覇者の仲間
苺花さんと連絡先を交換した私は、もう一度電車に乗り、目的地に向かっていた。
「イナズマさん、その未来さんと霊火さんはどんな人なんですか?」
「俺は超天才の鏡野郎と超馬鹿な炎野郎と呼んでるが、本来の二つ名は『鏡の戦略家』と『炎の用心棒』と呼ばれてる。まさに二人で一人って感じの奴らだ。冷静沈着で頭で戦う未来、天真爛漫で体で戦う霊火…面白くて強い、俺の頼れる仲間だぞ」
「そうなんですね…会いたくなってきました!」
「あいつらもお前に会いたがってるさ」
そして数十分後、私は電車から降りて駅を出た。
「来るのは、あの山だ」
イナズマさんの目線の先には、大きな山があった。私は歩いてその山まで歩いていった。そして私は山の穏やかな斜面にある休憩場のような場所に着いた。
「魅菜」
「なんですか?」
「ちょうどここに着地するっぽいぞ」
「マジ?!」
「マジ、大マジ、めっちゃマジ」
「マジか〜…いつぐらいですか?」
「10秒後」
「…え?」
私の脳が止まる。10秒後?ナニソレ?私の脳が動き出し、言葉を出そうとしたその瞬間…私の真横に何かが降ってきた。
「衝撃を吸収しながらの着地はまぁまぁ難しいな…」
「未来はへたくそだからだな!しかたない!」
そこには、黄色の髪の男子と、赤色の髪の女子が居た。
「えっと…あなたたちが」
「ん?あぁ、君が魅菜ちゃん?自己紹介をするよ。僕は未来。こっちが霊火。稲妻の覇者の…イナの仲間だよ」
「イナ?イナズマさんのこと?」
「俺のことだな」
「なるほど…」
「よろしくな!ミナ!わたしが霊火だ!」
「よろしくお願いします、霊火さん!」
「さんはいらねぇ!ふつうによびな!」
「分かったよ、霊火」
「僕にもさん付けと敬語はいらないよ、魅菜ちゃん」
「分かったよ、未来」
「ありがとう。イナズマは…本当に君の中に居るんだね」
「分かるんですか?」
「ここまで至近距離だと感じられるよ。イナズマの気配」
「声が聞こえたりとかは…」
「残念だからできないね…けど、そのブレスレットという橋を僕らにも繋げたら、可能性はある」
「ライメイさんのように?」
「そうだね。彼が良い例だ」
「未来は頭が良い。記憶力、判断力、理解力、脳の回転速度、何もかもが俺以上さ」
「なるほど」
「魅菜ちゃん、僕たちとブレスレットを繋げる方法、分かる?」
「私には…イナズマさんなら分かると思うけど…」
「そっか…イナ、繋いでくれるかい?」
「ブレスレットに近づけって伝えてくれ」
「ブレスレットに近づいてほしいらしいです」
未来と霊火がブレスレットに近づいた。その時、ブレスレットが一筋の光を二つだし、それぞれの方に伸びた。その時、二人は「あっ…居た…」と、イナズマさんを見ながら同時に息ぴったりに言った。
「半透明になるんだね…」
「イナ、すけすけ」
「霊火の言い方が無性に腹立つ」
「日本語覚えたてだから仕方ないよ」
「それはそうなんだけどよ…」
「大変だね」
「そうでもないよ?いつもの事だよ」
「いつもなの?!」
「霊火の脳みそは鳥レベルだからな」
「とりじゃない!わたしは霊火だ!」
「はいはい」
「とりあえず、この後どうします?」
「とりあえず魅菜の家に行くか」
「え?私の家?!」
「だって、俺らは地球には帰る場所無いからな」
「皆の基地って…」
「別宇宙にある」
「悪いけど、連れて行ってもらえるかい?僕たちは右も左も分からないから」
「未来!みぎはこっちでひだりはこっちだぞ」
霊火は未来に右手と左手を向けながらそう言った。
「そういう事じゃ…」
「え?!ちがうのか?!」
「違うに決まってんだろ。言葉を学べ」
「まなんだ!」
「学びきれてないだろ…」
「あたりまえだろ!おまえはばかか?」
「お前には馬鹿とは言われたくないがな!」
「本当に仲が良いですね!」
「魅菜、しばくぞ」
「イナ、喧嘩腰はやめなって…」
「どこぞの女二人が居なかったら、もうちょっと丸くなってるさ」
「イナ、たいへんだな」
「霊火の言う通りだよ、イナズマさん」
「お前らのせいってどうして気付かないのか…馬鹿だからか」
そして、私たちはなんて事のない会話をしながら私の家に向かった。陽が落ち始め、綺麗な夕焼けが街を輝かせている時、私たちは私の家に着いた。
