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魔王に再び挑みたい!  作者: kiruhi
Level.1の呪い
12/77

【06】

「さて、じゃ行くか!」

「いぇ〜ぃ!!」

 そう話すガルシアにウォルガフは、満面の笑みを浮かべていた。


 待ってましたぁ〜と言わんばかりだな……


「待って、ガルシア」

 ガルシアを制止したのは、魔導師であるミラージュであった。

「どうした? ミラージュ」

「リュウイ、あなた魔法は使えるの?」

「いえ、まだ一つも使えません……」


 だって、Level.1だもん……


「ついて来るのは仕方がないけど、はっきり言って戦力にならないわよ…」


 グサリッ……


 わかりきっていた事だけど、面と向かって言われると傷つくな……

 嫌な人だな……


「と言う事で、あなたにこれを授けるわ」

 そう言ってミラージュは一冊の本を渡してきた。

「これは?」

「私が使っていた火系統の魔法の書よ。

 これを読んで理解できた時、初歩的な魔法なら唱える事が出来るわ」

「おぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」


 前言撤回っ!! ミラージュさん、いい人だっ!!


「ありがとうございます!!」

「まぁ、MPいくつあるのか私は知らないけどね……頼むから調子に乗ってMP切れとかにならないでよね」

「??」


 えっとぉMP切れになるとどうなるんだ?


「リュウイたん……」

「んっ?」

 考え込んでいる俺にウォルガフは、裾を引っ張りながら耳を貸せっと合図を送ってきていた。

 言われた通りに腰を降ろしウォルガフに耳を貸すと、コショコショと俺の疑問を教えてくれたのだ。


「MPはなくなっちゃたら、気絶してしまいまちゅよ……」


 ほぉ〜なるほどっ!


 俺はウォルガフにコクンっと頷き、分かった事を伝えたのである。


 ゲーム時代は、MPが切れても気絶とかなかったからなぁ〜

 確認しておいて良かったよ。


 後、魔法の取得方法も変わっていた。

 どうやら、Levelが上がれば勝手に魔法を覚えて行く物ではないらしい。

 この世界には魔法の書という物が存在し、店には売っているものではないのだ。

 その入手方法は、敵を倒して手に入れるか冒険者ギルドでの報酬。または先輩魔法使いから譲り受けるしか方法はないのである。

 そして、本がない限りどんなに魔法を唱えようとしても魔法は発動する事はないのである。

 俺としては、どうせなら三系統……

 火炎、冷気、雷撃を極めたいなと思っていたのだが……


 うん、先は長そうだ……


「その本、使いこなせたら次の本も上げるわ」

「本当ぉっ!?」

「えぇ、もう使わないしいいわよ」

「よしっ頑張ろう!!」


 ガッツポーズをしながら、俺はそう決意していた。


「そろそろいいかぁ」

 ガルシアたちは、待ちくたびれていたらしい。

 もう大丈夫な事を伝え俺は、いよいよ北の森へと向かう事にした。


 道中、ウォルガフに俺の足の裾を引っ張ってもらいながら、俺は前を見ないでミラージュからもらった魔法の書を読みふけっていた。


 そんな絶妙な光景を、四人は再び大爆笑していた。

 幼稚園児に連れて行かれる青年……

 確かに笑いは取れるな。



 魔法の書には、基本的な火系統の魔法が記載されていた。

 [フレアボール]必要MP8

 高温の火の球を作り出し敵にぶつける。


 [フレアアロー]必要MP15

 範囲魔法で、炎の矢で敵を射抜いて行く。


 [フレアストライク]必要MP25

 フレアボールよりも倍の大きな火の球を作り出す。


 [フレアストリーム]必要MP35

 フレアストライクを幾つも降り注がせる。


 今の俺の最大MPは28だから、[フレアストライク]まで使えるのかな?

