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地球内生命体の目にも涙

 その後は特に戦う事は無く、夏休みに入った。蝉の鳴き声が日本中に響く今日この頃、私は、私の家の床で仰向けになっていた。


「暑い〜…」

「変な声出してどうかしたのか?」

「変じゃないもん…夏休み中の学生は絶対出す声だもん」

「あっそ」

「てか、イナズマさんは暑くないの?」

「気温は?」

「今日は39℃だよ〜」

「まだ良い方だろ」

「え?」

「地球換算で言うと、軽く一万℃を越えてる星には何度も行った」

「えぇ…」

「金星とかでも460℃程度だぞ」

「それは程度じゃないと思う」

「俺に地球人と同じ感性を頼むな。反応に困る」

「宇宙人は良いな〜」

「そうでもないぞ」

「え?」

「暑い星で生きてきた奴は寒い星では生きれないし、寒い星で生きてきた奴は暑い星では生きれないからな」

「なんでイナズマさんは大丈夫なの?」

「俺の星の気温は地球より若干低い感じだ。宇宙規模で見ると、ほんの少し寒い程度だけどな。俺は色々な星に行って、適応した。生命体の成長はなめられないって身をもって知ったよ」

「そうなんだ」


 その時だった。イナズマさんは地球外生命体の気配を察知した。私は急いで家を出て、イナズマさんの案内に従って、走った。そして私が到着したのは工場だった。


「魅菜、気をつけろ。間違いなく近くに居る」

「代わってくれないの?」

「見つけれずに5分経ったらヤバいだろ」

「確かに!」


 私はそれを探し始めた。近くには居るっぽいけど、ガス管が入り込んでいたり、よく分からない機械が多くあったりして、なかなか見つける事ができなかった。全自動っぽい機械なので、人は居なくて助かるけど…


「後ろだ!」


 イナズマさんが私にそう叫んだ。私は咄嗟に前に跳び転ぶ。後ろの方では、何かが金属に当たる音がした。私は急いで立ち上がり、後ろを振り向いた。そこには…仁王立ちをする恐竜の骸骨の中に黒い何かを入れたような、何かが居た。


「この子…何?」

「悪いが、俺も初めて見る奴だ」

「え?イナズマさんでも初めましてってあるの?」

「当たり前だろ?全ての星に行くなんて、何光年かかると思ってるんだ?」

「まぁ…確かに…」


 その地球外生命体は、私の方に走って接近してきた。


「魅菜…ちゃっと頑張ってみてくれ」

「…え?」


 イナズマさんは、私と代わらなかった。え?なんで?私は逃げるように…てか、走って逃げた。ガス管の上を跳び、迷路のような道を全力疾走した。


「イナズマさんの鬼畜!悪魔!人でなし!」


 そんな戯言を吐きながら走っていた。


「頑張れよ〜」


 まるで他人事のように、余裕があるかのように、そう言うイナズマさん。初めてイナズマさんに殺意が湧いた。今度殴ろう。絶対殴ろう。必ず殴ろう。その時、私はなんとか外に出る事ができた。


「魅菜、ストップ」

「代わってくれるの?!」

「いや、ちょっと様子を見たい」


 その時、ブレスレットが盾になった。


「盾にもなるの?!」

「あぁ…俺は攻撃の隙を与えずに攻撃するのが得意だからあまり使わないけどな」

「なるほど…それで、私に何をしてほしいの?」

「あいつを落ち着けせてみてくれないか?」

「え?どうやって?」

「逃げるな、攻撃するな、刺激するな、だ」

「戦い経験が全く無い私にそれを言うの?」

「お前だから、だ。俺が出たら、逆にあいつをもっと刺激する。あいつは恐らく、危険じゃない。危険だと判断したら、すぐに俺が代わる。頑張れる場所まででいい。そこまで頑張れば花丸満点だ」

「…分かった…頑張ってみる!」

「その意気だ」


 私は盾を撫でた。私の体より小さいこれが、今は何よりも頼もしかった。そして、あの生命体が来る。そして、空に向かって鳴き声を上げた。そして、そいつが私の方に跳んできた。私は盾をそいつに向けたままにした。すると、そいつは盾にぶつかった。そして痛そうな声を出した。