「ここが私の家です」
「ここが魅菜ちゃんの家か…」
「ミナのいえ、きれいだな!」
「ありがとうございます!」
「魅菜ちゃんはイナと暮らしているの?それとも親御さんが一緒?」
「魅菜の親は少し前に事故死したんだとよ。あまり深堀りしない方がいいかもだぞ」
「そうだったんだ…ごめんなさい、君の事情も知らないで…」
「全然大丈夫ですよ!」
その時、未来と霊火の顔が曇る。
「イナ、君はこれを聞いても何も感じなかったのか?!」
「俺が口を出す問題じゃない。これは魅菜の問題だ」
「君ってやつは…」
「ミナ、それはまちがってるぞ!わたしもそれぐらいは分かるぞ!」
「え?」
「魅菜ちゃん、良いかい?大丈夫なんて言葉は、辛い時こそ使っちゃいけないんだよ?」
「ミナ、なきたいときはないていいんだぞ!つらいときはつらいっていっていいんだぞ!」
「確かに少し悲しいですけど、本当にもう大丈夫なんです!」
「何が大丈夫なんだい?」
「私の親が居眠り運転のトラックを見つけた時、そのトラックの進行方向に、遠足中の園児たちが居たらしいんです。それで、その子たちを守るためにトラック相手に車で突進したんです。幸い、死者は私の両親だけでした。確かに、悲しいし辛いです。今でも多少は引きずっています。けど、私がいつまでも悲しんでいたら、子供たちの希望を守った両親に顔を合わせられない気がしたんです。以前、それをイナズマさんに相談したら『なら、その事件でできたお前の心の傷は、忘れることも乗り越えることも必要ない』って言ったんです。次にイナズマさんは私にこう言ったんです。『親に面と向かって顔を合わせれるように生きろ』って…」
私は目を瞑り、自分の胸の前で拳を握った。あの時のイナズマさんは、いつものかっこよく全てを守ろうとする顔や、半透明中で私と話している時の「面倒そうだけど聞いてやろう」という顔でもなかった。その顔は、私の頭を撫でてくれそうなほど、優しく温かい顔をしていた。
「そうだったんだね…イナ、ごめんね。誤解してた…魅菜ちゃんもごめんね」
「俺に謝るな。謝れるような事をされた記憶は無い」
「本当に変わらないね、イナは」
「イナ…つまりどういうことだ?」
「霊火も霊火で変わってないようである意味安心するよ」
そしてイナズマさんは、まるで園児に答えを教えるように霊火に解説していた。
「なるほど!りかいしたぞ!」
「なら良かったよ…」
「そんな事より早く私の家に入りましょう?ご飯作りますから!」
私は二人を家の中に入れた。
「今からご飯作りますね!腕によりをかけるので楽しみにしておいてください!」
私は台所に立ち、冷蔵庫の中の物を見る。中身を見て、私は作るものを決めた。そして私は料理を始めた。そして、作ること約一時間、時計の長針が7、短針2と3の中間を指している頃、私は3人分の食事を用意し、二人に差し出した。
「はい!ふたりとも!カレーです!!!」
「「カレー?」」
二人が同時に聞き直した。
「はい!カレーって言うのは…そうですね…大半の日本人が一度は食べる、超美味しい料理です!」
「なるほど…魅菜ちゃんのおすすめって事だね?」
「はい!お二人のお口に合えば良いんですけど…」
「丹精込めて作ってもらった物だ。僕たちは人の努力を無駄にするような事はしないさ。安心して。きっと口に合うから」
二人は同時に手を合わせて「いただきます」と言った。そしてスプーンを持ち、それで一口分を掬った。そしてそれを口に運んだ。その時、二人は目を見開いた。不味かったのかな…
「えっと…美味しくなかったですか…?」
「いや、違うんだ魅菜ちゃん…これは…」
「うますぎる!!!」
霊火の言葉がスタートの合図のように、二人は同時に勢いよく食べ始めた。二人が美味しそうに食べるのをみて、私は安堵のため息を吐いた。そして私も「いただきます」をして食べ始めた。私が3割ほど食べたところで…
「おかわり!!!」
「おかわりをお願いします!!!」
「はい!」
私は元気よく立ち上がり、二人から食器を貰う。そしておかわりを盛り付ける。そしてすぐに戻って、二人に渡した。
「ありがとうな!」
「ありがとうございます!」
