人間の脅威
モスマンの襲撃から三日後。私は電車に乗っていた。理由は簡単。イナズマさんが言うのは、未来さんと霊火さんは、私達の街の場所がだいたいでしか分からないらしく、そのせいで二人の着地地点が少し離れた場所になってしまったらしい。だから、そこまで行くらしい。
そして、私は座席に座っていた。平日の真っ昼間のため、お客さんは私含めて二人しか居なかった。もう一人のお客さんは女性だった。髪色はエメラルドグリーンの、私より少し年上のように見える女性だった。何故か、イナズマさんはその人を睨んでいた。
「イナズマさん、どうかしたの?」
「あいつ、何か変だ…今までに見た事がない異様な存在だ。気をつけろ」
「え?でも、私から見たら美人な人だけど…まぁ、完全に服装は私と違って派手だけどさ…」
その人の見た目は、黒色のシャツとエメラルドグリーン色のスカートは良かった。でも、シャツは少し短くてその人のお腹が露出していた。なんなら、肩も出ていた。それに加えて、両腕両脚には黒色のストッキングを付けていた。もし、私があんな服装をしたら、顔から火が出そうなほど真っ赤になることは確実だろう…だから、私はあんな服装ができる女性に少しばかり憧れている。
「やっぱり、普通の女性だって!大学生ぐらいの…」
「お前は黙っとけ…お前は宇宙人の気配とか分からないだろ?」
「それはそうだけどさ…」
その時だった。その女性は私に近づいてきた。
「お嬢さん、一人?」
「え?あっ!はい…」
最近、話す相手はイナズマさんとライメイさん、そして私が行くスーパーなどの店員さんだけだったから、少し陰キャ染みた返事をしてしまった。
「お父さんやお母さんは居ないの?」
「はい…ちょっと、個人的な用事がありまして…」
「そうなんだ!もしかして学生さん?そしたら夏休み中?」
「はい…そうなんです…」
できるだけ、相手に悪い印象を与えないように、明るい声で目を合わせて話していた。
「隣、座っても大丈夫?」
「はい…全然大丈夫ですよ!」
「ありがとうね…それじゃあお言葉に甘えて」
その人は私の右側に座った。その人のエメラルドグリーン色の瞳は、私を捉えていた。まるで、鼠を見つけた猫のように、蛙を見つけた蛇のように、鯨を見つけた鯱のように…そんな目で見られていた。私は無意識の内に唾を飲み込んでいた。
「どうかしたの?もしかして、体調でも悪い?」
「いえ…大丈夫です…これでも、健康には自信がありますから…!」
その人はそれを聞くと「ハハハハハ!」と明るく笑ってくれた。
「あなた、面白いね!私の名前は苺花。イチゴにタンポポとかのハナで苺花。宜しくね」
私が名乗ろうとすると
「魅菜、上の名前で名乗っとけ」
私は返事をすることができなかった。苺花さんに少しでも変だと思われてしまったら、引かれそうな気がするからだ。
「私は稲妻と申します」
「可愛い顔なのにかっこいい名前だね」
「ありがとうございます…面と向かって言われると、少し照れますね…!」
「照れてる稲妻ちゃんも可愛いね」
「ありがとうございます…苺花さんも可愛いですよ!」
「可愛い?珍しいね、あなた」
「え?」
「私は美人と呼ばれることはあるけど、可愛いって呼ばれる事は少ないんだよね〜」
「そ、そうなんですね…」
「けど嬉しいな〜あなたみたいな可愛い子に、可愛いって言ってもらえるなんて思わなかったよ〜」
「そうですか…そういえば、どうしてあなたはこの電車に?」
「私はね〜好きな人に会いに行くためなんだよね〜」
「好きな人?」
「うん…一目惚れしたんだ〜全てが私の性癖に刺さってる子」
その時、私の体から冷や汗が出る。暑いはずの夏、暑い電車の中…まるで、真冬の夜中に氷で海面を凍らされた海の中に入ったときのように寒いと感じさせるほどの冷や汗が出た。私の体が震え始めた。恐怖と防衛本能が叫んでいた。「こいつは危険だ。今すぐに逃げろ」と…
私が席を立とうとすると、苺花さんは私の手首を掴んで押し倒した。
「ダメでしょ?魅菜ちゃん…どこに敵がいるか、常に警戒しないと…」
「なんで私の名前を…そうだ!イナズマさん、助け」