 と思っていたら、そんなに魔法使いの世界は甘くはなかった。


 魔法には一つずつ魔法Levelと言う物があって、発動する毎に熟練度が溜まって行きLevelアップしていくらしい。


 フレアボールの熟練度を上げて、フレアアローを覚える。

 覚えたらまた、フレアアローの熟練度を上げてフレアストライクを……

 という感じらしい。


 めんどくせ〜

 これの何処が、強くてニューゲームなんだ?

 俺にはその恩恵に全く授かっているとは、とてもではないが思えないのだが……

 まぁ願わくは、魔法Levelにも魔王の呪い発動していないといいな……


 取り敢えず俺は、フレアボールを三回。

 唱える事が出来るようだ。

 果たして役に立つのかな〜




 ◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎



 よしっ!

 ミラージュさんからもらった、魔法の書の内容大体理解出来たぞ。


 そう思いながら、本を閉じた時には既に北の森へと到着していた。


 いつの間に……


「もう、いいのか?」

 ガルシアは笑いを堪えながら、俺に話しかけてきた。

「あっはい」


 グゥは、羨ましそうに俺を見ている。

 どうやら、ウォルガフのとった行動も今まで見た事がなく、自分もやってもらいたいようだ。


 ミラージュは、少し飽きれているようだ。


 だって、嬉しくて今すぐ使いたいじゃん!


 エクレウスは何も語らずにいた。


 何考えているんだろう……



「遠足気分はここまでだ。気を引き締めて行くぞ」

 ガルシアの言葉に、

「はい」

「はいでちゅ〜」

「了解」

「無理しないで……」

「………」

 と、それぞれ違った返答をしながら北の森へと入って行くのであった。




 北の森に一歩足を踏み入れると、確かに違和感を感じる事が出来た。

 ボス特有の空気が違う? というのだろうか……

 これが、ゲームだった場合ボスモンスター用のBGMが流れてきそうだ。


 更に五人はとてつもなく強かった。

 道行く先々に現れるモンスター全て一撃で葬り去って行く。


 流石、高Levelなだけはある。


 ひたすら進み、森を抜けると東○ドームぐらいの大きな広場へと出た。


 俺には、すぐに分かった……

 ここだっ!!

 と……


 前衛でもある、ウォルガフとガルシアは先に広場中央へと歩き辺りを見回している。

 後衛のミラージュ、グゥ、エクレウス、俺も辺りを警戒しながら距離を置きながら広場へと向かう。


「いないでちゅね……」

「あぁ、そうだな……」


 いや、どこかにいる……だが、どこにだろう……


 そう思っていると、頭上から危険信号を察知した。

 上に目線を向けると、飛行モンスター『グレートガーゴイル』Level.125

『グレートガーゴイル』はゲームの時代にもいた二十代ぐらいのプレイヤーが倒す、フロアボスモンスターでLevelは25ぐらいだった。

 この世界のモンスターはLevelが高い……のだろうか?


