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tips~
「あなたは、人を愛することが出来る人よ。だって、あなたは愛されるということがどういうことか、知っているはずなんだから」
世界の終わりを前にして尚、忍は諦めることを知らなかった。
それはともすれば、愚かな行為であったのかもしれない。
しかし、それでもーーー
「今日で世界が終わるのが宿命だっていうなら、それも仕方ないと思う。けれど、それはこの世界のことであって、あなたのことではないはずよ。いつだって、私たちを終わらせることが出来るのは、私たちだけ」
諦めるのはまだは早すぎると、忍は自身の恋人に笑いかけた。
諦められるほど自分たちの世界はまだ、輝きを失ってはいないと。
「あなたの過去がどんな間違いだらけだって、それは絶対に言い訳にはならない。今と過去は繋がっているけど、でも言ってみれば、それだけのことじゃない?
……今を愛しいと思えるのなら、守りなさいよ。この世界とーーー」
ーーー世界と私を守ってよと。
私と、私が愛おしいと思う世界を守ってよと。
忍は隆にそう告げ、背中を力任せにひっぱたいた。