「可哀想…」


 無意識に、私の口からそんな言葉が出ていた。この子からは、今まで会ってきた人たちとは違って、悪意や殺意、戦闘意欲が全く感じられない…もしかして…


「戦うのが目的じゃない?」


 誰に言うわけでもないそんな言葉が、私の口からは出ていた。


「恐らくな」


 だが、私の独り言のような事でも、応えてくれる存在は今は居た。


「こいつに戦いの意思があるとは俺も思えない。戦いに来たのなら、工場を破壊して良かった。なのに、こいつは俺らが来る前も来た後も、工場に傷一つ付けなかった。それに、何度か魅菜に攻撃できる距離まで追いついたのに、攻撃はしなかった」

「なるほど…って!攻撃されそうなら助けてよ!」

「言ったろ?俺が出たらあいつを混乱させてしまう。そしたら、元も子もないだろ」

「あっ…」

「お前は忘れ過ぎなんだよ、なんでもかんでも」

「仕方ないじゃん!そもそもの頭が良くないんだし!」

「そんな事より、前、気をつけたほうが良いぞ」

「え?」


 私はイナズマさんと話していて気付いていなかった。あの子が、口を大きく開いて私に噛みつこうとしていることに…攻撃しないんじゃなかったの?!

 私は咄嗟に盾を構えた。盾の端っこが噛まれた。女子高校生という存在の中で、こんな事をするのは間違いなく私だけだろう。でも、どうやって大人しくさせれば…私は盾でその子を押した。すると、綺麗にその子は後転をした。そして、まるで幼稚園児が突き飛ばされて泣き出すように、その子も泣き出した。


「ど、どどどどどどうしよう?!泣かせちゃった!?」

「落ち着け」

「お、おおおおお落ち着いてるよ!!」

「落ち着いてないだろ…一旦深呼吸をして息を整えろ」


 私は言われた通りに深呼吸を行い、息を整えた。


「どうだ?少しは落ち着いたか?」

「う、うん…」

「まず、あいつを落ち着かせろ。多分、何とかできる。時が来たら代わる」

「本当に?」

「あくまで多分だからな?」

「信じてるよ…」

「…期待はするな」

「盾をブレスレットに戻してくれませんか?」

「分かった」


 私はその子に近づいた。そして、その子の首元に手を添えて脱力できるようにして、空いている方の手で優しく頭を撫で始めた。ゆっくり、優しく、安心できるように…私は不安な気持ちを隠し、撫で続けた。すると、その子は心地よさそうな鳴き声を出した。そして、その子の体はどんどん脱力していく。それに応じて、私のこの子の体を支えている方の手は、下がっていき、この子はどんどん眠る姿勢のようになっていく。


「手慣れてるな」

「昔、犬飼ってたんです。その時、こうしてあげたら良く気持ちよさそうにしていたので!」

「明らかにそれは犬じゃないけどな」

「そんなの多少の誤差、些細な問題です」

「そうか?そうなのか?そうなんだな…」

「そうなんです!」


 そして、私はその子を地面に寝かせた。そして、落ち着かせるために頭を撫で続ける。そして、その子の目からはどんどん涙のような物が出始めていた。


「魅菜、やっぱり代わるのはしばらくは無しだ」

「え?なんで?」

「恐らく、そいつは俺よりお前の方が良さそうだからだ」

「どういう事?」

「鈍感め…つまり、俺が出て行動するってよりは、お前が俺の指示に沿って行動した方がこいつのためって事だ」

「この子が何者か分かったの?」

「恐らく、宇宙漂流を行う生命体の一種の幼体だな」

「宇宙漂流をする生き物が居るの?!」

「人間だって、世界を飛び回ってる奴だって居るだろ?感覚としてはそれと似ている。遊牧とも似てるな」

「詳しく説明してくれない?」


 私がそう言うと、イナズマさんは明らかに嫌そうな顔をした。え?なんで?


「別にいいけど…俺、漂流タイプの奴ら苦手なんだよ」

「なんで?イナズマさんも漂流している感じじゃないですか!」

「俺は冒険タイプ。行きたい場所に行くって感じ。漂流タイプは直感のまま流れるように何も考えずに行動するんだよ」

「なるほど…それで、なんで苦手なの?」

「基本的には群れで移動する種族なんだが、一匹がはぐれたら帰るすべが無くなって、暴れ始める奴が居るんだよ…俺が今まで会ってきた回数は軽く千は越えているが、暴れなかった個体は3か4匹程度なんだよ…毎回毎回宥めるのにどれくらい疲れることか…」