その時、私の言葉が止まった。イナズマさんなら、攻撃される瞬間…押し倒される瞬間に代わってくれる…なのに、代わるどころか声も聞こえない…私は必死に顔を動かした。その時、床に転がるイナズマブレスレットが見えた。
「警戒心薄すぎだよ?君がイナズマって奴に代わられたら面倒だったから外させてもらったよ?」
「なんで…」
「ずっと見てたから…マゼヴォエとモスマンの時、観察させてもらったよ?ずっと聞いていたし、見てたよ?」
私は恐怖で何も言う事ができなかった。苺花さんから離れようとしても、苺花さんの私の手首を掴む力は人間とは思えないほど強く、振り払うことはできなかった。
「絶望した顔も可愛いね、魅菜ちゃん…この日をどれだけ待ったか分かる?分からないでしょ?魅菜ちゃんを私だけの女の子にしたくてしたくて、夜も眠れてなかったんだよ?」
私は呼吸をするのがやっとだった。怖かった。殺意からの恐怖じゃない…苺花さんの強い愛という名の独占欲から来る、背筋が凍る恐怖だ。
「イナズマ…稲妻の覇者も調べたよ?まともに戦うのは分が悪いからね。彼は私達の間には挟ませないよ?」
「好きな人の所に行くんじゃないんですか?!」
「半分は本当、半分は嘘」
「どういう事ですか?」
「ここに来た理由は君を私だけの女の子にするため…そして、それはもう達成させた。行くという目的は、もう達成させてたんだよ」
私は黙っていた。数秒後、苺花さんは私の唇を人差し指でなぞった。
「もう喋るのも諦めちゃったの?怖い?でも大丈夫…私がすぐに気持ちよくさせてあげるから♡」
「ありがとうございます…あなたがお喋りだったので、時間稼ぎは余裕でした」
その時、イナズマブレスレットがイナズマスパークランスに変形して、苺花さんに襲いかかる。苺花さんは私を離して、跳び避けた。イナズマスパークランスはイナズマブレスレットに戻り、私はそれを右手首に戻した。
そして、魅菜は俺と代わった。俺は左手を銃の形にして、クソ女に向けた。
「さぁ、敗北までのカウントダウンを数えろ」
「ゲッ…稲妻の覇者じゃん…逃げよ」
そいつは電車の窓を蹴り割り、そこから跳び逃げた。俺もそこから跳び出た。奴は超加速を使っていた。俺も超加速を使う。俺はイナズマブレスレットを相棒に変えて投げた。相棒はスローモーションのように動く。当たり前だ。超加速の対象は俺だけだからだ。
そして俺は奴を追いかけていた。その時だった。奴は通常速度での3秒付近で超加速をやめた。俺には分かる。あいつの超加速は、3秒で限界だ。俺には後、通常時間で2秒程度の余裕がある…叩くのなら、今が絶好のチャンス!
俺は瞬時に奴の懐に入った。そして、奴の足を踏み、体に拳を当て続けた。そして、通常時間での2秒後、俺は奴の足を踏むのをやめた。その瞬間、奴は吹っ飛んだ。俺は跳んだ。そして、空中で奴に追いついた。そして、奴の体に拳を当てた。奴は地面へと叩きつけられる。俺は奴が落ちた場所に着地した。奴が起き上がる。
「しぶといな、お前」
「容赦無いな、お前…普通、女の子にここまで攻撃する?」
「俺にお前らの常識を押し付けるな。お前は俺の仲間を傷つけた。地球が何と言おうと、俺が裁判官で、お前は死傷の刑だ」
「無茶苦茶だって、自分で分からないの?」
「無茶苦茶なのは地球だろ。法に則って刑を下す?事実だけを見ろ。その事実で刑を下せ」
「お前…何言ってるの?」
「俺の理論を言っただけだ」
「冤罪だったらどうするんだよ?」
「冤罪は事実じゃない」
「これだから強者は…」
「俺だって弱いさ」
「どの面下げてそれ言ってんの?お前みたいな奴が自分を弱いって言うなよ」
「強いのは、全てを守ることができる奴だけだ。俺は弱い。お前らより実力があったとしても、俺は俺を認めない」
「なにそれ?めっちゃ腹立つんだけど…」
「奇遇だな…俺もめっちゃ腹立ってるんだよ…魅菜はな、お前のような変態が触れて良い存在じゃないんだよ…二度と触るな。次触ったら、お前の腹綿を引っ張り出す」
「怖…殺人鬼じゃん」
「電車の中でタイプの女が居たからって痴漢以上の行為をする論外野郎には言われたくないがな」
「お互い様って事かな?」
「お前と一緒にしないでくれるか?変態」
「私には苺花って名前があるんだから、それで呼んでよ」
