『』
タイトルが決まりませんorz
とりあえず思いついてから更新します。
こういうのがいいんじゃないか?というのが
あれば、ぜひともご提供いただければありがたいです<(_ _)>
「話の前に一応自己紹介をしましょうか」
結局全員分のお茶を用意した白莉は、椅子に座りながら真司に向き合った。
「私は如月白莉。この部の部長を務めているわ。ついでに生徒会長もしているわ」
「生徒会長がついでかよ…………俺は黒川雹也だ。よろしくな」
「私のことは知っているよね。よろしくね」
自分の役職をついで扱いする白莉。それに対して雹也が呆れながら突っ込み、志穂は二人を無視して真司に笑顔を向ける。
「…………須藤真司です。よろしくお願いします」
コントの様なやりとりに、真司は何とも言えない表情で自己紹介をした。
昨日の戦闘が嘘の様な光景だ。あまりにもシリアスだったのが一転、ここまでふざけた雰囲気になるとは予想していなかった。
ここに来るまで緊張していた自分が馬鹿みたいだ。
『じゃあ、後よろしく』
「少しは手伝いなさい……」
自己紹介が終了し、雹也と志穂は定位置へと戻っていった。どうやら説明は全て白莉に任せようとしているようだ。
白莉は深いため息を吐き、仕方がないかと説明を開始した。
「さて、何から始めましょうか?」
「…………あの世界は一体、何なんですか?」
どれから話そうかと迷っている白莉に真司は質問を投げかける。昨日自分がいた世界は何なのか。どうして自分が入り込んでしまったのか。
疑問は尽きない。
口元に指を当て、上を見上げながら考えていた白莉は、真司の質問に頷きながら答える。
「そうね、そこから説明しましょうか。あの世界はね、世界の裏側」
「世界の裏側…………」
「例えば、鏡を覗くと同じ世界が反対に映っているでしょう。そこにはもう一つの世界が存在するの。それが世界の裏側」
何処からともなく鏡を取り出した白莉は、鏡を真司に向けながら説明を進める。
「でも、誰でも入れるわけではない。裏側に入る為には、手順と資格が必要なの」
鏡を脇に置き、一息つくようにお茶を一口すする。その姿はとても上品で、ついつい見惚れてしまう。
見惚れている真司に気付いた白莉は二コリと微笑み、気付かれた真司は顔を下に向けてしまった。
「手順と資格、ですか?」
「君は裏側に入る前に通った道を覚えてる?」
「確か…………」
昨日のことを思い出しながら、通った道を答えていく。一つ一つ指折り数えながら、屋上までの道順を思い出す。
道順を聞き、白莉は頷く。
「その道順を通り、資格を持つ者が屋上を出ると、裏側に辿り着くの」
白莉の説明によると、裏側に入る為の入口は世界に数多く存在する。その入り口全てに手順が存在する。その手順は入口によって様々で、他の入口がこの学校の入口の手順に当てはまるわけではない。
だが、手順を知っても裏側に入れるわけではない。裏側に入る為の資格を持たない者が手順通りに進んでも、入口に辿りつけない。他の道からはいくらでもその場所には辿りつけるが、裏側には入れない。
「次にあの世界だけど………どうして存在するのかは私たちにも分かっていないの」
資格を持ち、偶然入り込んでしまった超常現象部の三人。そこで手に入れたアイテム。
最初は手に入れたアイテムで戦っていたが、話をしてみると三人共偶然であることが分かった。そこで三人は停戦し、入り込んでしまった世界を探索した。
そこで知り得たことは、全てが反対なことと生き物が一切存在しないことだった。
「今でも探索はしているのだけれど、何も見つけられない」
「…………」
お手上げとでも言う様に両手を上げる。
「手に入るアイテムにも法則性はなく、どうして与えられるのかも不明。分かっていることはあの世界が選ばれたものしか入ることが出来ないこと」
