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魔王に再び挑みたい!  作者: kiruhi
Level.1の呪い
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【04】

 魔王の呪いを解いてくれる者が、この世界にはいるらしい。

 しかし、ウォルガフが知らない以上、他に手がかりは冒険者ギルドしか俺には思いつかなかった。


 冒険者ギルドに着いた俺は、真っ直ぐ受付のお姉さんの所へと歩み寄って行く。

 ウォルガフは珍しく酒場に直行せずに、俺の後ろをトコトコとついて来ていた。


「おはようございます」

「おはよう、リュウイさんとウォルガフ」

「おはようございまちゅ。お姉たん」

「今日はどんな依頼にする? 二、三種類あるんだけど?」

「ん〜あのですね。今日は依頼じゃなくて聞きたい事があるんですよね?」

「あら、そうなの? 私でわかるかしら」

「えっ〜とですね。呪いを解ける人、知っていますか?」

「えぇ、知っているわよ」

 お姉さんはなぁ〜んだ、そんな事ね。と言わんばかりの顔をしながらしれっとそう答えていた。


 おっマジかよ!? ラッキー♪


「どっどっ……どこにいるのですか?」

「『ムーンフェイズ』を支配している、ぺディリヴァ様や他の魔族四天王様たちなら普通に呪い解除出来るわよ」

「!?」


 あはははは……

 無理だ……

 魔王を倒す目的の俺の為に、魔族四天王が魔王の呪いを解いてくれるとはとても思えない……


「でも、リュウイさんはぺディリヴァ様に会う事は出来ないわね」

「えっ? そうなの?」

「ランクがSS以上にならないと、ぺディリヴァ様に謁見は出来ない決まりになっているわ」

「へぇ〜じゃウォルガフも無理なの?」

「うにゅ?」


 会話についていけないウォルガフだったが、名前を呼ばれて不思議そうな顔をして俺を見つめていた。


「リュウイたん、おかちぃ頂戴♪」

「……はいはい」

 懐からチョコレートを渡すと、ウォルガフは床に座り込みながら美味しそうに食べ始めている。


「コッホン……ウォルガフは、会おうと思えば会えるわ」

「冒険者ランクSなのに?」

「本当はもうSSランクなんだけど、ウォルガフがランクアップを嫌がるのよね」


「普通なら大喜びなのに……」

「ほぉ〜? なんでだい?」

「ふみゅ?」


 話、聞いていなかったのかよ……


「なんでウォルガフは、SSランクにならないの?」

 口の周りにたっぷりとつけたチョコレートを、手で吹きながらウォルガフは教えてくれた。

「だってぇ〜SSランクになっちゃたら、ぼく魔王ちゃま直属(ちょくぞょく)の配下になってちまいますもん」

「??」


 それは、それでいい事なのでは……?


「そちぃたら、気ままな旅は出来なくなりまちゅち、リュウイたんと離れ離れになってちまいまちゅ」

「なるほどっ」


 ふむふむ、ウォルガフがSSランクになり魔王直属になってしまうと、魔王との対決の時にウォルガフと俺は戦うハメになってしまうな……

 よしっ、Sランクのままにいてもらおう。


 しかし、そうなると困ったな……

 このままだと、Levelが一生[1]のままだし、魔王に再び挑む事なんて夢のまた夢だな。



「あの、魔族四天王様以外に他にはいないんですか?」

「ん〜後は信仰系統の人……

 つまりムーンサン族やデューンキーパー族の中で極たまにいるらしいけど、大金が必要らしいわね」

「大金ってどれくらいですか?」

「噂では、金貨80枚以上とか……」


 8000G以上か……

 払えない金額ではないが、確かに今までそんな金額は聞いた事はないな。

 家一軒建てるのに金貨一枚ぐらいだし……

 家がいっぱい建てる事が出来るよ。



「でも、支払った所で初歩的な呪いしか解けないらしいから、私的にはオススメしないわよ」

「他の種族は、信仰系統になれないの?」

「まぁ……なうと思えばなれるけど……

 そもそもガルヴァルデ族は、筋肉質な人たちばかりで適正ではないから好まれていないわね」

「ウォルガフの種族は?」

「フォス族ね。

 フォス族は器用貧乏が多い種族だから、魔法が得意なムーンサン族や召還や遠隔操作、結界を得意としているデューンキーパー族より能力は低いわね」

「へぇ〜」


「因みにウォルガフは……?」

「突然変異ね」


 お姉さんは即答してくれた。


 やはり……そうか……

 ならウォルガフが、信仰系統になればいいのでは?

 いゃ、今更無理か……


「ふみゅ?」

 と頭の上に? を浮かべながら、残っていたチョコレートをウォルガフは美味しそうに食べていたのである。


「所でリュウイさんは、何の呪いを解きたいの?」

「……」

 即答できなかった……

 答えて良い物なのか、俺にはわからなかったから。


「なによ? 聞いておいて答えられないの?」

「……魔王の呪い」


 その言葉を発した途端、受付のお姉さん以外にもその場にいた冒険者も聞いていたのだろうか?

