表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王に再び挑みたい!  作者: kiruhi
プロローグ
1/77

【01】

「いやぁぁぁぁぁっ!!」


 叫び声が聞こえる……


 視界がぼやけて見えるな。

 なんでだろう。


「リュウイ!」


 そう呼ぶのは、俺の相方のハグだ。


 ハグは俺と同様、Level.99のヒーラーだ。


 顔を真っ青にしながら俺に、回復魔法をかけてくれている。


 だが、効果はないようだ。

 意識は次第に薄れて行く……

 俺は死ぬのだろうか?


 ラスボスにハグと一緒に挑んで、それからどうしたんだっけ……?


「リュウイ! リュウイ!!」

「だっ大丈夫だよ。ハグ……神殿で生き返られるから……」


 その言葉を残し俺の身体は、光の粒となり弾け飛んで行った。




 ◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎



 俺の名前は、竜崎りゅうざき 真也しんや

 相方のハグは、波動はどう 綾芽あやめ


 俺は、オープンβからやり続けている古参のMMORPG《剣と魔法と魔王》というオンラインゲームにはまっていた。

 ハグは隣近所の幼馴染の一つ年上のお姉さん。

 顔を合わせればいつも喧嘩ばかりしていた。

 でも、俺が高校を卒業した時に実はハグも《剣と魔法と魔王》をやっていたという事がわかり、それからゲームの中で一緒にプレイするようになった。


 それからかな?

 気がついたらハグとリアルでも会うようになっていた。


 でも、デートというものは全くした事がない。

 デートしなくてもオンラインゲームの中で、毎日会えるのだから……

 ついでに隣近所だしね。



 そんな、ある日……

 《剣と魔法と魔王》は大型アップデートが行わられる。

 当時別々の大学に進んでいた俺とハグだったが、その日は休みを取り半ば強引に俺の部屋で一緒にやろう!

 と話をつけていた。


 部屋を片付けて、パソコンを二台並べた頃タイミング良くハグはやってきた。

「待った?」

「大丈夫、まだメンテ終わってないから」

「そう……」


 ハグが来る前に二台ともアップデートに必要なパッチは終わらせている。

 後は、メンテナンスが終わるのを待つのみだ。


「初めて入ったけど、思ってたより綺麗にしているのね。意外だったわ」

「意外とは、失礼な!!」


 まぁ、三時間ぐらいかけて掃除はしたんだけどね。


「そういえば、今日のアプデってどんな内容だっけ?」

「えーと……」

 ハグの質問に公式サイトを開きながら読み上げて行く。


「うーん、目玉は魔王の復活。新モンスターの追加、武器防具の限界解放ぐらいかな?」

「へぇ〜」

「魔王復活ってラスボスだよね……倒したらエンディングあるのかな?」

「さぁ〜」


 ハグとの会話は主にゲームの話が多い。

 大学での話とかもたまにはするが、七割以上はゲームの話をしている。

 作戦はこーしようとか、あの時はこうするべきだったとか、色々な話しをする。

 そのおかげなのか、《剣と魔法と魔王》で俺とハグは結構有名なプレイヤーになっていた。

 トップはもっと強いけどね……

 ベスト五ぐらいには入っているかな?

 入っていたらいいけど……



 パソコンの時刻が十五時を告げた……

 公式サイトからメンテナンス中の文字が消えたのと同時に俺とハグはログイン……



 Now Loading……

 Now Loading……

 Now Loading……

 と文字が浮かびあがる中、一瞬ブラックアウトしたような……

 それと同時に、激しい頭痛のような感覚と共に、無理矢理再接続されたような……そんな感覚に見舞われた。



 Now Loading……

 の文字が消え、『ようこそ、剣と魔法と魔王の世界へ』と文字が浮かび上がってくる。


 鯖落ちしたのかな?

 とも思ったが、大丈夫だったようだ……




 しかし、異変に気がついたのは、その後だった。

「あっははははははは…………」

 風が頬を当たる……

 大地の匂いもする。

 身体の感覚もする……


「まじ?」

「マジみたい……ね」

 俺とハグは同じ場所に立っていた。

 そして、お互いに顔を見合わせる……

 オンラインゲームだった、《剣と魔法と魔王》は俺たちの中で現実世界なってしまったようだ……




 最近、VRMMORPGのアップデート後、忽然と人が消えてしまう。

 そんな噂を聞いた事はあるが、まさか、MMORPGで……

 しかも、自分たちの身に起こるとは思っても見なかった。



 でも実は俺、ちょっと嬉しかった。

 ゲームの世界に入れるなんて、廃ゲーマーなら一度は体験してみたいと思うだろう?

 大好きなゲームならなおさらそう思うだろう?

 ちなみに俺は、ずっと思っていた。


 だから、対して驚きとかはなかった。

 むしろ、やったぜっ!!

