第4話「実力」
ギルドの裏手には簡素な訓練場があった。
土を踏み固めただけの広場。
木の柵で囲まれ、奥には弓の練習用の的が並んでいる。
ガルドが顎で示した。
ガルド「ほら、あそこだ」
指先の先。
木製の的がひとつ立っていた。
距離は、およそ百メートル。
後ろから冒険者たちがぞろぞろと集まってきていた。
「おいおい」
「小娘が撃つのか?」
「見ものだな」
野次が飛ぶ。
リィンは何も言わない。
ゆっくりと前に出る。
そして、膝をつき、ゆっくりと銃を肩に乗せる。
その瞬間。
周囲のざわめきが、ふっと遠くなった。
黒いライフルが静かに構えられる。
「おいおい」
「本気かよ…」
リィンにはもう何も聞こえていなかった。
ヘイム『……怒ってんのか?』
リィンは答えない。
ヘイム『はいはい。ご勝手に』
リィンの暗い緑の瞳が、まっすぐ的を捉える。
呼吸が整う。
引き金に指をかけた。
轟音が鳴り響く。
銃声が街に響いた。
ゆっくりと立ち見をしていた観客が狼狽える。
そして木の的の中心には綺麗な穴が空いていた。
「当たってる!」
「嘘だろ!信じられねぇ」
ざわめきが広がっていく。
だがリィンは止まらなかった。
――バン
――バン
――バン
乾いた銃声が続いた。
全部で4発がすべて同じ的に命中していた。
近づいて見れば、穴はほとんど同じ場所に並んでいた。
リィンは息を吐きながら銃を下ろした。
少しだけ眉を寄せた。
リィン「……最後だけ少しズレた」
ヘイム『いや充分だろ』
リィン「……不満」
ヘイム『周りを見てみろよ』
リィンが振り返る。
冒険者たち、受付嬢、そしてガルド。
全員が目を見開いて固まっていた。
その沈黙の中で、ガルドだけがニヤリと笑った。
ガルド「ほう」
ガルドは空を指差す。
ガルド「あれはどうだ?」
青空を一羽の鳥が旋回していた。
周囲がざわつく。
「おいおい」
「それはねぇよ」
ガルドは肩をすくめた。
ガルド「やっぱり動く的に当てなきゃな?」
ヘイム『結構無茶振りすんな、このジジイ』
リィンは空を見上げる。
そして銃口をゆっくりと上げた。
膝をつく。
ヘイム『風は西』
ヘイム『銃口一個分、左だ』
リィン「……わかってる」
引き金に指をかけた。
――轟音。
銃声が空に響いた。
上空の鳥の羽根の動きが止まる。
そして、羽を広げ、空中で回転しながら落下する。
ドサッ。
ガルド「ぐはっ」
落ちてきた鳥は、見事にガルドの頭に直撃した。
一瞬の沈黙。
そして爆笑が起きた。
「ぶっははは!」
「爺さん狙われてんじゃねぇのか!」
ガルドは頭の上の鳥を払い落とす。
羽の付け根には、小さな穴が空いていた。
ガルドはゆっくり顔を上げる。
リィンはすでに銃を肩に掛けていた。
数秒の沈黙。
ガルド「わざとか?」
リィン「で?結果は?」
ガルドはニヤリと笑う。
ガルドはギルドの方へ振り向く。
ガルド「受付嬢!」
受付嬢「は、はい!」
ガルドは親指でリィンを指す。
ガルド「こいつを登録してやれ」
ガルドは笑った。
ガルド「こんな面白ぇ新人、逃したらギルドの損だ」
リィン「…早くして」
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