはり、ウォルガフは口を尖らせている。

 乗り気じゃないのは、すぐに分かった。


「ぼくは別にほちぃくないでちゅ……けど?」

「頼むよ。ウォルガフ……」

「はぁ〜最近リュウイたん、物(ちゅごぉ)く我儘でちゅ……

 先日は、料亭欽天(きんてん)でご飯食べれまちぇんでちぃたちぃ……」


 いつも我儘全開のウォルガフに言われたくはないな。

 確かに料亭欽天(きんてん)は俺のせいで食べなかったが、その後宿屋汐音(しおね)で全ての食材を食べ尽くし、デザートまで食べているんだけどな……

 だが、ここは我慢だ……


「ウォルガフ、お前にしか出来ない事だ」

「ぼくにちぃか出来ない事?」

 その言葉にウォルガフは目を輝かせ始めた。


 あと一押し……!


「そうだ。俺は魔導書が欲しい。だが、俺の力では絶対的に不可能だ。だからウォルガフ、頼むよ!」

「……わかりまちぃた。依頼受けまちゅ!!」


 よしっ!!

 ウォルガフが単純で本当に助かる!

 お弁当、沢山持っていかないとな……


 というわけで、北の洞窟探検の依頼を受ける事にした。



 北の洞窟は、北の森の奥の方にある洞窟で難易度はFからSまでと懐広く冒険者たちを受け入れてくれる。

 一階層から三階層までは低ランクの者たちが……

 四階層から五階層までは中ランクの者たちに人気が高かった。

 六階層から七階層になる最下層は、一部の高ランクの者たちが足を踏み入れる事が許される。

 本来ならDランクの俺は、五階層まで行く事が出来る。

 まぁ、Level.10の俺には無謀なんだけどね。

 そして、更に魔導書が欲しいだけに最下層にまで足を踏み入れようとしている、俺である。

 これもウォルガフのお陰だな。


 北の森を難なく抜け切ると、崖下に洞窟の入り口はあった。


 ん〜? どこかで見た事のある洞窟だな……?


「リュウイたん行きまちゅよ」

「おうっ!!」

「お腹は空いていないかい?」

「大丈夫でちゅ!」


 良かった。戦闘中にお腹空いたとか言われても困るしね。


「えっと……(たちぃ)かここに……」

 ウォルガフは洞窟内に入りすぐさま壁を触り始めた。


 何を探しているのだろうか??


「おっあったでちゅ」

 壁の一部は僅かにへこんでいた。

 そこを、ウォルガフが押すと壁は横にスライドして隠し部屋が現れたのである。

 隠し部屋の中には、淡く光る魔法陣かあった。

「なにこれ?」

「うんとねぇ〜ワープゾーンでちゅ!!」

「ほぉ〜」


 五百年以上経っていると言うのに、ワープゾーンはまだ機能していたんだ。


 ワープゾーンを潜るとそこからは明らかに空気が変わった。

「ウォルガフ……ここ何階層なの?」

「んっ? 最下層でちゅょ?」

「!!」

「だってぇ、一階層から歩いてくるのは時間の無駄でちゅちぃ、楽ちんちまぁちぃたぁ〜」


 楽しすぎでしょ!!


「じゃ、秘宝探検に出発(ちゅっぱぁちゅ)でちゅ〜!!」

「おーうっ!!」

 魔法の成果見せてやる!

 願わくはウォルガフの役に立ちますよーに!




「フレアボール!!」

 俺の言葉と共に気の杖から炎が飛び出し敵に直撃した。

 だが、蚊に刺された程度で、痛くも痒くもないらしい……

 お構いなしに俺に突進してきた。

「うおっ!」

 それを、なんとか避けるとウォルガフが一刀両断。

 光の粒となって消えて行くのである。


 くそっ……まだ俺はウォルガフの役に立てないらしい……

 まぁ、当たり前と言えばそうなのかもしれないけどさっ……

 ちょっと悔しい。


「ねぇねぇ、リュウイたんは、敵の動き読めるのでちゅか?」

 突拍子もなくウォルガフは、そう聞いてきた。


 読めると言うか、正確にはゲーム時代から今もいる魔物に対しては、攻撃パターンが同じだったり、弱点部位や属性なども全てゲームのままの設定なので、何千回も倒し続けてきた俺としてはそれは何も苦ではない。

 でも、逆に新しい魔物に対して俺は何もわからない。


 これを、ウォルガフになんと答えれば分かってくれるのだろうか?


