世界録3:価値ある世界
世界録3:価値ある世界
世界には、価値がある。
ひたむきに在り続け、がむしゃらに時の果てを目指す命には、価値がある。
だからこそ、それらは肯定されるべきなのだ。
祝福され、詠われるべきなのだーーーそう、畏敬の念とともに。
ε
世界録3:反証:世界の守護者による、世界の断罪
幸福は、物語によって記述されるのよ?
だからこそ、保存則のような低次元の秩序に縛られることは、本来ありえないの。
なのに、現実はどうかしら?
ほろ、周りを見渡してご覧なさいな。
彼らは、「幸福の座席」なんて架空の縛りを作り上げ、あげくにそれらを取りあい、いがみ合っている……
あれらが、護る価値のあるもの?
あんなものが基盤として生み出された下級の世界が、詠われるに等しい存在かしら?
……くだらないわ。
そんなことだから、繰り返すのよ。なんどもなんども、救いようの無い過ちをね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんなことだから―――と、少女は嗤った。
「認めるわよ? 確かに、あなた達の世界は美しいわ―――けれど、だからなに?
それが、なんなの?」
少女の周りには無数の機雷と、無限のミサイル。
はなからすべてを破壊するために生み出されたそれらは、生来の役目を果たすべく、少女を目指す。
対して、少女は軽やかに死の弾幕をステップ一つでくぐり抜け、詠う。
「たいそうなことよね……自分タチの世界の美しさに気を取られて、他の世界のそれらに目を配ることすらできない―――
それは結局、命の輝きに気を取られて死という優しさを理解できないのと同じこと……」
少女の瞳には、複数の世界。
そのどちらの世界ももある意味では輝き、ある意味では汚れきっていた―――故に。
「そんなことだから、何度やってもダメなのよ。何度繰り返そうが、同じこと。
なぜ命が繰り返すのか、まだ分からないの?
なぜ世界が結局はここに流れ着くのか、まだ理解できないの?」
輝きと汚れを内包する世界を瞳に納め、少女は嗤い、詠う。
「だから、死ね。
故に、滅びろ。
死ね、4ね。氏ね。しね、シネししっしいsfじゃjfぢおs;fじゃlk;sdjf;lksdf」
無数の世界の守護を託された技術と想いを凌駕し、少女嗤い、そして。
「ああ、また一つ世界がーーー」
嬉しそうに。
心の底から、楽しそうに少女は笑いーーー世界を、滅ぼした。