「そうなんだ!」

「だから、お前レベルで早く落ち着かせる奴は初めて見た。才能だな」

「そうかな?」

「生命体には、必ず何かの才能がある。才能が無いと感じるやつは、才能を才能と感じれない、もしくは才能をまだ見つけれてないだけさ」

「そうなの?!」

「あぁ…それより話を戻すぞ。そいつも漂流タイプだと思う。今から群れに帰す事ができるかどうかは分からない」

「何か方法は無いの?!」

「無かったら、今頃殺してたさ」

「…残酷」

「一人孤独に生きるより、孤独を感じてない時に殺してやる方が残酷じゃないだろ。少なくても、俺はそう思ってる」

「そうなんだ」

「そいつを展望台の屋根とか、高い場所に連れて行け」

「この工場の屋上じゃダメなの?」

「ダメでは無いが、少し難しいな…」

「何をするの?」

「こいつが来たって事は、まだある程度近くに居るはずだ。ブレスレットから、一筋の光を出す。漂流タイプの生命体が餌と認知する波動を出す光を、な」

「なるほど!そしたら、この子の仲間がこっちに来て、この子も帰れるって事だね!」

「そういう事だ。届くかどうかが分からないから、高い場所に行きたいんだよ」

「分かった…頑張ってみる!」


 私はこの子の頭を撫でていた。そして、完全に落ち着かせたところで撫でるのをやめた。そして、片手はその子の手に、もう片方の手は背中に回してあげた。何をしようとしているのか分かっているのか分かっていないのか、その子は首を傾げた。私は、一歩だけ前に出てみた。すると、子が親を真似るように、その子も一歩、前に出た。

 私はゆっくりと移動していた。その子も、私を真似るように、私の後を追うように移動した。


「良いよ…その調子…ゆっくり、ゆっくりで良いからね…大丈夫…大丈夫…一緒にちょっとずつ動こうね」


 私は、その子がなるべく安心できるように声をかけ、ゆっくりと歩いた。


「…魅菜、ライメイを呼んでみてくれないか?」

「え?呼ぶって、どうやって?」

「叫べ」

「分かった。けど、この子が驚かない?」

「耳を塞いでやれ」

「…耳どこ?」

「知らない」

「無責任な…」

「初めましてなんだから仕方ないだろ」

「それは私もだよ…仕方ない…」


 私が叫ぼうとすると…


「因みに冗談だから、叫ぶの」

「怒っていい?」

「後でな」


 イナズマさんのブレスレットの宝石のような物が白と赤に点滅した。その時、どこからかライメイさんが戦闘機の姿で飛んできた。


「イナズマ、私を呼んでどうした?」

「少し、魅菜とこいつを上に乗せてやってくれ」

「分かった」

「お願いします…てか、イナズマさんの事見えてるんだ」

「後で説明する」


 私とこの子はライメイさんの上に乗った。


「重くないですか?」

「私に重さを感じる機能は無い」

「んな事気にしてる暇があるなら上がってくれ」

「承知した」


 ライメイさんは、私達を乗せながら空高く上に上がっていく。そして、まぁまぁ高い場所に来ると…


「魅菜、ブレスレットを挙げろ」


 私はブレスレットをつけている方の手を挙げた。すると、ブレスレットの宝石のような場所から、今度は一直線の光が放たれた。

 その時、この子より二回り、三回り程度大きい子たちが、すぐにやってきた。


「漂流タイプはいつも食いつきがいいから、こういう時だけ助かる」

「さぁ、君の仲間だよ。今度は逸れちゃダメだよ?」


 私はその子の頭を撫でた。その子は、嬉し泣きのように、嬉しそうな声を出しながら涙のようなものを流した。そして、私の胸に頭を擦り付けた。そして、群れの中に入っていった。ブレスレットの光は球体となり、空の遥か彼方へ飛んでいった。群れは、それを追うように空の彼方に…宇宙に飛んでいった。


「イナズマ、貴様、マゼヴォエを知らないのか?」

「マゼヴォエ?なんだそれ?」

「最近、増えてきた宇宙漂流獣だ」

「そうなんだ」

「あぁ。別の宇宙から来た生命体だ」

「別の宇宙ね〜」

「何か知っているのか?」

「ちょっと前まで別宇宙に行っててな」

「別宇宙に?どうやってだ?宇宙の裂け目から来たのか?」

「ちょっと待って…頭がパンクしそうなんだけど…」

「とりあえず、俺の話はまた今度話してやる。ひとまずライメイがこの状態の俺と話せる理由だが」

「私から話そう。イナズマのブレスレットの中に私のデータを入れたのだ」

「お前が俺とこうして話せるのはブレスレットのおかげ。それを遠隔でこいつを繋げたんだよ」

「なるほど!」

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