「上っ!!」


 と俺が叫ぶと同時に、グゥの補助魔法『オーロラシールド X』が発動し六人に淡く光輝くドーム型の防護壁が展開されて行く。


『オーロラシールド X』は、三十秒間どんな高威力のダメージでも受けさせない魔法である。

 Xは魔法Levelである。『オーロラシールド』の場合、高Levelになればなるほど、持続時間が延長されていく。


 グゥが『オーロラシールド X』を展開中に、ガルシアは味方を守る為に盾を構え、ウォルガフもいつでも攻撃出来るよう大剣を構えていた。


 俺はというと………

「下がりなさい!!」

 と、ミラージュに怒鳴られながら襟首を掴まれ、後方に下がらされていた。


 意外だったのは、エクレウスの行動だった。

 俺の言葉に、エクレウスは反応し『ジュ・ピター X』を発動しグレートガーゴイルに対して、鎖を巻きつけ動きを封じていた。


『ジュ・ピター X』は強制的に敵の動きを十秒間だけ止める事が出来る魔法である。

 最初は紐状の物で余り動きは止める事が出来ないが、Levelが上がるにつれ動きを封じる能力は強化されていくのである。


 エクレウスの『ジュ・ピター X』のお陰で、グレートガーゴイルの奇襲攻撃を未然に防いでいたように俺には思えた。


 これが外れ念動力士の場合、『ジュ・ピター 』のLevelが低く発動しても効果はなかった事だろう。

 それだけで、エクレウスは優秀だと言う事を俺の中で、証明してくれた。

 エクレウスの『ジュ・ピター X』の発動中にガルシアは、空高く飛び上がりグレートガーゴイルに一太刀。

 傷を負わせなくてもいいのだ。ガルシアの目的は、グレートガーゴイルの注意を向けさせる事だった。


 俺の言葉で、各自が取った行動は素晴らしかった。

 ゲーム時代でも、ここまで息のあったパーティに俺は滅多に出会った事はない。


 次に彼らがとった行動といえば……

『ジュ・ピター X』の効果が切れグレートガーゴイルの攻撃が、ガルシアに向けている間に後方で魔力を溜めていたミラージュから放たれる『フレアアロー X』だ。

『フレアアロー X』は無数の矢となり、全矢命中して行く。


「ぎしゃぁぁぁぁぁぁ」


「ガルシアたんっ!!」

「おうっ!!」

 と言う掛け声と共に、高度を下げてくるグレートガーゴイルに対し、ガルシアはウォルガフを掴みハンマー投げのように勢いをつけグレートガーゴイルより高くウォルガフを放り投げたのだ。

「あっ悪い、高すぎた」

「大丈夫でちゅ」


 空を飛びながら余裕を見せるウォルガフは回転しながら、グレートガーゴイルを上から真っ二つに切り裂いたのであった。


 うひょ〜すげぇ〜

 あんなの俺でも無理!!

 ウォルガフが小さいから出来る事だな……


「着地成功〜でちゅ〜」

 ポーズを決めるウォルガフであった…….


 かっこいいんだが、可愛いんだが分からんな……




 グレートガーゴイルは真っ二つにされながらも、消滅せずに地面に倒れこんでいた。

「しっかし、こいつはでかいな」

 倒したグレートガーゴイルの元へと皆が集まると、ガルシアはボソリとそう呟いていた。


 確かにグレートガーゴイルはでかかった。

 前に見たケツァルコアトルスよりは、小さいがそれでも全長五mぐらいあった。

 普通はせいぜい二mぐらいなのだが……

 魔王の世界は全般的にLevelが高く、それに伴って大型になっているのだろうか?


 それにしても、なんだろう……

 確かにグレートガーゴイルは倒したはずなのに……

 嫌な予感がする。


 何か忘れているような気がする……思い出せ……俺!!


「まぁ、取り敢えずこれで依頼達成ね」

「うむ……」

「はいでちゅ」


 なんだっけかな………

 グレートガーゴイルは……


「よし、帰るか」

 とガルシアがグレートガーゴイルに背を向けた時だった。


 突然、グレートガーゴイルから紫色の煙が俺たちを襲いかかってきた。

 あっという間に視界は封じられ、身体の痺れと毒がかかったような怠さを一気に感じた。


「これはっ!!」

「やっやばいでちゅ!!」

 グゥとウォルガフの言葉が危険を知らせようとしていた。

 だが、もうすでに手遅れだった……


 バタバタとその場でガルシアたちが倒れて行く中、俺もその場で片膝をついていた。


 紫色の煙で俺はようやく思い出す事が出来た。

 グレートガーゴイルは、倒した後も消滅するまで攻撃を行わなければ進化するモンスターだ……

 進化後は、Level.80代のプレイヤーが五人、束になってやっと倒せるボスモンスターへの変貌するんだ。

 Levelも飛躍的に上がりLevel85となり、能力も強力でHPを徐々に減らして行く毒霧と、動きを封じる麻痺霧……視界を不明確させる霧といった迷惑極まりないモンスター『スモークガーゴイル』へと進化してしまう。


