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幸せの力
どうか、お幸せに---そう言って、少年は笑った。
贔屓目に見ても、幸薄そう都市か思えない彼に、私は。
「……わたしのことは、心配しないでください。
むしろあなたは、あなた自身の幸せを願うべきです―――あなたは今、幸せですか?」
私は、馬鹿みたいな質問をした。
今考えると、当時の私は本当に幸せってものを知らなかったんだと、そう、思える。
―――幸薄そうな少年は、やはり幸薄そうな笑顔のまま、こう、答えた。
「俺は、幸せですよ―――少なくとも、他の誰かの幸せを願えるくらいには」