そう言って白莉は一つの資料を取り出した。その資料を受け取り、内容を確認すると、そこには様々な数値が記されていた。
「何人かで歩いて貰う様に頼んだけど、入れた者は誰もいない。でも、誰に教えられることのない者が偶然入り込んでしまうの」
「そういった奴はあの世界で生き残れないからな。強引だが実力を試すのさ、昨日のお前さんみたいに」
説明の途中に雹也が口を挟む。
どうしてあの世界が存在するのか定かではないが、危険であることは確かだ。与えられるアイテムは殆ど武器であり、武器があるということは戦闘があるということだ。
そこで雹也が適役となり、入ってきた者を選別する。
「そんなに危険なんですか?」
「うーん、厳密に言うとそれほど危険じゃないの。あの世界で殺されても、死ぬわけじゃない。資格を失って、あの世界のことを忘れるだけ。ただ、数日間昏睡してしまうけど」
「昏睡…………」
真司は昏睡と言う言葉を聞いて、昨日の隆二の言葉を思い出していた。
「……もしかして、最近もありましたか?」
「ん? ああ、一人入ってきた奴がいたから戦ってみたが、一瞬で終わっちまったよ」
「どうやら噂になっている様ね」
真司の表情から何かを読み取ったのか、白莉は最近流れている噂に関して考え始めた。そして、そのまま動かなくなる。
真司はどうしたのかと声をかけてみるが、全く反応しない。雹也や志穂に助けを求める様に視線を向けると、二人とも肩を竦めていた。
「考えに入り込んじゃったみたいだね。しょうがない、私が続きを説明してあげるよ」
読んでいた漫画を置いて、志穂はソファから起き上がる。隅に置いてあった椅子を移動させ、真司のすぐ近くに座った。
「昏睡して忘れるなら、それほど危険じゃないんじゃないですか?」
「そうだね。だけどあの世界にいるためにはある程度の実力が必要なの。だから、私達の仲間に入れるかどうか試験するの」
「あんまり誰かれ構わず仲間に入れてると、世話が面倒だからな」
二人にとっては、面倒というのが一番の理由のようだ。
「…………つまり、僕は試験に合格、ということですか」
「その通り」
ニコニコな笑顔で志穂が肯定する。
「さて、次はアイテムについてだね。あれはね、その人の心から生み出されるもの」
「心…………」
志穂は何処からともなく取り出した紙とペンを取り出した。そこに人型の絵を描き、人型の中にハートを描いた。ハートから横に線を引き、その先に剣の絵を描いた。
「裏側の世界では人の心が具現化し、アイテムを産み出すの。心が具現化されるから、その形は人それぞれ」
「お前さんの心は金属バット…………ぷっ!!」
「笑っちゃ可哀想だよ…………ぷっ!!」
「…………笑うなら、思いっきり笑ってください」
光の中から生み出された真司の心である金属バットを思い出し、二人は笑いを堪えていた。二人の身体が小刻みに震えている姿を見て、真司は溜息を洩らしながら悲しそうに呟いた。
笑いを堪えている二人からの説明を諦め、白莉が復活するのを待つことにした真司であった。
「オホン、どうやら待たせてしまったようね」
少々恥ずかしそうにしながら、一つ咳をする白莉。どうやら考えが纏まって、戻ってきたようだ。
それまで雹也と志穂の笑いのつぼが納まらず、真司はお茶を飲みながら待つしかなかった。
「それじゃあ、行きましょうか」
「どこへ…………?」
三人共立ち上がり、部屋を出ようとする。真司も慌てて立ち上がり、小走りで近づいていく。
白莉たちはどんどん先へと進んでいく。その道順は昨日真司が通った道と同じ道順である。
「裏側よ。早速訓練しないとね」
「…………」
白莉の意味深な笑みに嫌な予感が拭えない。その隣りにいる雹也と志穂の笑みも嫌な予感を増幅させている。
そして、真司の嫌な予感は十分後に現実のものとなった。