大切なもの
世界録:伝承:在りもしないモノを「見る」
大切なものは目には見えないと、キツネは王子に語った―――けれど。
そんなのは当たり前の話だと、私は思う。
なぜなら大切なものなんて、この世界には一つも―――在りはしないのだから。
世界録:反証:見えないモノが、「在る」意味を知る。
大切なものは、目には見えない―――というのは、一つの言い回しに過ぎない。
……重要なのは、見えないものが「在る」と「知る」ことだ。
人の視野の限界は、その者の観世界の果てと同義。当然その最果ての先を見ることなど出来ないし、感じるとることも不可能だ……けれども。
だからと言って、人が自身の内側をすべて見通せるかと言えば、そうでもない。
むしろ、自身の内の方にこそ、問題が在るのだろう。
―――見えないということは、「存在しない」とイコールではない。同時に、見えているものが「そのままのカタチで存在している」という考えも、ある意味では間違いなのだろう。
だからこそ我々は知り、探さねばならない。
我々の視野の外あるかもしれないを。おそらく、それは「大切なモノ」と呼ぶにふさわしい価値を秘めているはずなのだから。