 空気が一瞬凍りつき、俺の方を見てきた。


「あっ……あなた……一体何者なの?」

「えっ?」

「魔王様の呪いと言えば、魔族四天王様に近づける可能性がある持ち主の証なのよ」

「へぇ〜」


 でっ? その解除方法は……?


「ぼくも誕生当初(とうちょ)は、そう言われまちたよ」

「ウォルガフは、今もそうでしよ!?」

「てへっ♪」

「どういう事?」

「つまりね……」


 お姉さんの話し曰く、ウォルガフの力は魔族四天王であるフォスの種族王である『ミクロス』を既に超えているらしい。

 高齢の為そろそろ跡継ぎを……

 と考えているらしいが、ウォルガフは種族王になる事を拒み続けているとの事だ。


「だって、お菓子(おかちぃ)なにちぃ〜、毎日、難しちぃ話ちばかりなんでちゅもん」

「……」


 との事だが、それを理由にウォルガフは、俺の転生をずっと待っていてくれたんだと思う。


「それで、魔王様の呪いってやはり……」

「リュウイさん予想通りLevelが封印されているわね」


 だよねぇ〜


「はぁ……リュウイさんがなぜLevel.1のままなのか、そしてなぜLevelが上がらなかったのか……

 これで納得出来たわ」

「解除方法は……?」

「そんなの私、知らないわ」


 ガーーーンッ!


「やはり魔族四天王の人たちに会うのが手っ取り早いんじゃないかしら?」

「でも、俺は会えないと……」

「そうなるわね」


 結局、八方塞がりじゃないか……


 どうしょ……


「リュウイたん……」

 肩を落とし、落ち込んでいる俺にウォルガフは服の裾を掴みながら心配そうに見つめていた。


「……お腹ちぃたでちゅ」

 別に心配してくれていたわけではなかったらしい……


「はははっ……ご飯食べに行くか……」

「はいでちゅ♪」


「ご飯〜ご飯〜おいちぃご飯〜♪」

「ごめんなさいね。力になれなくて……」

「いや……しょうがないですよ」

「で? 結局どうするの……?」

「……わかりません。でも俺は強くならないと行けないんです。

 ……だから探し出します」

「呪い解除できる人を?」

「えぇ……」


 そうだよ。

 システムメニューにあったよくある質問『強くてニューゲームについて』の中に、『呪いを解ける者が、この世界には存在しています。探し出し呪いを解除してもらいましょう』と書いてあるんだ。何処かにいるはず!!


 当てなど全くなかった。

 でもそれでも俺は、いつか会えるだろう……

 そう信じる事にしたのだ。




 ーーーーーー



「ぷはぁ〜お腹いっぱいになりまちぃたぁ〜」

「良かったね」

「はいでちゅ!」


 さてと、これからどうするかな……


「あれ? ウォルガフ……?」


 後ろを振り返ると、何故かウォルガフは数メートル後方で立ち止まりうつ向いていた。

 食べ過ぎてお腹でも痛くなったのだろうか?


「どうした?」

「あのね、リュウイたん」

「んっ?」

「ぼく、ランクアップの手続きしてSSランクになってもいいでちゅよ……」

「……」

「そ(ちぃ)たら、リュウイたんはペディリヴァ(ちゃま)に御目通りが叶いまちゅ。

 そちぃたら、リュウイたんの呪いの事……

 もちぃかちぃてぇ……」

「でも、そうなれば俺は、ウォルガフと離れ離れになるんだよな?」

「そうなりまちゅ……」


 ったく、ウォルガフ……お前……そんな事を考えていたのか……?