「読めると言うより、ゲームにいた頃のモンスターが今の世界にもいるのだけ、攻撃パターンが同じだからわかりやすいだけだよ」

「なるほどでちゅ。ぼくとは大違いでちゅね」


 理解出来ないと思っていたのだが、ウォルガフは理解してくれた。

 そういえばウォルガフもプレイヤーだったな……


「ウォルガフは、ゲームの時Level幾つだったの?」

「……」

「ウォルガフ?」

「さてと、リュウイたん。ここのドアを開ければその先にはボスがいまちゅ! 気合を入れる為にもぼくはお弁当食べたいでちゅ!!」


 あっ話し逸らしたな……


 俺はアイテムボックスから、ウォルガフ用のお弁当を取り出し渡してあげた。

 ふむ、どう考えても……気分はピクニックだよなぁ〜


 お弁当を食べながら俺は、この洞窟について思っている事を聞いて見た。


 それは、この北の洞窟……

 やはり、俺には見覚えがある。

 なんとなくなのだが、この北の洞窟はゲームの頃にも存在していたような……

 そんな気がするからだ。

 俺の予想がもし当たっているとしたら、ウォルガフだけでの討伐は少しきついかもしれない。


「この北の洞窟って名前ある?」

「うちゅ?」

「いや、例えばさ結晶体の洞窟とかさっそう言う名前がゲームの時あったじゃん」

「あぁ、なるほどでちゅ。えっとぉ〜ゲームの時代は、『ヒートヘイズ洞窟』って呼ばれてたみたいでちゅよ」

「!!」


 ヒートヘイズ洞窟だと!?


 ヒートヘイズ洞窟とは、骸骨系の魔物が多く棲息し、ボス部屋に至っては大量の骸骨を呼び寄せるボスが特徴的だ。

 その数は半端なく、Level90代のプレイヤーが最大PT数六人で挑んで勝てるかどうかと言うか難易度の高い洞窟だ。


 それをウォルガフと二人で??

 無理だろう?

 そもそも俺の攻撃力は当てにはならないし、ウォルガフだけで倒すと言うのか??


「ウォルガフは、ゲーム時代やこの時代……まぁでもどっちでもいいんだけど、このヒートヘイズ洞窟に入った事ある?」

「ないでちゅよ。ぼく洞窟探検あまり好きじゃないでちゅちぃ」

「ゲームの時は?」

「……入っていないでちゅ」

「なんで?」

「……」


 なぜ、そこで黙る?

 先ほどは、話を逸らすし……


「どっした?」

「ぼくは、ゲームの時Level.35でちぃた。入る訳がありまちぇん……」

「ふむ」


 なるほどね……

 だから、ウォルガフはゲーム時代からいる魔物と今もいる魔物についてわからない部分が多くあるのか……

 ゲーム時代の仕様のままの部分だけは、ウォルガフより役に立ちそうだな。



 だが、この洞窟がゲーム時代と同じ仕様のヒートヘイズ洞窟だとしたら……

 無理をせずに引き返した方がいいのかもしれない……


「軽蔑ちぃまちぃたか?」

「えっ、なんで?」

「だってぇ、ぼくはリュウイたんみたいに高プレイヤーじゃなかったんですよ?」

「でも、今は俺より遥かに強いじゃん! 全然気にする事ないよ」

「えへへへっ」


 何を馬鹿な事を……と付け加え頭を撫で回している俺の手をウォルガフは、嬉しそうに受け止めていた。




 そして、ゆっくりとドアが開いていく……





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