まさに突然
思いつきで書き始めた処女作です。
私は今、中世ヨーロッパ風のお城の中にいる…らしい。
目の前には王様っぽい藤色の長髪美形男。
右には書類らしき物を抱えた銀髪美形男。
左には電卓らしき物を持っている金髪ダイナマイトボディ美女。
いやあ〜眼福だわ!そろいもそろって美形ばっかし!
その美貌が衰える前に剥製にしちゃいたいわ!
でも私、さっきまで某テーマパークのジェットコースターに乗ってたはずなんだよね。
ちゃんと両手を上げて叫ぶ準備もしてたのよ!
なのに今は空気イス状態で両手を上げて……間抜けだし限界だからその場に座り込んじゃったわ。
「まあまあ!珍しく侵入者ですわよ魔王様」
「魔王様の命を狙う者がまだ存在していたのか」
わぉ!銀髪美形男の視線が痛い!ビームでも出ちゃうの!?
し・か・も・いい年した大人が魔王様だって、なんて厨二病!?どんな設定なの!?
「こんな所にまで侵入を許すとは…、いったいこの城の警備はどうなっているのですか?」
「ご覧ください魔王様!可愛らしいお顔の者ですわ!まるで赤子のよう!」
こらまて美女!確かに私は童顔だしチビだけどれっきとした高校三年生の乙女なのよ!
……って叫びたいけど小心者の私には無理無理無理!
厨二病患者に関わりたくないもん!
私のクラスにもいるのよ。
自分の事を、魔界の暗黒プリンセス☆の生まれ変わりって言ってるのが!
憎き勇者の生まれ変わり(私ね)が暗黒プリンセス☆の婚約者(幼なじみのイケメン)とプリンセス☆を、また引き裂こうとしているって主張してたな。
「だが突然現れたにしては魔力の気配がありませんね、この者にも魔力の気配はありませんし…」
「良いでわありませんか宰相殿。侵入者の末路など決まっていますもの」
「………そうですね、誰の指示で魔王様の命を狙うのか吐いてもらいたい所ですが何も考えてなさそうなアホ面の相手をする時間が勿体無い」
銀髪美形男はそう言うと、持っていた書類に視線を戻した。
金髪美女の指先には、お化け屋敷で出てきそうな火の玉が…。「ち…ちょっと待ちなさい!銀髪美形男!確かに私はアホで成績がすこぶる悪いバカだけど、初対面の美形にアホ呼ばわりされたくないわ!厨二病患者のくせに!」
言ってやったわ!すごい!私ってばやれば出来る子!
人を指さしてはいけませんってママに言われてるけど、この場合しかたないよね。
銀髪美形男の冷ややかな視線は変わらない。
私の心は携帯のバイブ並に震えて、そして砕けちゃいそうよ。
「銀髪美形男って宰相殿の事かしら…、面白い侵入者ね。
折角魔王様がいらっしゃるのに何もしないで消えてしまうのね」サヨウナラと金髪美女が呟くと同時に、火の玉が私へと放たれた。
魔王様らしき藤色の長髪美形男はつまならそうに私を見ている………。
助けろよ!
嗚呼、若き乙女の命が儚くも散って行くのね。
バイバイみんな……。
着弾した火の玉に包まれる私。
炎に包まれ、走馬灯が………。