 食べ物の事しか、頭にないと俺は思っていたぞ。


 ふぅ〜と一呼吸置き、俺はウォルガフの元へと近づいていき、頭をクシャクシャと撫でまわす。

 そして……

「ウォルガフは、今までずっと俺の事待っていてくれていたんだろ?」

「……うん」

「そして、漸くつい最近それが叶ったんだろ?」

「……うん」

「ウォルガフは俺と離れ離れになりたいのか?」

「……」


 ブンブンと短い首をウォルガフは横に降り続けていた。


「そうだよな。俺もウォルガフと離れ離れになりたくないよ」


 食事量はかなりかかるし……

 我儘だし……

 でも、凄く強い頼れる者……

 見た目は、幼稚園児だけどな……


「……リュウイたん。でも、呪い……」

「呪いは、依頼受けまくって知り合った人に色々聞きまくろうと思う」

「……」

「だから、ウォルガフが無理してまで、SSランクになる必要は全くないよ」

「むっ無理なんて、ちてまちぇんよ!」


 そんな泣きそうな顔をされながら、無理していないって言われてもなぁ……

 まだ、納得出来ないか。

 しゃあないな……


「それにさぁ、ウォルガフがいなくなったら折角出来上がるお菓子の家……どうするんだよ?」

「うちゅ……?」

「俺一人で、生活出来ないんですけど……?」

「……」


 おっ少しウォルガフの目がキラキラと光り出してきた。

 最後の一押しだな。


「要するにだ、これからも俺の側にいてくれって事だよ」

「……リュウイたん」

「よろしくなっ、ウォルガフ!」

 俺の差し出した手に、ウォルガフはモジモジとしながらも、小さな手が重なり合って行く。


 そして、よろちくでちゅ。

 と、ウォルガフは俺に聞こえないぐらい小さく呟いていた。


 敢えて、俺は気がつかないふりをしていた。

 だってウォルガフは耳まで赤くしているんだもん。

 面と向かって言うのは照れくさいらしい。


 家が出来上がるまで三ヶ月あるし、その間依頼達成しまくるかぁ〜




 ◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎



『ムーンフェイズ』より北に進む事、約三十分……

 比較的近い距離に、北の森と呼ばれる狩場がある。

 北の森は、素材に恵まれたり、Level.100未満のモンスターしか出現しない為、低ランク(F、Eランク)の者たちが採取したり、中ランク(D、Cランク)の者たちが、モンスターを倒しその素材の納品にと……

 よく活用される人気の狩場の一つであった。


 現在、北の森にはCランクの冒険者が、三名討伐依頼を完遂するべく訪れていた。


 前衛が敵を引きつけている間に、魔法使いは後方から炎系の魔法で仕留める。

 パーティプレイを組む戦闘において、基本中の基本とされていた。


「よしっ! これで依頼は達成だな」

 剣士風のガルヴァルデ族の男性は誇らしげに仕切っていた。


 敵を最後に仕留めた魔法使いのムーンサン族の女性も、無事に依頼が終わった事に安堵している様子であった。

「あっあの、ありがとうございます」


「いやいや、困った時はお互いさまですじゃ」

 そう話すのは、老齢の結界士デューンキーパー族である。


 そもそも事の発端は、魔法使いが依頼を受けたのだが一人では達成できない事に依頼を受けた後に気づいたというかなり間抜けな話である。

 次第に期日は刻々と迫り、魔法使いは困り果てた時……

 剣士と結界士が酒場で落ち込んでいる魔法使いと出会い、依頼をこの二人は手伝う事にしたのであった。


「本当にありがとうございます」

 深々とお礼をしている魔法使いに対して、剣士は眉間にシワを寄せ険しい顔をしていた。


「?」

「老師……」

「いい感していますね。森の奥に何かがいますね……」

「えっえっ?」

「老師、確認してから冒険者ギルドへ報告したいと思います」

「危険と判断したら直ちに撤退ですよ?」

 剣士に念を押すように結界士はそう話し、慌てふためく魔法使いを連れ、剣士と結界士は森の奥へと調べに行くのであった。



 森をひたすら真っ直ぐ進むにつれ、三人は未確認の敵の能力に圧倒され始めていたのであった。

 だが、このまま冒険者ギルドに報告しても、敵の姿、種族などがわからない限り信憑性はないと言われる事を知っているが故に、彼らは危険を承知で先を進むのであった。



 森を抜け、大きな広場に出た三人は、驚きが隠せなかった。

 敵は目に入る範囲内には存在していなかったが、既に大量の冒険者たちが彼らの目の前で死に絶えていたのだ。

「なっなんですか……これは……」

 魔法使いは、声を震わせていた。

「……」


 剣士の結界士も、その質問には答えずにいた。

 彼らも己の判断で状況判断に戸惑っていたからである。

 そんな時……

 空から突如、羽ばたき音と共に強風が巻き起こり始める……

「えっ!?」

 と思った時には、剣士の左腕が魔法使いの目の前を通り過ぎて行くのであった。


「あっあぁ……」

 魔法使いは、自分がなにをやったらいいのか……

 今、この現実に何が起こっているのか……

 なにが、なんだがわからなかった。


 返り血を浴び、目の前には血吹雪が舞い散りながらも、

「にっ逃げろ……」

 と言葉を残し、剣士は出血大量で動かぬ者へと変わり果てて行く。


「こいつは、やばいですね」

 結界士は即座に自分と魔法使いの周りに結界を張り、第二射に備えるも敵は二人もろとも粉々に散らせて行くのであった。



 三人が未確認の敵に殺されてしまう出来事から、半日後……

 冒険者ギルドでは、今日が依頼期日である魔法使いを助ける為に、冒険者二人と共に北の森へと赴いているが一向に帰ってこない。

 との事でギルド関係者たちの間では、その話で持ちきりだった。


 不思議に思った冒険者ギルドはSランク冒険者の一人である、ガルヴァルデ族の盾の使い手で有名なガルシアを北の森へと派遣。

 その場の判断で引き返すのもよし、助けるのもよしと言う内容で依頼を受けガルシアは出発した。


 北の森へと入ったガルシアは、足を踏み入れた瞬間長年培ってきた経験からこれはやばい! と感じ取っていた……


 ガルシアは現場を確認しないまま、冒険者ギルドへと引き返し自分を含むSランク冒険者五名程必要と受付に要請するのであった。






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