 とガッツポーズをとってしまったかもしれない。


「コホン……」

 ハグの咳払いに、慌てて気を引き締め、とりあえずお互いのステータスを確認する事にしてみた。


 ーーーーーーーーー


 名前:リュウイ

 種族:ヒューマン

 Level.:99

 JOB:剣士

 武器:大剣

 HP:500

 MP:0

 SP:100


 攻撃力: 255

 防御力: 255

 素早さ: 30

 魔法力: 0


 ーーーーーーーーー


 どうやらステータス自体はゲームの時と変わっていなかった。

 なら一度は、やって見たかった事を実行するべきだろ!?


 死んでも神殿で生き返る事が出来るはずだから、この状況下で誰も思いつかない事をやって見たかった。

 今日のアップデートで追加されたラスボス……

 つまり、魔王退治だ。


 俺とハグのLevel.99だ。

 これ以上Levelが上がる事もない。


 もしかしたら、あっさりと倒せてエンディングを迎え現実世界に戻れるかもしれない。

 それに、仮に倒せなくても、殺されたら神殿に戻されるだけだ。

 何も問題ない。



「ハグ、行こうよ!」

「いや、でも……本当に神殿で生き返られる保証はあるの?」

「大丈夫だよ! 行こう!!」

 反対しているハグを、何度も説明しながら無理矢理俺は、ラスボス退治に出発する事にした。



 ラストダンジョンのモンスターは、Level.99の俺たちの敵ではなかった。

 傷ついてもハグがすぐ回復をしてくれる。

「ここのモンスター弱すぎだね」

「油断しないでね」

 少し調子に乗っていた俺を、ハグは戒めてくれる。


 だって弱いんだもん……

 魔王だってきっと弱いに決まっている。



「ここだな」

「うん、殺気がピリピリと伝わってくる」

 鉄で出来た重厚な扉を、ゆっくりと押しながら扉が開いて行く……



 玉座には魔王と思われる魔物が俺たちを睨みつけている。

 画面越しでは感じられる事は、出来ない圧倒的な力の差を感じる。


 はっきり言ってLevel.99で手に負えるモンスターではない。

 俺が甘かったようだ。

 ハグの言う通り、やめておけば良かった。

 最初に魔王と対面した時、俺はそう思った。


 しかし、扉は既に閉じられピクリとも動く気配はなかったのである。

 なら倒して、ここから出るしかないだろう!!


 ハグにアイコンタクトを送り、強化魔法をかけてもらう。

ディファー(防御強化)!! ホジューム(攻撃力強化)!!

「ありがとう!」


 防御力と攻撃力が二倍に以上に強化されていく。

 俺は魔王に向かって行きながら大剣を振り下ろす。

「魔王っ覚悟ぉぉぉ!!」


 俺の剣は確かに魔王に当たった。

 だが、魔王の指先一つで俺の愛剣は、粉々に砕け散ったのだ。

「なっ!!」

「リュウイ!!」


 魔王は玉座に座りながら、不気味な赤黒い目を光らせながら俺を見つめている。


「ぐはっ!!」

 次の瞬間、魔王が俺に向けて指先から衝撃波みたいな物が放たれる。

 俺の身体は五、六回転しながらハグの所まで吹き飛ばされてしまった。


「いってぇ〜」

「大丈夫?」

「うん。でも、魔王強すぎ……」

「だね……」

 たった一撃で俺のHPは100未満を切ってしまった。

 Level.99のプレイヤーが束になってかかったとしても、傷一つ付けられないんじゃないか?


「ハグ、ゴメン……俺が間違っていたよ。魔王は俺たちの手に負えるモンスターじゃなかった……」


 ラスボスだけあって強い。


「まぁ、リュウイの無茶振りには慣れているからそれは構わないけど。最後まで足掻いてよね」

「……」


「そうだね。少しぐらい魔王の能力を暴いて持ち帰ろう」

「うん」

「回復と補助を、もう一度頼む」

 ハグは頷き、回復魔法と再度補助魔法をかけてきてくれた。

シェルク(HP強化)! エテダー(素早さアップ)!」

「よしっ!!」


 俺は再び魔王に向かっていく……

「うぉっぉぉぉおおぉぉ!!」


 カスンッ!


 俺の拳は魔王の右頬を微かに触れた、そんな感覚がした。


 当たった!?

 もしかして、魔王倒せるのかな?

 そんな淡い期待をしていたのだが、後ろの方からハグの叫び声が聞こえてきた……


「いやぁぁぁぁぁっ!!」


 ハグ、どうした!


 あれ? 言葉にならない……

 視界もぼやけて見え、魔王の姿が霞んで見えてきた。


 なぜ……?