 レア物を落とさない理由と雑魚ボスモンスターな事と、進化すると凶悪なボスモンスターになる為、普段からあまり倒されないモンスターであった。

 俺自体も、一回ぐらいしか倒した事がない。

 言い訳するつもりじゃないが、進化する事なんてすっかり忘れていた。


 くそっ……


 スモークガーゴイルから吐き出される霧は、HPが高ければ高い程減りが速く症状も重くなってしまう。

 ガルシアは、すでに全身痙攣を起こしながら……それでも意識を保とうとしている。

 エクレウスとミラージュは既に気を失っていた。


 グゥだけは、自分の身を守る魔法『フィールドシールド V』 を咄嗟に唱える事が出来たのだろう……

 魔法に守られていた。


 僧侶の死は、パーティ全員の死を意味している。

 グゥの判断は正しい。

 だが、目の前にいるスモークガーゴイルを倒さない限り、幾ら解除魔法を俺たちに唱えても意味はない。

 そして、グゥには攻撃する手段を持ち合わせてはいない……どうする事も出来ないのである。


 ウォルガフと言えば、耐性があるのだろうか平気な顔をしていた。

 でも、どことなく表情が険しい……


 動けない俺に近づきながらも何やら話しかけてきた。

「リュウイたん」

「……」


 なんだょ……


 返事をする余裕もない俺にウォルガフは、泣きそうな顔をしている。

 俺の少ないHPも残り5を切りそうだった。


「あの、モンスター(モンチュタァ〜)倒ちゃないとダメなんでちゅけど」


 うんうん、わかっているなら、早く倒してよ……

 俺よりも他の仲間たちの方が先に死んでしまうぞ。


 などと言葉にならない返事をしていると……


(じちゅ)は、さっき大技を使っちゃったから、力が出ないでちゅ……」


 おぃおぃ……まさか、こんな時にかよ……


「お腹ちゅきまちぃた」 てへっ♪

 と付け加えているかのように、ウォルガフは俺に言ってきたのだ…….


 食べ物あるけど……

 身体が思うように動かない……だから、アイテムボックスからお弁当を上手く取り出す事が出来なく、ウォルガフに渡す事は出来なかった。

 そんな時、俺のHPが3になった。


『システム開放します』

 と、システムメッセージが流れてきた。


 あっそうか、パッシブスキル『転生者』が発動したのか。

 確か、一時的にゲーム時代の能力が解放され、現在の能力に上乗せされるんだったな……


 魔法使いの俺にとって意味はあるのか……?

 と思っていたのだが、何故か身体軽い。

 動けそうだ……


 不思議に思い、自分のステータス画面を開いてみると、剣士Level.99だったはすが何故かLevel.255になっており体力と力が今まで見た事もない……それこそチート的な数字になっていた。

 耐性◎になっており、この霧が平気な事もわかった。


 俺は、立ち上がった。

「リュウイたん??」

 不思議そうな顔をしているウォルガフの頭を撫で、アイテムボックスから俺が愛用していたダマスカスブレードを取り出す。

 思っていた通り、サブ職業を剣士にしていたお陰でこの時だけ高Levelの剣を装備する事が出来た。


 どれっ、まずはLevel.255の力、どれ程の物なのか見てみるか……


 左足を一歩前へと踏み出し、ダマスカスブレードを持っている手に力を込めながら一振り……

 空気が裂けたような音と共にスモークガーゴイルを一撃で斬り伏せていた。


「リュウイたん、かっかっこいいでちゅ………」


 僅か三十秒……

 スモークガーゴイルが消え去ったのと同時に霧も消え『転生者』の発動を停止したようだった。


 パッキーーン!!

 と愛用の剣は、粉々に砕け散り柄だけが残っていた。

 柄のみになったダマスカスブレードを見つめながら、ショックだった……

 確かにそれなりに力を込めた一撃だった。

 でも、まだまだ全力ではなかった。


 レアだったのにぃ〜!!!


 と思いながら名残惜しそうに俺は、柄をアイテムボックスに収納したのであった。



 しくしく……

 力、加減がわからん………






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