「いえいえ!こちらこそありがとうございます!」
こんなに食事が楽しいのはいつぶりだろうか…イナズマさんは食事をしなくても生きられるらしい。そのため、イナズマさんが話し相手になってくれてるとは言え、少し寂しくご飯を食べていた。だから、こんなに騒がしい食事は久しぶりなのだ。まるで、兄と妹ができたみたいだ。
そして私たちは食事を終えた。未来と霊火はお互い、軽く私の3倍は食べただろう。そして今はリビングでお話をしていた。
「遠慮をしらない奴らだな」
「魅菜ちゃんの料理が美味しかったのが悪いですよ。僕たちは全く悪くありません」
「そうだそうだ!」
「私は大丈夫ですよ!逆にいっぱい食べてもらえて嬉しいです!」
「ミナもそういってるぞ!」
「魅菜が大丈夫なら良いが…」
「それよりもイナ、これからどうするつもりだい?」
「どうするって、何がだよ?」
「永遠と魅菜ちゃんの中に入っている訳にはいかないだろ?君の目的を達成するにも、魅菜ちゃんを巻き込むのはダメじゃないか?」
「魅菜からちゃんと許可を貰ったさ」
「それでもだ。このまま君と一緒だと、下手したら死ぬぞ。君だって、必ず勝てる訳ではない。君が負けたら、魅菜ちゃんは確実に殺される。そうしたら」
「ゴチャゴチャうるせぇな…そうならないようにするためにお前ら二人を呼んだんだよ」
「信頼し頼ってくれるのはありがたい。だが、僕らだって無敵のヒーローではない。万が一の時には」
「うるせぇって…万が一?そんなの、俺がさせると思うのか?負けかけた事はあれど、今だ無敗だぞ、俺は」
「そういう慢心が、いつか君と魅菜ちゃんを殺すぞ」
イナズマさんと未来が話していると、霊火が私の服の袖を引っ張った。
「ん?なんですか?」
「かっこわるいところをみせちまってわるいな」
「大丈夫ですよ」
「未来もイナも、わるいやつじゃないんだ」
「見れば分かりますよ。イナズマさんにはイナズマさんなりの、未来には未来なりの考え方と正義があって、それがぶつかりあってるだけなんでしょう?」
「うん。めっちゃやさしくてめっちゃつよいからだぞ!」
「そういえば、皆はどこで知り合ったの?」
「それをいうとながくなるぞ!」
「長くなるんだ…それでも聞きたいかな!」
「おい!イナ!未来!」
霊火が二人を読んだ瞬間、言い争いをしていた二人は一瞬にして黙った。
「ミナがな!わたしたちのであいのはなしをききたいらしいぞ!」
「僕らの出会い?イナが僕らに会う前の話をしてないと難しくない?」
「俺、あの話はまだ魅菜には言ってないぞ」
「ならした方が」
「………」
「イナが言わないなら僕たちの口から言うけど?」
「それはダメだ。俺らが会ってからなら良いが会う前は俺が言った方が良い」
「教えてほしい。イナの…皆の過去を…私も皆の仲間だから」
「イナ!ミナもこういってるぞ!はなしてあげたほうがいいにきまってるだろ!はやくはなせ!」
「イナ、これに至っては本当に話した方が良いと僕も思うよ。君の因縁の話を…」
「因縁の相手って、前に話していた影法師のシャドーって奴のことですか?」
「そうだ。これを聞いたら、もう魅菜を巻き込まない事はできなくなるぞ」
「イナ、いくらなんでもそれは」
「いいですよ…私だって、生半可な気持ちでイナズマさんと融合した訳じゃありません。私には私なりの覚悟を決めたんです!教えてください!全てを私は聞きたいんです!」
「仕方ないな…教えてやる。折角だ。ライメイも呼ぶ」
数分後、ライメイさんがすぐにやってきた。
「来たな」
「イナ、少し関係無いんだが、魅菜ちゃんとライメイ君もイナズマインフィニティの仲間で良いんだよね?」
「そうだな」
「イナズマインフィニティ?」
「勝手に未来と霊火がつけたチームの名前だよ」
「なるほど!」
「私のような機械も入って良いのか?」
「良いに決まってんだろ。お前も俺らの仲間だよ」
「ありがたい。これからお世話になる。イナズマ、魅菜、未来殿、霊火殿」
「僕らも呼び捨てで良いよ」
「承知した」
「それじゃあ話してやるよ。俺の物語を…俺がここに居る理由も、こいつらと出会ったのも、最初は同じなんだ。とある星で起きた、最悪の殺し合いから始まるんだ」