 左胸あたりがじんわりと熱い……

 目線を左胸に向けると、ハグがなぜ叫んでいたのか俺にも理解出来た。

 魔王の右腕は俺の心臓を正確に貫いていた。

「っ!!」


 遠くの方から、ハグの必死の回復魔法が聞こえてくる。

 しかし、今の俺には効果がないようだ……

 二倍に強化されていたはずのHPがどんどん減っていくのがわかる……

 HP284……

 HP105……

 HP59

 HP35……

 ゼロになる前に俺は、最後の力を振り絞りながらハグの方へと振り向く……

「だっ大丈夫だよ。ハグ……神殿で生き返られるから……」


 その言葉を残し俺のHPはゼロになり、光の粒となって弾け飛んで行った。



 それから先、ハグがどうなったのか俺にはわからない……




 ◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎



『あなたは勇敢に魔王に挑みましたが、殺されました。コンテニューしますか?』

 ▷【はい】・【いいえ】

 そんなメッセージが俺の脳裏に浮かび上がってきた……


 コンテニューするに決まっているじゃん……

 でも【いいえ】にしたら俺は、元の世界に戻れるのかな?

 いやいや……折角の現実MMORPGもう少し楽しもう。


『あなたは勇敢に魔王に挑みましたが、殺されました。コンテニューしますか?』

 ▶︎【はい】・【いいえ】


『コンテニューします。引き続き《剣と魔法と魔王》お楽しみ下さい』


 Now Loading……

 Now Loading……


 Now Loading……これが消えれば俺は、神殿で生き返っているはずだ。

 ハグも神殿に戻されているだろうな……

 二人で力をつけ、魔王にリベンジだな。


 そんな事を考えていたのだが、一向にNow Loading……の文字は消えなかった。

「??」


 不思議に思っていても、俺には何もできないので取り敢えず消えるまで、しばらく待つ事にした。

 すると……



『あなたは魔王に最初に挑み殺された者として、特別特典があります。受けますか?』

 ▷【このまま続ける】・【強くてニューゲーム】


 なにこれ……?

 こんなの聞いた事ないぞ?

 あぁ、そうか。

 今日の大型アップデートで追加されたのかな?

 強くてニューゲーム!

 実にいいなっ!!

 魔王、倒せるかも!?


『魔王に最初に挑み殺された者として、特別特典があります。受けますか?』

【このまま続ける】・▶︎【強くてニューゲーム】


『強くてニューゲームが選択されました。職業をメイン一つ、サブ職を二つ選んでください』


 えっ?

 前は一つだけだったのに?

 職業三つも選べるの……!?

 これが、特別特典って奴か……うーん、何にしよう……

 メインは、今まで通り剣士にしよう。

 いや、でも破壊力抜群の魔法使いも捨てがたいな……



 よし! 決めた!

 メイン職業:魔法使い

 サブ職業:剣士、空欄


 これでいいや。


『サブ職業が一つしか選ばれていません。ゲーム開始後に選択する事になりますが、よろしいですか?』

 ▷【はい】・【いいえ】


 いちいち選択するのめんどくさいなぁ〜

 ▶︎【はい】・【いいえ】


『設定を保存しました。Level.1からゲームを開始します』


 えっ!?


 Now Loading……

 Now Loading……


 Level.99まで上げたのにLevel.1になるの?

 ちょっとまってぇ〜〜


 Now Loading……

 の文字は消え、俺は教会で目を覚ました………


 先程まで着ていたはずの鎧はアイテム欄に戻されて、変わりに薄く軽い布の服を着ていた。


 マジかよ……


 恐る恐るステータス画面を開いてみる。


 ーーーーーーーーー


 名前:リュウイ

 種族:転生ハイヒューマン

 Level.:1

 メイン職業:魔法使い

 サブ職業:①剣士 ②選択可

 武器:なし

 HP:10

 MP:28

 SP:0


 攻撃力: 8

 防御力: 6

 素早さ: 8

 魔法力: 20


 ーーーーーーーーー


 よわっ!!!


 はぁ、参ったな……

 また、一からレベル上げかよ。


 ハグに協力してもらうか……


 ハグと言えば、あの後ハグはどうなったんだろう……


 教会の周りを見渡してみるが、ハグの姿はどこにもなかった。

「ハグ……?」

 まだ生きて魔王の元にいるのだろうか?

 いやいや、そんな馬鹿な……


 メニュー画面を開き、フレンドリストを表示させる。

 フレンドリストを開けばその者の現在地を表示してくれる。

 しかし、システムメッセージが表示してきたのは、『フレンドはいません』だった。

「えっ?」

 俺が今までに登録してきた、フレンドリストが誰一人表示されなく、空欄だった。

「……」


「マジかよ……取り敢えず……外に出て見るか……」


 教会から出た俺は、更に驚いてしまった。


 空は暗く……

 モンスターが、空を飛んでいる。

 街などはなく、そこには廃墟しか残されていなかった。

「……」


 どうやら、強くてニューゲームは……俺の知っている《剣と魔法と魔王》の世界とは全く別物な設定になっているらしい………


 責任者出てこぉーい!!






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