星に願いを
「星に願いを」
星に願いをかけた少女がいた。
かけられた少女の願いはあまりにも現実離れしすぎていて、願った少女自身、それが叶うことはないだろうと思っていた。
だからこそ、少女は星に願ったのだ。天に輝く星に願いをかければ、それが叶うような気がしたから。
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少女によって願いをかけられた星は、少女の願いが宿す輝きに魅了された。
夜闇の深淵にあってなお消え去ることの無いその優しき光に、星自身も、少女の願いを叶えたいと思ったのだ。
しかし、少女の願いの輝きは星のそれよりも強すぎて、星には叶えることが出来なかった。
だから星は、自身より強大な存在である宇宙に願いをかけた。
少女の願いを叶えてほしいと。
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宇宙は星の願いを聞き届けようと考えた。
しかし、託されたその願いの大きさは、宇宙が内包できる許容量を超えていて、宇宙はその全貌を把握することすら出来なかった。
だから宇宙は、「秩序」に願いをかけた。星の願いを叶えてほしいと。
世界の自然法則の管理者である「秩序」なら、この強大な願いも叶えられると宇宙は思ったのだ。
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「秩序」は彼らの願いを叶えてあげたかった。しかし、できなかった。
それは自分という存在そのものが、彼らの願いを否定していたから。
だから秩序は幻想に願いをかけた。
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幻想。
それは、ありえないが故に望まれて、望まれるが故に形もつ、無より生じるひとつの奇跡。
それはいつの時代も、どんな場所でも生み出されてきた。
そしてそれは観測されてきたのだ。多くの人々によって。
人。
それは、幾千幾万の世界を宿す、無限の可能性。世界はそのような存在を、あるいは可能性を、霊長と呼んだ。
世界に内包されながら、その実、世界と同格の可能性を秘めた夢幻の存在。
だから世界は今日も願いをかける。
自分とは異なる世界に。
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こうして巡り巡った幾ばくかの願い達は、少女に還元された。
あとは、少女しだいだろう。
願わくば、彼女の願いが叶いますように。