「断固拒否する。お前は変態、それだけだ」
「最低だね…」
「俺は英雄じゃない。最低にだってなれるさ」
「最悪だね…」
「あっそ。好きなだけ言え」
その時だった。俺はバク転をした。俺の背後から相棒が飛んできていた。変態の両肩に切り傷をつけた。そして相棒は俺の方に戻ってきて、ブレスレットに戻った。
「…私の負けみたいだな」
「負けを認めるのか?」
そいつは敗北を示すよう両手を挙げた。
「私はあんたには勝てない。私が倒されても負け、あんたを倒しても魅菜ちゃんを倒したのと同じだから負け、5分逃げれたら勝てるけど逃げる前に確実に脚を斬られて負ける…どう足掻いても負けが決まってる試合なら、私は大人しく降参するよ…イナズマ君、あなたの勝ちです…」
イナズマさんは私と代わった。
「反省したんですよね?」
「したよ…今後は君の許可が出てから襲うよ」
「許可出しませんし襲うことを考えないでください!」
「可愛い君が悪い…後、あれ何?なんでブレスレットが離れてたのに、イナズマスパークランスになって攻撃してきたの?」
「私の意思ではブレスレットは変えにくいんですよね。そして、イナズマさんが言うには、ブレスレットは持ち主の元に帰ろうとする性質があるらしいんです。(イナズマ)フラッシャーが戻ってきたのもその性質を利用したかららしいです。イナズマさんが武器を使うたびにイナズマさんの元に戻ってくるのは、その性質があるかららしいですよ」
「チートじゃん…」
「敵に回せば厄介ですけど、仲間にすると頼もしいですよ」
「魅菜ちゃん、いきなりだけど連絡作交換しよ?」
「断ったら?」
「家まで着いていく!」
「…交換します…」
そしてその日の夜。私は自分のアジトの廃工場に居た。私はソファの上で横になっていた。
「魅菜ちゃん可愛かったな〜あんなに可愛いんだから襲わないなんてできないよ〜また会いたいな〜攻撃しなかったらイナズマは何もしてこないかな?試したいな〜また会いたいな〜」
私は上機嫌で独り言を発していた。その時だった。
「稲妻の覇者が相手は楽しかったかい?」
廃工場の上の方から、何者かの声が聞こえた。そして、そいつは私から少し離れた場所に着地した。
「私のアジトに来るなんて、身の程をわきまえてほしいね〜で、あなた誰?」
「稲妻の覇者と対となる存在だよ。奴が光なら俺は闇。奴が白なら俺は黒。そんな感じの者さ」
「名前は?」
「聞いて逃げるなよ?俺の名前は…影法師のシャドーさ」
それを聞いた瞬間、私は廃工場の外に出た。冗談じゃない。稲妻の覇者を調べる過程で見つけた、この宇宙で最も邪悪な宇宙人が、なんでこんな所に?!私が逃げようとしたその時、私の胸をトライデントが貫いた。私は地面に倒れ込んだ。川に逃げ込もう…そしたら助かる…その時、奴はトライデントを引き抜き、ブレスレットに戻した。イナズマが持っていたブレスレットとは違い禍々しいブレスレットだ。そして、私の右足首を踏んで逃げれないようにした。
「ありがとう。お前には感謝しているよ。今のイナズマの実力を調べるのに、お前は最高のモルモットになってくれた。お前のおかげで、あいつを殺せるかどうかの不安は、殺せる確信に変わったよ…あいつは弱くなっている。そして、あいつの隠れ家まで調べさせてくれてありがとう。鏡の戦略家と、炎の用心棒が来るから先に始末しようと思ってわざわざここまで来たら、なんとビックリ稲妻の覇者の気配を感じて様子見をすることができた」
奴はペラペラと話していた。そして、私の首根っこを掴み、私を持ち上げた。
「最後に一つ言ってやろう。お前如きの半地球人半宇宙人が、稲妻の覇者に手を出していいと思っているのか?ダメだね…あいつに手を出して良いのは…あいつを攻撃して良いのは、俺が仕向けた奴と俺だけ…そして、あいつを倒し殺して良いのは俺だけだ」
奴は私を地面に叩きつけた。そして廃工場の壁に投げつけた。私の体は廃工場の壁を突き破った。奴はゆっくりと私に近づいてくる。そして、奴は私を川の方まで投げつけた。私は川に落ちた。
「無様に死んどけ、負け犬が。弱いやつは笑うな。笑って良いのは俺みたいに強い奴だけだ」
こんなの、勝てるわけない…強すぎる…




